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ずっと寂しそうだね



私の目の前でお酒を飲む彼女とは、小学生の頃からもう15年程仲が続いている。


同じクラスになったことなど1度もなかったし、学校生活で毎日一緒に行動を共にしたこともなかった。


それなのに、付かず離れずの距離感をきちんと守りながら25歳になった今も、月に1回は顔を合わせている。


彼女は、持ち前の可愛らしい顔と、ほっとけないような危なっかしさを兼ね備えた小悪魔の代名詞みたいな子で、


その才能を発揮するかのように夜の世界で輝いている。


会う度に、どこか何にも満たされてなさそうで、ずっと寂しそうで、その日もずっと楽しそうでずっとつまらなそうだった。


彼女との待ち合わせは、人の多い歓楽街が多い。


自分でも認めている男好きだからなのか、

『今日もちやほやされて承認欲求を満たそうと思う』とはっきりいうところが私は結構好きだ。


やはり街を数歩進めば、

かわいい、連絡先だけでもと声をかけられている。

居酒屋に入っても、こっちで払うから一緒に飲んでと頼まれるのが普通だった。


彼女には、彼氏が2人いる。


2人いても不安で、満たされなくて、寂しいという。

 

夜の世界でどれだけ人気が出ても、街を歩いてどれだけの人に声をかけられても、彼女はいつだってずっと心に風が吹いている。

 

『整形する為に、お金を払ってもらった。』


誰に?と聞くのも野暮ったいかなと思い、

そっかそっか。と2回頷く。


どこも整形しなくてもえぐいほどかわいいよってはもう何回だって言った。


小さい頃から見慣れているから、その可愛さに若干驚かなくなったが、彼女は顔も行動もとてもかわいい。


でも人の力は、きっと人には及ばない。

彼女の孤独感や喪失感といった類のぽっかりとあいた穴に、私はきっと数滴水を垂らせるか垂らせないかの世界線なんだと思う。



私の会社員としての月の給料を、

彼女は1日2日あれば稼げてしまう。 

 

『それもすごい才能だよ。誰だって人気になれる世界じゃないんだから。』


そう告げても、

『未來がない今だけだよ。世間にきちんと胸を張れる仕事をしているちさきに憧れてる。』


と彼女は言う。


彼女の自信のなさなのか、焦燥感は何がそうさせているのかは全く汲み取りきれなかった。


彼女の誕生日だった12月の頭には、

すごい数のプレゼントと、サプライズが用意されたらしいストーリーが上がっていた。


彼女のことが好きな2人の彼氏も、あらゆるところに連れて行こうと計画したらしい。


だけど彼女は、

『本当に好きな人に好きって言われなきゃ、何の意味もない。』


って泣いていた。


彼女を好きな人、好きだった人を何人だって横で見てきた。


これから好きになる人だって何人だっていると思う。


でも、彼女はそれじゃ満たされない。 


私から見たら何が不満なんだろうと思う

何がそんなに寂しいんだろうと思う


でも彼女と私は、家庭環境も人生のトピックスも違うから、本当の意味で理解出来ないのかもしれない。


彼女は彼女で、私は私


私は、彼女の大胆不敵な可愛らしさを羨ましく思う。


誰かと改札でバイバイしたら、振り向かないことを美学としていたはずが、

見送る側の私に彼女が振り向き、ニコッと笑ってバイバイって手を振ってきた日を境に、

それまでのルールを一瞬で辞めることにした。



『それってどう言う意味?』と聞きたくなるような発言を頻発する彼女の余韻も羨ましい。


私にまで気を持たせる気か、とあざとさ満点の言動が羨ましい。


そんなことを言っても、彼女は、女の子には嫌われっぱなしだよと嘆くだろうな。



自分の見え方次第、受け取り方次第で、

きっとどうにでもなるだろうけど、全てを手に入れることはできないんだと彼女を見て思う。


そんなに告白をされて、そんなに彼女を思う人がいて、お金をたくさん稼いでも、


『可愛くなりたい』とうつむき、タバコの煙を吐き出す。


 

何にだってなれるけど、全てにはなれない。


私もそんな寂しそうな彼女に魅了された1人で、彼女から会いたいのと連絡がある度、なんだかんだ会ってしまう。


でもね、

人に満たしてもらおうと思ってるうちはきっと満たされないとわかると、少し楽になるかもしれない。


彼女は、人に何かを強く言われるのを嫌うから、やっぱり私は、そっかそっか。いいね。と言うけど、


自分を幸せにしてあげられるのは、自分だと思うんだ。















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