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インナーマッスルと組織、そして働き方

先日のTWDWで登壇したときに出たキーワードが「インナーマッスル」。新しい働き方、新しい組織というテーマとインナーマッスル、どんな風に繋がるのか、考えました。

インナーマッスルとフットボールネーション

インナーマッスルとは、筋肉の種類で身体の表面につく筋肉ではなく、その内面につく筋肉のことで深層筋とも呼ばれています。表面につく筋肉はアウターマッスルで、わかりやすい筋肉のことです。

インナーマッスルと聞いて思い出すのは「フットボールネーション」という漫画。

脚のきれいな選手を集めた草サッカーのチームが、これまでの常識を覆した独自のサッカー理論を持つ監督のもと、天皇杯の優勝を目指すというストーリー。その「脚のきれいな選手」というのが、脚のもも裏を使えているインナーマッスルを鍛えている選手たちです。

アウターマッスルよりもインナーマッスルが鍛えられている選手は、一見するとムキムキしていない。けれど、芯がしっかりしているので当たり負けすることがありません。海外リーグで活躍するサッカー選手の特徴がスラッとしている一方、日本人の多くはアウターマッスルを重視し過ぎているとのことです。

アウターマッスルだけを鍛えても、耐震構造のないビルのようなもので、硬そうに見えて脆く怪我に繋がりやすいものです。インナーマッスルを鍛えることで、しなやかで強靭な肉体を手に入れて怪我もしにくくなります。というのが、筋肉の話のインナーマッスルでした。

インナーマッスルと組織マネジメント

では組織マネジメントの観点から考えて、インナーマッスルとは何で、アウターマッスルは何なのでしょうか。

それなりに大きくなる組織を効率的にマネジメントしていくために必要なものは、一般的には、適度な人数に分けて階層を作ること、役割分担を明確化すること、役職をつけて責任を持たせること、そんな風に考えられています。

また、組織にいる人たちに成果を出すようにマネジメントするために必要なものは、一般的には、適度な数字の目標を持たせること、ルールを明文化すること、サボらないように管理統率すること、そんな風に考えられています。

そうした組織図のような、わかりやすい形になるもの。財務諸表のような、わかりやすい数字になるもの。それらも大事なことですが、筋肉で言えばアウターマッスルのようなものです。屈強な筋肉の鎧を纏うことで、一見すると強そうな組織に見えますが、それが故に一定以上の変化に対して適応が難しくなってしまいます。

たとえば会社全体で起きた問題に対して、セクショナリズムが強くなりすぎると、どこか他人事のように助け合いが起きなかったり、新規事業を立ち上げようというのに、既存事業と同じようなルールのもと、数字の比較をしてしまったり。それでは、危機対応や新規事業はうまくいきません。

本当に強く柔軟な組織をつくるためには、組織のインナーマッスルを鍛えなければいけません。

たとえば、組織風土やカルチャーといったもの。いい会社には良いカルチャーがありますし、そのカルチャーに惹かれて良い人が集まってくるものです。個人の力が求められる事業や仕事が多くなった今の時代、優秀な人を採用できて、しかも人が辞めていかない組織こそ、本当に強い組織と言えます。しかし、組織風土もカルチャーも、B/SにもP/Lにも載りません。

ビジョンやミッション、理念や価値観なども、それがあるからといって、数字としての成果に繫がるのかどうか、簡単に相関関係を出すことはできません。働きがいや働きやすさなんかも、そうかもしれません。どれも、わかりやすく数字や効果が出ないものです。

しかし、そうした組織のインナーマッスルとも言えるものがないとして、現代社会において組織は成り立つものでしょうか。優秀な人材になればなるほど、組織に対して、そうしたインナーマッスルを求めているように思います。だからこそ、少ない人数で忙しいはずのスタートアップでさえ今は、ビジョンや価値観を共有する合宿などを実施しています。

組織のインナーマッスルさえ鍛えておくことができれば、外部環境の変化に対しても、柔軟な姿勢で適応していくことができるでしょう。

インナーマッスルと個人の働き方

アウターマッスル重視の組織では、働くメンバーや社員に対しても、報酬や罰則といった外発的動機付けでコントロールしようとしがちです。

この「外発的動機付け」というのは、人のモチベーションを外部から与えることでコントロールしようと言うものです。その逆は「内発的動機付け」です。外部から与えられるのではなく、その本人が心の中から仕事など対象に取り組みたいと思うものです。

外発的動機付けの環境ばかりで育った人は、なんとなくアウターマッスルでバキバキに筋肉がついているように見えます。誰かに目標を設定されて、誰かが決めてくれたことに邁進していくのは、誰かがいるうちは良いですが、自分で考えないといけない場面になったときに狼狽えてしまいそうです。

内発的動機付けは、外からは見えません。正味のところは、その本人にしかわからないものです。内発的動機付けに従って行動できる人は、取り組もうとしている対象に多少のハードルがあっても乗り越えていこうとするでしょう。

誰かに言われてやっていることは、その途中で辛いことが起きたときに、きっと後悔して誰かのせいにしてしまいます。言い訳しやすいのです。モチベーションのアウターマッスルだけを鍛えても、どこかポッキリ折れると続けられなくなります。

モチベーションのインナーマッスルを鍛えるには、どんな小さなことでも自分自身で決断する機会をどれだけ経験するかどうかです。たとえ誰かから突きつけられたことでも、自分ごととして受けとめることができれば、それは自分の決断になります。

インナーマッスルとアウターマッスル、どちらが良くて、どちらが悪いものでもありません。バランス良く鍛えることが大事だというのは言うまでもないことでしょう。

しかし、目に見えてわかりやすいアウターマッスルに、人の意識は向いてしまいがちです。それは、組織についても、モチベーションについても同様です。ついおろそかにしてしまいがちなインナーマッスル鍛えていきたいものです。

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