宇宙兄弟チーム

チームづくりこそが最高のアクティビティ 『長尾彰 宇宙兄弟チームの話』

すべての人が一人ずつ違っているように、あらゆるチームも違っている。状況も目的も、何一つとして同じチームなどないのだから、均一的なチームビルディングや型通りのリーダーシップを求めてもうまくはいかない。

では、どうすればチームづくりがうまくいくのか。本書では、人気漫画「宇宙兄弟」の登場人物やエピソードを使いながら、リーダーシップの4分類、4つのチーム発達段階をわかりやすく解説しています。

チームづくりは簡単ではないけれど、チームの仲間と一緒になってチームづくりに取り組むことは、チームをアクティブにする最高のアクティビティだと思える本です。

リーダーも強みと弱みを持った人間である

「リーダーシップ」と聞けば、雄弁にビジョンを語ったり、現場の最前線で力強く指示をしたり、どんな場面でも迷うことなく決断をしたり、それでいて性格も良くて部下からも慕われる、そんなイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。

そんなリーダー像をイメージして、自分とのギャップに落ち込んだりすることもあるかもしれませんが、実際のところ、そんな完璧人間は世の中にはいないでしょう。人には、それぞれ強みと弱みがあって、それはリーダーであっても同じはずです。

リーダーにも様々なタイプがあって、その特性を活かすことで、よりうまくチームづくりをすることができると本書では述べています。人を支援するファシリテーター型、職人肌のマエストロ型、教えて導くティーチャー型、知識で牽引するコンサルタント型の4タイプです。自分は一体どのタイプだろうか、と考えながら読んでみると楽しいと思います。

そもそもリーダーとはなにか。本書ではこう書かれています。こうありたいものですね。

『あなたの半径5メートルくらいにいて、あなたのやりたいことを見守り、応援してくれる人。』『人々に希望を与えられる人』

チームづくりを続けていくことがチームの本質

最初から完璧なチームなどありません。それにチームづくりには、何をやったらうまくいくかといったチェックリストはありません。長くチームに関わってきて思うのは、チームづくりとは一過性のプロセスではなく、チームである限り続くものだということです。

チームはタイプの異なる2人から始まるというのが本書で述べていることです。

完璧ではない2人が出会い、お互いを支え合う。
これがチームづくりのスタート地点です。

私が経営するソニックガーデンでも、社長である私と共同創業者である副社長のタイプの全く違う二人ではじめました。だからタイプが違うからこそ助け合えるし、役割分担もできるという話には共感を覚えます。

成果だけを求める前に、そうした互いの強み弱みを理解すること、メンバー同士での関係性をつくることからチームづくりは始まります。チームの初期段階はコミュニケーションの量を増やして関係性を作ることで心理的安全性を築くのです。このあたりについては、拙著『ザッソウ』の中でも伝えています。

リーダーの行動は「しないこと」にこそ現れる

リーダーである限り、なにかアクションをすることを求められると考えてしまって、つい何か新しいことを取り込もうとして、つい何か先頭に立って取り組んでしまうものです。しかし、ずっとそれではチームに自律はもたらしません。

チームをアクティブな状態にファシリテーションするためには、あえて「しないこと」も大事になります。本書では、それを「チームをアクティブにする20の原則」として、あえて「しないこと」を紹介しています。

『コントロールしようとしない』『感情を隠さない』など、わかっていても、ついやってしまうことを言語化して教えてくれます。ぜひ残りは本書を読んでみてください。

果たしてフィクションから学びはあるのか?

本書は、漫画を題材にしたビジネス書です。なので、登場する人物もエピソードも綺麗に出来すぎたものになっていますが、それで果たして本当に学びとなるのでしょうか。それについて本書の中で、こう書かれています。

 (略)あなたが自分たちのチームが成長する糧を求めているのなら、情報源がフィクションでもノンフィクションでも、柔軟に取り入れてみればよいのではないでしょうか。
 大切なのはそこから何かを学ぼうとする姿勢と、メンバーみんなで考えながらトライ&エラーを繰り返し、チームづくりに活かしていくことです。

私も同意見です。どのようなインプットであっても、受け取る人がどう感じるか、どう考えるかといったことの方が大事だと思います。むしろインプットそのものよりも、それを得て自分にどう化学変化が起きたのか、それを掴むことの方が価値があります。それがインプットの目的です。

事実であるかどうかは関係ありません。どんな経営書やビジネス書を読んでも、果たしてどこまで本当のことが書かれているのかわかりませんが、それでも多くのことを学べたはずです。すべて自分次第、ぜひ本書からも学んでみてください。

*** 以下は告知 ***

本書の著者の長尾彰さんと11/13に大阪でトークイベントをすることになりました。お近くの方はぜひ遊びにきてください。

良かった!参考になった!と思ったらサポートして頂けると嬉しいです。他のnoteユーザへのサポートに使いたいと思います。