「ハーメルンのフェイク」

最近、最近、バイトが誤ってシュークリームを大量に誤発注して困っているコンビニがありました。そこに、奇妙な服装をした男が訪れアドバイスをしました。

男は報酬と引き換えに大量のシュークリームを売り捌いてやろうと持ちかけました。店長は取引に応じると、男はSNSで「誤発注をしたので、助けて下さい！」と周囲に助けを求めるメッセージを拡散させました。

大きな話題にもなり、シュークリームは賞味期限を迎える前に売り切ることが出来ました。しかし、店長は報酬を支払う段階になって渋り始めました。

「この程度のことは俺でも思いついた。報酬額は見合っていない。」

約束を守ろうとしない店長に対して、男はアドバイスを持ち掛けたのは自分からで、口約束で契約を結んだわけでもないから仕方が無いとしてその場を後にしました。

数日後、コンビニはちょっとした炎上騒ぎになりました。
シュークリームの一件の後に立て続けにバイトテロの画像が多数アップされていたのです。ホットスナックを齧る従業員、アイスケースに入る従業員、カウンターの上に立つ従業員など、様々でした。

また、同じタイミングでバイト達が一斉に辞め出しました。
バイトテロや誤発注などとは関係なく、全員が退職代行サービスを使用し、
店長による不当なバイトの扱いの実態をまとめた資料が添えられました。

・・・

コンビニから少し離れた公園にて、元バイト数名と奇妙な服装の男が集まっていました。

「皆さん、良く出来ました。では、次のターゲットを探しに行きましょう。」

コンビニの元バイトもとい、ハーメルンと名乗る男に雇われたバイト達は報酬を受け取って解散していきました。

後になって分かったことですが、バイトテロの画像はAIによって生成されたフェイクで、当時の従業員と一致するものは1つもありませんでした。

END