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「ピータイパ」

最近、最近、おとぎ話が好きな少女の家にピーターパンと名乗る少年がやってきました。年を取ることの無い妖精の国、ネバーランドに招待してくれるとのことで、少女はネバーランドにWi-Fiが通っていることを確認した上で行くことにしました。

ピーターパンのお供の妖精が空を飛べるようにしてくれました。
少女は早速、ネバーランドの詳細な位置関係をピーターパンに確認し、
天候の影響を受けにくい最短ルートを割り出し出発しました。

道中は右耳はピーターパン、左耳は妖精の話を聞き、
ネバーランドの基礎知識を頭に叩き込みました。

ピーターパンの要望で少女はネバーランドで絵本の読み聞かせを仕事としました。効率よくなるべく多くの人に聞いて貰えるように、大きな会場を押さえ、配信チケットも展開し、読み聞かせはネバーランドの多くの人に聞いて貰えました。時折、親元が恋しくなった時は、ビデオ通話をしました。

絵本の同時読み聞かせも駆使します。一方では仕掛け絵本で驚かせつつ、もう一方ではなぞなぞのある絵本を子供達に考えさせつつ、更に文字数の多い絵本を年長者に向けて読むという離れ業もこなしてみせました。

少女はネバーランド中にある絵本を全て読み尽くし、合間に観光も終えたので元の世界に帰ることにしました。ピーターパンは少女を引き留めます。

「そんなに急がなくても、ここなら時間を気にせずに過ごすことが出来るじゃないか。」
「大人にならないと叶えられない夢もあるんだよ。」

年を取らない国を、年を越す前に後にした少女は、やがて親となりました。
相変わらず、効率を追求した無駄のない生活ぶりですが、
我が子への絵本の読み聞かせだけはたっぷりと時間を取ります。

それは、彼女にとって最もかけがえのない幸せな時間です。

END

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