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くらげ×寺島ヒロ 発達障害あるある対談 第307回 「障害のある子どもを育てるときに難しさを感じるポイントはどこ?支援の枠組みってどこまでなの!?」ってお話

(今回は特別回のため全文無料公開となります。また、マガジンに追加し忘れていました。申し訳ありません)

登場人物

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前編

後編

[く] さて、おいサンをお迎えしての回の後編なのですが、前編は「カタリバ」の活動について詳しくお伺いしました。後半は、おいサンご本人について深掘りしていきたいと思います。

[寺] おいサンには、2人のお子さんがいらっしゃるのですが、下の子が19歳ともうかなり大きいんですよね。その子育ての間、「カタリバがあったら!と思うことがあった」ともおっしゃっていましたが、障害のあるお子さんの子育てについて、少し詳しくお伺いできたらと思います。

[く] 普段のあるある対談では当事者の話がメインで発達障害のある子どもやそれも成人に近い子のお母さんやお父さんがどう思っているか、という話はあまり出てきませんので貴重かもしれないですね。

[お] そうですね。とても不思議なんですが小学生の頃から「自分の子供は障害のある子だろうから、かっこよく子育てしたい!」と思っていました。先日、障害のあるお子さん3人育てているアメリカ在住の友人と昔話をしていたのですが、二人とも「昔から障害ある子が生まれると思うと話してたよな」って話していて、言霊!と思いました(笑)

[く] すごい予感というかなんというか(笑)

[寺] そうなんですね。不思議なお話ですね。

[お] でも、実際に障害のある子どもを育ててみると、「かっこいい」ことを実行するのは簡単ではなかったですね。私はアメリカに住んでいた時があって、その感覚のズレもあって。特に、子どもに診断がついてから、わたしの中の障害に対する感覚と、日本社会での障害に関する感覚のズレが辛かったのかもしれません。おばちゃんになってから、この「かっこいい」という言葉の意味を考えてみると、「かっこいい」というより、「堂々としていたい」という言葉が的確かもしれません。堂々とできているかな(汗)

[寺] 障がいのある子どもを産んだ責任をとれとか、自分の人生は全部諦めて子どものために尽くすのが当然、みたいな空気はありますよね。元々日本には母親らしくしろみたいな圧力があるんですが、それが余計にきついというか。

[く] ボクには子どもがいないので想像で語るんですが、今の日本の子育てって「チェックポイント」というのが設定されている気がするんですよね。「この時期までにこの程度の子どもが成長してないと失格」みたいな…。で、障害があるとそういう「チェックポイント」に、最初から脱落になっちゃうので、そこで絶望を感じる親御さんとか多そうだなぁ、とは前から思っていました。

[寺] 母子健康手帳に掲載されている「発達のめやす」のことですね。ちょっと脱線するのですが、私は現代の日本人の子育てには、「生物としての子育て」と「日本人として社会参加するための子育て」と「家を再生産するための子育て」という3本の指標があると思っていまして。

[く] 生物というのは文字通り、「子どもを生き延びさせる」ということですかね?

[寺] そうですね。とにかく、子どもを食べさせて、清潔なものを着せて、病気の兆しが見えたら手当して、精神的なケアをして、危ない目に遭わせないように守って、死なせないように大人にするということですね。これができない親の場合は、子どもは支援を受けることもできますよね。

[く] まぁ、公的な福祉での対応が十分かはさておき、子どもの保護は真っ先に行われますよね。これができてないと法的にも罰せられる可能性も出てきますし。

[寺] 次が「労働力として日本の企業に勤めるための技能の習得」です。まぁ、空気を読み、その場で期待される働きをすることですね。発達障害があるとこれが苦手なことが多いんです。しかし、これも昨今は不十分ながらも理解が進み、親に任せるばかりではなく、公的に支援をしようという流れができてきました。

[く] まぁ。実際に色々受けましたけど、公的な場所で習得できる技術はコモディティなものが多く、それを習ったからといって将来的な収入の安定につながるかは疑問があるところがあります。障害があるから、人より努力しないといけないのに、収入は雀の涙、昇進も、表舞台に出るチャンスも少ないというのが普通ですからね。

[寺] あ、そこが3つめなんですよ!母親には、子どもを生き延びさせた上で「家」のリソースを増やすというミッションがあります。これは、自分が産んだ子どもを父親以上の社会的地位と収入を得られるように育てなければならないという、「嫁」の見えないミッションです。障害がある子どもが生まれると、これが大変困難になるんですよ。でも、このミッションは自分の家族以外は全部競争相手なので、外には相談するところもないという…。

[く] それを全部やって、普通に働けってムリじゃないですかね…。

[寺] めちゃくちゃ大変だと思いますよ。発達障害の子どもを育てるお母さんの悩みには、この後ろの2つに関することが混在している場合が多いんです。 しかし、NPOなどで面倒を見てくれるのは、当然ながら2つ目までなので、もやもやが残るんですよね。

[く] 普通に無理ゲーでは…。

[寺] だから、カタリバの保護者会などで、バリアフリーに悩みが吐き出せる場があるのっていうのはとても大事だし、貴重だと思うんですよね。

[お] あと、私はお母さんはお母さんでいてほしいと願っています。 療育の先生でも心理師でも学校の先生でもない、ただのお母さん。

[寺] よくわかります。子どもの足りないところに目を向けすぎて、コーチみたいになってしまうケースも見受けられますよね。

[お] 現代は圧倒的に子どもの数が少なくて、一人の子どもに向けられる大人の目が増えています。これによって苦しむ保護者の方は多いんじゃないでしょうか。就職ひとつをとっても面白い履歴書が書けると面白い会社に繋がるんですけどね。 既定路線から子どもがズレるとあなたの育て方が悪いと言われがちです。うちは今のところ言われてはないですが(笑)

[寺] ないですか?(笑)

[お] 親からはないです。周りがどう思っているかは知りませんが(笑)さきほど話したアメリカに住んでいる友人が、子どものことでいろいろ言われるかもと怯えてたところ周囲に大笑いされて拍子抜けしたという話を先日聞きました。

[く] アメリカという国の風土みたいなものもあるんでしょうか。

[お] あるでしょうね。全てアメリカが最高!という訳ではありませんが、日本では、農耕民族だったり戦後はみんな同じように働けることが重宝されてきた という歴史がありますよね。いまでもそれが学校や社会に大きな影響があると思います。 今では少しずつ変わりつつありますが、多くの人にとって変化はストレスと感じるのかなかなか変わりませんね。

[寺] うちでは、長男は一般入試で大学に入学し、障害学生として支援を受けながら通学しています。将来は研究者として身を立てていきたいというのが希望です。長女も睡眠障害があるので、今年から通信の高校に進学しましたが、将来的にも「会社に入る」という考え方はせず、なんらかの技能者として立っていければと思っています。おいサンご自身としては、お子さんの将来像をどのように描いていらっしゃいますか?

[お]まさに今そこが悩んでいるポイントです。うちの娘は情緒障害が主で、ASDもあったり色々混在型なので難しい…。いい時と悪い時のパフォーマンス力が全く違うのでどんな形であれ、彼女自身がYES!スーパー幸せ!NO!!スーパー絶望、ではなくなんとなく幸せでたまに辛いくらいで生きていってくれたらな〜という思いがありますが、果たしてそれはどんな形?なのかは試しているところです。

[く] 良い時と悪い時のパフォーマンスが違いすぎて、自分のポテンシャルが測りにくいというのは、ボクもよくわかります。仕事を取りに行く時は調子のいい時なので「出来る」って思って引き受けるんですが締め切りの頃にはダメモードになっていて全然出来なくて迷惑かけるとか…うっ…頭が…!(痛)

[寺] 情緒障害がある人の場合、本人も大変なんですが、気分の良し悪しの垂れ流しを家族や周りの人が浴びることになりがちなのが、また大変なんですよね。でも、本人には周りを振り回している自覚はないことも多くて…そのギャップが支援を難しくしている場合もあると思います。

[お] まず本人を安定させて…と言うんですが、それが一番難しいという。悩ましいですね。

[寺] 支援者側が「支援を受けたいなら受けられるところまで整えてこい!」と言うようなことになると、それもまた違いますもんね。

[く] やはり一律「障害者の人にはこれを与えればいい」というものはないですから、ひとりひとりを見て、必要な支援をしていくのが大事ということですね。では、話は尽きませんが、そろそろ締めていきましょう。最後に、おいサンから、今回の対談について一言いただきます。

[お] ひょんなことから寺島さんとの繋がりができて、なんだかんだずっと寺島さんにぶら下がってきました(笑)それがこんな対談になるなんて!驚きです!いや〜我が子あっての繋がり、色々経験してみるもんだな〜と実感しています。今後もファンとしてお二人のnote拝見させていただきます〜!ありがとうございました。

[寺] いえいえ、こちらこそです。おいサンとは以前からメッセンジャーなどでやり取りをしているので、よく知っている人のつもりでしたが、対談という場となると別の角度から出てくる話もあって面白かったです。ありがとうございました。

[く] ありがとうございました!お疲れ様でした!来週からは通常回でお届けします!

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「ボクの彼女は発達障害」のくらげと寺島ヒロが再タッグ!発達障害あるあるネタをイラスト付きでお楽しみください!

妻のあおががてんかん再発とか体調の悪化とかで仕事をやめることになりました。障害者の自分で妻一人養うことはかなり厳しいのでコンテンツがオモシロかったらサポートしていただけると全裸で土下座マシンになります。