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所感 ”サッカーフォーメーション図鑑”

サッカーの戦術を一から学び直しているのですが、読んだ本の所感を自分の勉強がてら記載します。

今回は、現おこしやす京都AC戦術分析コーチの龍岡歩氏の『サッカーフォーメーション図鑑 配置の嚙み合わせが生む位置的優位性を理解する』です。

本書はフォーメーションを大きく10個に分け、それぞれのフォーメーションの特徴や強み、弱み、さらにフォーメーション同士がマッチアップした場合の嚙み合わせ等について記載されています。

そんな本書の内容や、個人的な感想について簡単に記載します。

フォーメーション分類

本書ではフォーメーションを大きく10個に分けています。その10個は以下のとおりで、①~⑤が4バック、⑥~⑩が3バックになっています。
①4-4-2
②4-2-3ー1
③4-3-3
④4-3-2-1
⑤4-3-1-2
⑥3-4-3(フラット)
⑦3-4-1-2
⑧3-3-2-1
⑨3-4-2-1
⑩3-4-3(ダイヤモンド)

それぞれのフォーメーションについて、特徴や強み、弱みも詳細に記載されており、そのフォーメーションの狙いがどこにあるのかも理解できます。

例えば、4-4-2の場合、以下のような特徴や強み、弱みがあるとまとめられています。(これはあくまでまとめであり、後続のページに詳細に記載があります。)

4-4-2の概要(Amazonサンプルより)


過去の名チーム

また、それぞれのフォーメーションを使用した過去の名チームについても、各フォーメーション数チームずつ記載があります。
そのチームが、所属する選手も含めどのような特徴を持っていたのか、どのような戦い方をしていたのかが結構詳細に記載されています。

例えば、4-4-3を使用した名チームとして、2010-11シーズンのバルセロナ(監督グアルディオラ)が取り上げられています。
このチームは、「ポゼッションサッカーにおける一つの理想形」と銘打たれており、どういったメンバーでどういったサッカーをしていたのか解説されています。

4-3-3の過去の名チーム(Amazonサンプルより)

個人的な感想として、懐かしいなと思うチームが結構ある反面、20世紀のチームはさすがに記憶になく(選手の名前やそのチームが強かったことは知っていますが)、著者のカバー範囲の「変態」ぶりに感銘を受けました。


システムの嚙み合わせ

本書のタイトルにもなっていますが、システム同士の嚙み合わせについて、①~⑩同士の全てのパターンについて記載があります。
すなわち、①4-4-2対して①~⑩、②4-2-3-1に対して①~⑩…といった感じで、全100パターン(厳密には違いますが)において、どういった嚙み合わせが生じ、どのような攻め方が有効なのか等が解説されています。

3-4-3の対4-4-2嚙み合わせ、有効な攻め筋(Amazonサンプルより)

全てのパターンを頭に入れるのは難しいですが、辞書代わりに使えるのではと思っています。

また、嚙み合わせと攻め筋の原則ついてまとめると、
(1)嚙み合わせ上、数的優位なゾーンを活かす(例えば、こちらのDF3人に対して相手FW2人等)
(2)嚙み合わせ上、フリーになるポジションを活かす
(3)ポジションを動かすことによって(1)や(2)の状況を作り出す

ということだ理解しています。

上記の3つの原則が頭に入っていれば、全てのパターンを記憶していなくても、どのようなポジションが優位になるか判別できると思います。


個人的な感想

最後に本書を読んだ感想を記載します。

■選手ありきのフォーメーション
どういった経緯でそのフォーメーションが生まれたのかについても本書に解説があります。(そんなことまでよく分かるな、と素直に感銘を受けました)
その中で学びになったのが、「形」ではなく「人」ありきの発想でフォーメーションが生まれた例もあるということです。

例えば、4-3-2-1のいわゆるクリスマスツリーが生まれた経緯として、ACミランの例が記載されています。
当時の会長の圧力により、リバウド、ルイ・コスタ、セードルフ、ピルロの4人のファンタジスタを同時に起用せねばならず、その解決策としてアンチェロッティ監督が作り出したのがこのフォーメーションとのことです。

フォーメーションというと、どうしても形から入るようなイメージになりがちですが、実際には選手起点の場合もあるのだと、当たり前と言えばそうですが、学びになりました。


■選手の特徴が活きてこそのフォーメーション
上記と通じるところもあるのですが、選手とフォーメーション(も含めた戦い方)がマッチしているからこそ名チームが生まれるのだと改めて思いました。

実際、本書に載っている過去の名チームは、特に2000年代前半や20世紀のチームは、私の中でも記憶にないチームもあります。
ただ、そんなチームでも、必ず数人は知っている選手が所属しています。
良い選手がその特徴を存分に発揮できるチームが、名チームになり得るのだなと思いました。


■著者の知識量
最後に、フォーメーションについての分析ももちろんですが、過去のチームがどのような特徴があったのか、それをフォーメーションに当てはめて語ることのできる著者の知識量に驚きました。
戦術分析全般が著者の役割であり、フォーメーションはその中の一部でしかありません。
それでもこれだけの内容が記載できるとは、世の中凄い人がいるものだと改めて思いました。


以上で、本書についての記載は終わりになります。

本書が出版されたのは今年であり、最新のチームから昔のチームまで幅広くフォーメーション視点でサッカーを楽しめる本だと思いました。

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