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Carmenを観たらCarmen on Iceを観たくなる

この前、フランクフルトに住むヴァイオリンの先輩に教えてもらって駆け込みでチケットを入手して観に行ってきた”Carmen"。
演出が素晴らしいよ〜と教えてもらい、先輩がオーケストラで弾いている日が偶然私も予定のない日で、さらに最後の1席が空いていたので即チケットを購入。1階席の前から11列目。いわゆるS席だけれども、学生は半額になるので迷わずチケットを買いました。全公演のチケットが完売していて、本当に偶然その日だけチケットが残っていた奇跡。先輩に、「チケット取れた…!!奇跡…!」とメッセージをして、当日のオペラを心待ちにしていました。

最近のオペラは傾向として現代解釈された演出が多く、私が初めてみたCarmenは、ポップシンガーとして演出されていました。歌手の歌は素晴らしかったけれども、舞台装置がライブハウス風だったり、全体的に現代的な雰囲気が漂い、歌詞の内容と辻褄が合わず、私には少し苦い記憶のオペラでした。
そのため、どこかで印象を払拭したいと思っていた演目の一つ。
今回は現代風でありながらも新しい解釈を加えているとのことと、先輩の勧めも合って特別楽しみでした。
日本ではできないような最初の幕開け。そして、Carmenと彼女を取り巻く周囲と思惑が絡まり、進む物語に目が釘付けでした。お話の時代に準拠しつつ、演出設定を現代にするのではなく「現代人の目線」を取り入れた演出は見応えたっぷり。
大掛かりな舞台装置ではなく、大きな階段を使って高さの上下、左右を使ったパワーバランスやさまざまな差を表現したり。
とにかく舞台から目が離せない3時間でした。
帰宅してからも興奮は冷めず、買ったパンフレットを眺めたりして、気に入ったシーンを思い出して音楽に浸っていました。
先輩の話では、指揮者と演出家の相性が良く、2人がタッグを組むととても良い見応えのある演目になるとのこと。また、今回はフランクフルト歌劇場のCarmenの中でも珍しいバージョンなんだとか。どうりでチケットが毎公演売り切れだったのか!と辻褄が合いました。

次の日、唐突にCarmen on Iceが観たくなりました。
私にとってのCarmenの物語は「Carmen on Ice」から始まっています。
これはスケート選手のカタリーナ・ヴィットがCarmen、ブライアン・ボイタノがDon Jose、そしてブライアン・オーサーがEascamilloを演じている1時間半くらいのフィギュアスケート映画。
このCarmen on Iceが本当に好き。
私は今の時代のフィギュアスケートには疎く、詳しくないのですが、派手なジャンプより、Carmen on Iceの時代のスケーターの演技の方が好きです。
流れるようなスケーティングとエレメンツが「技」ではなく作品の一部になっている美しさ。日本人選手では伊藤みどりさんの時代ですが、飛びまくるジャンプより、芸術作品としてのフィギュアスケートの方が私には魅力的。音楽づくりにも通じるところがあり、芸術作品としてのフィギュアスケートは学ぶことがたくさんあります。
Carmen on Iceにはセリフは出てきません。歌もないです。しかしながら、Carmenの妖艶さとDon Joseの純粋で素朴な感じ、Escamilloの猛々しさがスケートから伝わってくる、これって素晴らしいことだと思いませんか?

特にEscamilloのブライアン・オーサーのシーンは必見です。今はコーチとしてなんとなくぷくっとした可愛いオジサン、みたいに見えますが、若かりし頃はスラリとしていてとってもイケメン。そして、バク宙(!?)
コンパルソリーの美しさと、氷の上に重心がしっかりとのった足捌きは何度見ても飽きません。
私にとっての黄金期のスケーター3人の競演は見応えたっぷりなので、おすすめです。

歌に合わせて物語が進んでいくオペラも心情やそれぞれの思惑が絡み合い、もつれ合っていく、観客だけが見えている世界を眺めるのも楽しいですが、言葉を使わずに表情やダンスから想像を膨らませていく楽しみもあります。
いろんな表現方法から見えてくる様々な"Carmen"という誰もが魅了される人物が多角的に、色彩豊かに浮かび上がってくるように思います。

ちなみにフランクフルト歌劇場で少しだけインタビューと公演の短いビデオクリップが見られるので貼り付けておきます。
(動画で延々に笑っている音声が入っているのですが、実際の公演中に1人のダンサーが高笑いを続けるというシーンがありました。観客も最初はすっごく我慢していたのですが、笑っている姿が笑いを誘うので、客席で吹き出す人が続出していました、笑)

Katarina WittのウェブサイトにもCarmen on Iceについて掲載されているのでこちらもシェア(ドイツ語ですが)

Ciao!

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