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「相談」をより良いものにするために

仕事を進める上で、1人の力だけで全てを解決できることはありません。上司がいて、部下がいて、関係者がいて・・・大きな仕事になればなるほど、その人数は増えていく一方です。そして、何かを決める・問題を解決する場合は誰かに「相談」をした上で決めていくことが多いかと思います。今後の進め方、自分の認識が合っているかどうか、困っていること、これで本当に良いか等、相談内容は多岐に渡ると思います。

しかし、相談していて、以下のことを感じたことはないでしょうか?

・話がなかなか進まない
・結論が出ない
・気づけば本筋から離れた話をしている

そういった機会を減らすために、今回は「相談」について取り扱いたいと思います。

定義

「相談」とは、以下の意味を指します。

問題の解決のために話し合ったり、他人の意見を聞いたりすること。また、その話し合い。

相談(そうだん)の意味 - goo国語辞書

本記事における「相談」も上記と同様の意味で扱います。

目的

仕事をする際の「相談」をより円滑に、より良いものにすることを目的としています。そのため、相談時に何を意識すべきなのか、どうすれば良いのかについて記述していきます。

「相談」はする側にも、される側にもなります。ですので、そもそも「相談」をどのような形で進めるのが良いのかを知っているだけで、どちらの立場になったとしても対応できるかと思います。本記事がその一助になれば幸いです。

本記事で扱うことについて

以下の内容について取り扱います。
・相談内容の答えが複数あり、どれを選択するかの判断を迫る
・相談内容の答えがなく、自分たちで答えを決める

どちらにも共通して使われている「相談内容」、そして「明確な答えがない場合」について、焦点を当てて説明していきたいと思います。

その一方で、以下の内容については取り扱いません。
・相談内容の答えが1つしかない
・相談のタイミングやその粒度

前者は、答えを探すための調べ方や試し方がメインとなってしまうため取り扱いません。また後者は、お互いの認識のズレを防ぐ上で大切な要素ではありますが、今回の趣旨からは外れるため、こちらに関しても取り扱いません。

相談のゴール

相談が終わったときにどのような状態になっていることが望ましいでしょうか?答えは様々あるかと思いますが、私の考えとしては「次に何をすれば良いかを理解しており、行動に移すことができる」状態だと思います。

そのため、相談を進めると相談内容に対する答えが必ず出ます。たとえそれが正解か不正解かはっきりしていなくても、最後には何らかの答えを出さなければなりません。答えが出ないものは相談とは言えず、それはただの雑談か、相談したフリや相談したという事実だけを残そうとしているにすぎません。

相談のゴールは「相談内容に対する答えが出ていて、次の行動に移せること」を念頭に置いた上で、本記事を読み進めていただければと思います。

相談する前に行うこと

何か困ったことや問題が発生したときに、よほど緊急の出来事でない限りはすぐに相談に向かってはいけません(緊急事態であれば、すぐに報告しましょう)。何の準備もせずに相談に向かってしまうと、相談する人とされる人の時間を無駄に使ってしまいます。そのため、相談に向かう前に、以下のことを行なった上で相談してみましょう。

▼ 自分なりの答えを出す
▼ 答えを複数用意して、比較する
▼ 自分の答えに固執しない

それぞれについて、説明します。

▼ 自分なりの答えを出す

一番大切なこととして、問題に対して自分なりの答えを出すことです。問題にぶつかったときにすぐ相談してしまうと、思わぬ方向に話が進んだり、堂々巡りになったりと、議論が進まなくなりがちです。しかし、自分が答えを提示することで、それで良ければ相談は終了ですし、仮に間違っていたとしてもその答えを起点に話を進めることが出来ます。また、答えを出す過程の中で問題を整理するため、論点の整理にも役立てることが出来ます。

まずは、自分なりの答えを出すことを意識しましょう。

▼ 答えを複数用意して、比較する

相談する内容については、試験問題のように答えが1つしかないケースは少なく、多くの場合に複数の答えが存在します。ですので、答えを探す過程においては複数の答えに遭遇するでしょうし、それらを比較することで答えを1つに決める必要があります。

では、なぜ1つの答えが見つかった段階でそれを答えとしてはいけないのでしょうか?答えが複数あるなら、どれを選んでも同じではないのかと思ってしまう方がいるかもしれません。また、結局相談するのであれば、とりあえず1つの答えを出しておいて、他は相談の中で見つければ良いのでは?と思う方もいるかもしれません。

確かに、明らかに答えがこれしかないという場合においては、それでも良いかもしれません。しかし、逆になぜ答えが複数あるのか?を考えてみると分かるかと思います。答えが複数ある理由として、状況によってどの答えを選択するかが変わるためです。そのため、たとえば時間軸で考えると・・・

・自分が問題に気づいた時点
・相談した時点
・行動する時点

において、それぞれで状況が異なるかもしれません。ですので、複数の答えを用意して、自分がこの状況だったらこの答えだというものを選択することで、より状況に適した答えを選ぶことができるかと思います。

また、相談の中で他の答えを見つけるというものは、相談するときに答えを用意していない場合と同様に、思わぬ方向に話が進んだり、堂々巡りになりやすいです。相談の道筋は相談前に用意しておくことで、円滑に進められるのではないかと思います。

▼ 自分の答えに固執しない

これまでの流れから、答えを複数用意して、それぞれの比較をし、最終的に1つの答えを出した上で相談に向かうことになると思います。しかし、自分が出した答えが唯一の正解であるという勘違いをしてはいけません。もちろん、自分がこれを正しいと思ったことについては自信を持つべきですし、自分が想定した状況の中においては正しい可能性が高いですが、相談した結果、以下のことが発覚すると途端に正しくなくなります。

・答えを出す上で必要な要素が足りていなかった
・優先度の認識が間違っていた

具体的な例を挙げると、

・Xを使えばAを解決できると思っていたが、実際はAとBの両方に対応する必要があり、XではBには対応できていなかった。
・スケジュール的にかなり厳しいためスピード重視で進めようと思っていたが、実際はスケジュールに余裕があり、クオリティを重視する必要があった。

このような場合に、自分が想定していた状況とは異なっているにも関わらず、「だとしても、自分の答えが正解なんだ」といつまでも突っ張るのは時間がもったいないです。答えを素早く撤回して、まずは状況の認識をすり合わせてその状況に最適な答えを導きましょう。その際、事前に用意していた別の答えが役に立つかと思います。状況を再認識した上で、最適だと思われる答えを改めて選び直し、相手に伝えてみましょう。

相談は自分の正しさを証明するための場ではなく、「相談内容に対する答えを出して、次の行動に移せる」ことが目的であり、その答えを出した人は自分であろうが相談相手であろうが関係ありません。あくまで相談の目的の達成を意識しましょう。

相談中に意識すること

さて、「相談する前に行うこと」をしたので、これから相談しようと思いますが、どのように相談するのが良いでしょうか?何も意識せずに話し始めてしまうとせっかくした準備を活かすことが出来ません。そこで以下の5つを意識すると良いのではないかと思います。

▼ 相談の冒頭に概要と考えを伝える
▼ 言葉の意味の確認をする

▼ 話題を意識する
▼ 話題がずれたら引き戻す
▼ 最後にゴールの確認

それぞれについて説明します。

▼ 相談の冒頭に概要と考えを伝える

いきなり相談内容について話し始めても、相手は状況を理解できません。
相談の冒頭は以下の内容について話すことで、相談内容についての理解を相手に促し、その上で自分の考えを伝えます。

・そもそも何に関する話か
・どのような点で困っている、問題なのか
・自分が答えだと思っているものとその理由
・相談内容に影響するその他要因
・(場合によっては)他の答えとその理由

まずは、相手を相談のスタートラインに立ってもらうことを意識しましょう。この時点で認識が揃わないと、これ以降に使う時間があまり意味がなくなってしまいます。

▼ 言葉の意味を確認する

同じ言語で会話をしている場合であっても、主語の省略や代名詞の指す先の違い、職種・立場の違い、またその人が思っている言葉の意味の違いによって、同じ言葉であったとしてもその意味合いが異なる場合があります。その人の立ち位置によって言葉の意味合いが変わってしまうのは仕方のないことなので、辞書的な意味が正しいとか実際に使用している意味合いが正しいとかを論ずるつもりはありません。ただ、そういったズレによって、相談後にやるべきことが変わったり、話が振り出しに戻るなんてことはよくある話だと思います。たとえば・・・

Xさん: あの件はどうなったのかね?(Aのことを想像しながら)
Yさん: あの件ですね。順調ですよ!(Bのことを想像しながら)
Xさん: そうか、それなら引き続き頼むよ。
Yさん: 承知しました!

こういった自体はその都度確認して防ぐ必要があります。一番多いのが主語の省略や代名詞の指す先の違いです。そのため、先程の例であれば以下のように一言聞いてみましょう。

Yさん: あの件ってBのことですよね?

この一言の確認があるだけで、話がズレにくくなるかと思います。「そんなことを毎回聞くのはどうなの?」と思う方がいるかもしれません。確かに、前後の文脈から言葉の意味合いが明確であれば、わざわざ聞き返す必要はありません。しかし、不安に思ったにも関わらず確認を取らなかった結果と、認識がズレてしまい、やるべきことが間違っていたということはなるべく避けたいです。

気になったときには、「この言葉はどういう意味なのか?」「これって○○という認識で良いか?」といった一言を言えるようにしましょう。

▼ 話題を意識する

今、何の話をしているのか?は常に意識しましょう。話を進める中で、関連性のない根拠や考慮する必要のない前提を出してしまうと、答えを出す上で障害となってしまいます。また、話が複雑になってくると、何に対して答えを出そうとしているのかが見失いがちです。そもそも自分は何に対して答えを出そうとしているのか?を軸として持った上で話を進められるようにしましょう。

特に、聞き手の場合において、何の話をしているのかがよく分からなくなりがちです。そんな時は思い切って相手に聞いてみましょう。これは話題の確認と相手自身の整理にも繋がります。ただ、聞き方に気をつけないと「この人、ちゃんと話を聞いていなかったのかな・・・」と思われてしまうので、その点は気をつけたほうがよいです。たとえば、以下のように聞いてみると良いかもしれません。

・話を整理するために聞くけど、そもそもこれってどういうことがしたいんだっけ?
・よく分からなくなってきたから聞くけど、これってこういう話だっけ?
・結局これって何がしたいだっけ?

重要なのは、相談する側であれば、自分が何の話をしているかを把握した上でその考えを伝えること、相談される側であれば、相手の話を理解した上で答えることです。お互いの内容理解の上に、良い相談は成り立つと思います。

▼ 話題がずれたら引き戻す

ふと別件を思い出したために、自分や相手が本来話す予定だった話から脱線することはよくあると思います。理想としては、1つの話が終わるまではその内容についてだけ扱いたいものですが、そこをコントロールするのはなかなか難しいものです。「今はこの話だけしたいです!」とスッパリ言い切るのも良いかもしれませんが、そうはいってもなかなか出来ないのが現実です。

ただ、相談をするからには必ず答えを出し、次の行動を決定しなければなりません。その状態で終わることは相談をしていないことと変わらず、ただの雑談でしかありません。

では、どうすれば良いのでしょうか?それは脱線した話が終わったタイミングで引き戻すことです。お互いに脱線した内容で話し切った感があるかもしれませんが、相談のゴールにはたどり着けていないので、話題を元々の相談内容に引き戻しましょう。

引き戻す方法としては、脱線した話が終わったタイミングで一言伝えましょう。一例として、以下を挙げていますが、ここは何でも良いです。

・ところで、さっきの話なんですけど・・・
・そういえば、さっきの話、まだ結論出てなかったのでもう一度話したいのですが・・・

大切なことは、相談内容に対して次にやるべきことが明確になっていることです。相談のゴールを目指しましょう。

▼ 最後にゴールの確認

一通り相談が終わり、次にやるべきことが明確になったとします。つまり、相談のゴールに到達したわけですが、最後にそのゴールが本当に合っているかを確認しましょう。ここまで来たとしても、そもそもの認識が相手と合っていないとその次の行動に意味がありません。レストランで料理を注文した際に最後に確認が行われることと同様に、間違った行動をしないためにも確認は忘れずに行いましょう。

おわりに

相談をより良いものにするために、相談前・相談中に分けて、それぞれの行動について述べてきました。ただ、せっかく相談して次にやるべきことが決まったにも関わらず、それを行動に移さなければ相談した意味がなくなってしまいます。最後に行動してこそ相談した意味が生まれるため、行動するようにしましょう。


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