⑭親の意見はたぶん危険
ようやく秋採用で内定を獲得し、後日、母に電話で報告をした。
母は、人を褒めたり喜びや嬉しさを表現するタイプではなく、案の定「ああそうなの」という反応であった(余談であるが、私は母から祝福やねぎらいの言葉をもらったことはない。もちろん学生生活での仕送りもである)。
そして、給料のおおまかな額や賞与の有無などを聞き、私が答えた後のひとことが「それじゃあダメでしょうよ!」
いきなりの否定である。
どうやら、母の勤務先の派遣社員さんの方が高い給与をもらっているらしく、それでいいのかということを訴えていたようだったが、理解するまでに時間を要してしまった。
また、会社が自宅から遠いから通勤が難しいであろうこと(じゃあ引越し代を出してくれ)、(本人の中で)業界があまり良くないなど、実際に何をどこまで知っているのか、また自分の娘をどこまで分かっているのか不思議なレベルでの否定をかましてきたのだった。
本来であれば気が済むまで反論したいところだが、見当違いな感情論をぶつけられて無駄なダメージをくらうのはこちらだと分かっていたので、「もう決まったことだから」「父にも伝えておいて」とだけ伝えるにとどまった。
わが家は、両親とも大学には行っておらず、一人暮らしの経験もない。
また、母に至っては地元で進学・就職したので生きてきた世界も狭い。
だからこそ、意見の相違や食い違いが出てきてしまうのだろう。
それは時代や生きる世界が違っていたから仕方ないことではあるが、それゆえに親の意見を鵜吞みにしたり、親の意見だからと従ってばかりではおそらく社会人失格である。
自分の意思を持ち、それらを振り切ってこそ社会人になれるのだと思うようにした。
そういった意味でも、精神的な面で自身と親を切り離し、「私は私」で生きていく必要があったのだった。
つづく
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