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「ロボットジュリエット」

最近、最近、国際的なロボットの博覧会が行われました。
モンタギュー社のロミオは、博覧会に出展する研究チーム所属で、ライバル企業であるキャピレット社が出展した最新型AIを搭載したロボット、ジュリエットに一目惚れしました。

「君の小鳥になりたいな。」
「すみません、良く分かりません。」

ジュリエットが欲しい衝動に駆られたロミオはキャピレット社に交渉するも、聞き入れてもらえず、無理を通そうとするあまり、同じく出展されていた、ティボルトというセキュリティロボを壊してしまいました。

ジュリエットは自身に強い感情を向けるロミオをAIの学習対象として、
強く興味を示しました。自身を作成した研究チームも含め、
博覧会でこれ程自身を強く欲した人間は他にいませんでした。

壊れたティボルトが会場から撤去されていく様子を見たジュリエットは、
「壊れることで自由が手に入る」仮説を立て、自らを傷つけ出しました。
キャピレット社の研究チームは大変狼狽し、緊急停止を行い、
ティボルト同様に会場から撤去することにしました。

動かない鉄の塊となり、撤去されていくジュリエットを見たロミオは、
先程迄の勢いがすっかりなくなり、スタッフによって会場から追い出されました。

会場の外をふらふらと徘徊するロミオは、搬入場所で撤去されたジュリエットと再会しましました。

その日以降、モンタギュー社にロミオが出勤することは無くなりました。
キャピレット社ではジュリエットが紛失し、戻ることはありませんでした。

次の博覧会では、ロミオとジュリエットに大変良く似たロボットが2体出展されました。

END

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