久遠堂の製作覚書⑧「打ってつけをこじつけろ」
私のボードゲームの生まれ方として、
①まずシステムが生まれ、それに合わせてビジュアルをこじつける
②まずビジュアルが浮かび、そこにうまいことシステムを落とし込む
があり、稀に
③システム・ビジュアルがセットで生まれ並行して育つ
という変則パターンがある、という話は以前のnoteでもちょろっと触れた。今回からしばらくは、その具体例の話をしようと思う。
今回は①のパターン。
この作り方で代表とすべきはやはり『白詰草の庭』だ。最初は名刺印刷で製作、コミケで少数発行し、人気があったのでちゃんとしたカードで新版を作ってゲムマに持ち込み、なんやかんやあって今では『クローバーブーケ』とタイトルを変えてダイソー様で売られているという、我が子の中では最も出世した作品である。
ルールについてはダイソー様が動画を出してくれているので、そちらをご確認いただく方が早い。 https://youtu.be/P0pSVw3irfA @YouTube
このシステムを考えついた時は深夜2時で、私はワインを1瓶空けてホロ酔いで大変気分が良かった。そして、ぼちぼち寝るか……という頃合いで、突然「手札の条件が全く同じで、バッティングではないシステムは作れないか」という思考が降って沸いたのだ。
この作品の少し前に、私は『バッティンドーナッツ』という、プレイヤー全員が同じ内容、同じ枚数の手札でスタートするバッティングゲームをリリースしていた。なお、これは「バッティングって被ると損することが多いから、むしろバッティングして嬉しいゲームを作ってみよう」という制作意図だったのだが、パターンとしては冒頭の③に当たるため、今は割愛する。
ともかく、その『バッティンドーナッツ』のようにプレイヤー全員が同条件の手札を使った、違うゲームを作りたいと考えたのだ。
まず製作者なら誰でも2〜3セットくらい持っているトランプを使い「まあどうせ最初はテストだ、ババ抜きみたいにお互いの手札を引いてくる感じで試してみよう」と、適当にハートとスペードの1〜10を抜き出して遊んでみたところ、これが思いのほかスムーズに、そしてまあまあ面白くできてしまった。
この時、私は酔っ払っていたので「私って天才!」と思いながら、アートワークについては翌日の私が何とかすると信じて疑わず、良い気分のまま就寝した。
翌朝の私は激怒した。トランプは数字とスートだけで完成した素材であり、そこにどんな世界観・アートワークを乗せたらいいのか、さっぱりだったからだ。
ので、まず「トランプでもできる、じゃあトランプでいいじゃん」を解消するべく、カード構成を1〜10ではなく0〜9に変更。トランプに0がないからだが、ぶっちゃけジョーカーや絵札で代用しようと思えばできる。ちょっと弱い。
次に、強さ逆転ルールを持つカードを4に変更。当初は1(つまり変更後の0)が逆転ルールを持っていたのだが、相手に引かれた時にそのラウンドでの確実な負けが見えてしまうため、ちょうど中間くらいの数字にしとけばプレイングにも読み合いにも幅が出せていいのでは、ということになった。中間だから別に5でも良かったのだが、4にしたのは何となく4の方が厄介な数字というイメージがあったからだ。
ここから、世界観・アートワークに関して怒涛の連想が始まる。
まず4から四葉のクローバーを想起し、絵柄の方向性が決定。幸運の象徴なのに、相手に取られた時は局面判断が難しくなる点が面白く感じたので、表向きは女の子二人が仲良く花冠を編んで遊ぶメルヘンな世界観だが、実は相手より大きな花冠を作りたいと考えていて、集めた花束をお互いに盗み合う設定となった。
今でこそ「キーとなる数字4を生かすために打ってつけの世界観とアートワーク」と好評を頂戴しているが、実際にはこのように無理矢理どうにかした感が強い。
個人的にはシステム先行アートワークこじつけ型は、そのシステムに噛み合う世界観とアートワークを発見するまでが大変で、もっとも難産な製作パターンだと思っている。
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