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クリスマス・イブ/山下達郎


私が大学に入学して、初めてのクリスマス・イブ。


当時、早朝のアルバイトで八百屋の野菜仕入れをする為に、市場で買い付け助手をしていた私は、バイト先の若大将が運転するトラックの助手席に乗り、市場までの道のりに、あれやこれや話すのが日課でした。


ある時「なあ、クオちゃん!彼女おらんやろ?欲しないか?」と若大将が紹介の話を私に持ち掛けてくれたのでした。


「ええ!?僕でいいんですか?」と訪ねると「ええねんええねん!俺も紹介する女のコ、直接は面識ないねんけど、そのコ彼氏と最近別れてしまって新しい恋人募集中やねん!」と若大将。


「やったあー!そろそろこの不毛な生活にピリオドが打てるぞ!今年のクリスマスこそ“シングル・ベル”やなくて“ジングル・ベル”を鳴らすぞ!」と意気込んだ私。


バイト先の八百屋の斜め前にある花屋の息子さんの女の友達を紹介してもらえると言う事で、写真を見せてもらうと同い年の可愛いコだったのです!

若大将から「クオちゃん良かったなあ!頑張りやあ!クオちゃん顔はイカツイけど、喋ったらエエ奴やねんからな。相手もクオちゃんの事知ると、きっと好きになってくれるからな!」と言われて、そのコと会う約束の日。
それは私が19歳になって間もないクリスマス・イブでした。


待ち合わせ場所は阪急梅田のBIG MAN。約束時間は13時。
私は遅刻しちゃいけないと思い20、30分前には到着して今か今かと待っていたのです。
ところが待ち合わせ時間を30分過ぎ、1時間過ぎてもそのコは来ません。
気づけば時計の針は、まもなく18時を指そうとしていました……


とうとう、そのコはBIG MAN前には現れませんでした……


あとで聞いた話では、そのコは、別れた彼氏の事が忘れられず、その彼氏に会いに行っていたとか……


きっと君は来ない~♪
ひとりきりのクリスマスイブ~♪Uhnn~♪


山下達郎「クリスマス・イブ」を聴くと、今でもあの10代最後のBIG MANで5時間待った12月24日がフラッシュバックします。


流石に今では「あぁ、こんな事もあったなあ」と笑って言えますが、やはり「クリスマス・イブ」が流れていると、記憶の彼方にあるBIG MANでの情景がセピア色で甦り、ちょっぴり感傷的な気持ちにさせてくれます。


あれから20年以上経ちますが、今年も“ジングル・ベル”じゃなく“シングル・ベル”のままですね……(苦笑)

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