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『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』感想

今日は哲学者の谷川嘉浩さんの書籍について、感想を書いていきます。

「本当にやりたいこと」「将来の夢」「なりたい自分」こんなテンプレに惑わされないために。
変化を恐れない勇気、あげます。
「将来の夢」や「本当にやりたいこと」を聞かれたとき、
それっぽい答えを言ってやり過ごしたことはないですか?
自分を忘れるほど夢中になれる「なにか」を探すために
スマホを置いて一歩を踏み出そう。

Amazon 紹介文より

谷川さんの書籍は『スマホ時代の哲学』が面白いので、過去のnoteも載せておきます。

『レールを外れる』も面白かったのですが、書くのが大変だっただろうなと思いました。モチベーションという言葉では言い表せない「衝動」について扱っているからです。

「衝動とは何か」については、ぜひ本書をご覧ください。ここから先は、僕なりに印象に残った部分を紹介します。

強い欲望と深い欲望

人は人が欲しがるものを欲しがる。友達がiPhoneを持っているから自分も欲しくなる。SNSはそれをさらに加速させ、人に強い欲望を抱かせる。他者に対する羨ましさは、だいたいその辺りから来ている。

詳しくは『欲望の見つけ方』がおすすめ。本書でも参考にしてある。

お金を稼ぎたい、有名になりたいという思いは、強い欲望であって深い欲望ではない。

深い欲望とは何かと言えば、表面から見えないほど奥深くから生まれて、自分を突き動かす欲求。他者は関係がなく、しかも自分自身でも気づきにくい欲求。

僕たちが描く「本当にやりたいこと」は、実は誰かをモデルにした強い欲望だったりする。強い欲望と深い欲望は間違えやすい。

自分の奥底にある、深い欲望(大切な価値観)は何か。これはセルフインタビューで丁寧に掘り下げていったほうがいい。

フリーレンにとっての趣味

フリーレンは、偏った欲望(=偏愛)に基づく<趣味>を追求していくことの楽しさを生活の中心に置くことで、寂しさの降り積もる長い人生を悠々と暮らしているのだと思います。
多くの作品のように、その寂しさを消去しようとするのではなく、自分に固有の偏りに掉さす遊びの楽しさへと暮らしのあり方を切り替えること。

『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』p229より引用

アニメ『葬送のフリーレン』の主人公は、魔法を集めるという趣味を持っています。それが役に立つとか、意味があるとか関係なく、ただ集める。

『スマホ時代の哲学』でも扱われているのが、「寂しさ」とスマホの関係性なんですよね。僕達は寂しさを埋めるべく、SNSを通じて誰でもいい誰かとテキストのやりとりをしている。

あるいは「~しながら~する」というマルチタスクで日常の不安から目を背けようとする。心当たりがある人もいるのではないでしょうか。

それに対して「何かを作る、何かを育てる」ような趣味は、他者を起点としない。ただ、トマトが育てたいからトマトを育てる。自分がいいと思えるまでギターを練習する。

こういう日常の過ごし方に、何かヒントがあるんじゃないかと、僕は谷川先生の書籍から受け取っています。

僕の話になりますが、「働くってなんだろう」「働き続けるにはどうしたらいいのだろう」「豊かさってなんだろう」あたりに問いを持っています。それが気になるから、たくさんの本を読んでいる。

本を読んでは「こうなんじゃないか、ああなんじゃないか」と考える。これはひとつの趣味だと言えます。

(ただ、それをTwitterに書いたり、noteに投稿したりは「他者」を起点にした作業なので、ちょっと微妙なラインです)

他の人がどう言うかなんて関係ない。いいねの数なんて関係ない。自分の深い欲望、衝動、偏愛をベースにした活動に夢中になる。それをいくつかやってみて、気づいたら熱中している。寂しさを消そうなんて思わない、気づけば、忘れている。

この辺りが大事なのかな~っていうのが見え隠れするのが本書です。

多孔的な自己

最後にいいなと思った表現を紹介します。それは多孔的な自己。

自己というのは世界から独立しており、僕たちは膜(緩衝材)に覆われていると捉えがち。まぁ実際、皮膚で外界と隔ててあるので、間違いじゃないんですけど。

ただ、生物を構成する細胞は膜に包まれているのですが、実はいくつもの孔(スキマ)があり、物質を入れたり出したりしているんですよね。

それを自己にも応用してみようというのが、「多孔的な自己」なのかなと感じました。僕達は殻に閉じこもるのではなく、いろんな他者から影響を受けて、影響を及ぼしている。(スキマ)があるんです。

その相手は、人間だけじゃなくていい。映画、漫画、アニメ、小説などのコンテンツでもいい。いろんな作品に触れて、いろんな刺激を受ける。いい影響を受けるのが理想的ですよね。

もちろん、悪い影響を受けてしまう部分もあるので、その辺りは本書に注意点が紹介されています。ぜひ、読んでみてほしいです。

おわりに

「衝動とは何か」について説明しないまま、気づけば2000字です。でも、「衝動」という言葉が、素人の僕の文章の中にも見え隠れしたのではないでしょうか。(本書では衝動を幽霊のように見立てて説明しています)

本を読むには集中力が続かない、スマホばかり触ってしまう。映画を1本観るには疲れている。映画館に行くのは大変億劫だ。

そんな現代社会で、一方では「本当にやりたいことは何か」「キャリアデザインを描きなさい」と言われる。生きていくってなかなか大変ですよね。

本書はその辺りを考えるのによい一冊です。明確な答えがバシッと書かれているわけじゃありません。読んでも「むむむ…」ってなってしまうかも。

でも、僕は面白いと感じたので、これからも読み返そうと思っています。

気になる方は読んでみてください

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