美しい人
「鏡よ、鏡。世界で一番美しいのは誰?」
白雪姫でこんなセリフがあったのを覚えている。
今でもたまに思い出すのだけれど、私が出会った人で一番美しいなと思ったのは、外国人の女の子だった。
恋愛の意味でなく、純粋に美しいと思った。
それは、学生のころのワークキャンプでたまたま会った同年代の白人の女の子。
私が旅のお供に持っていった1冊の古本を見つけると
「ちょっと貸して」という意味のことを言いながら手にとってパラパラーっとめくり、その中に顔を埋めながら「この匂い好きなんだー」と言った。
美しい、そう思った。
その一瞬の光景が今でも忘れられない。
時が止まったようで、世界が「今ここ」だけ存在している感じがした。
その光景も、その時の彼女の表情も、そのときに感じた自分も、キラキラに光るガラス瓶の中に格納されていて、蓋を開けるといつでも鮮明な記憶として蘇ってくる。
その時の古本。もちろん日本語で書かれているものだから内容は彼女にはわからないはずなんだけど、外国の古本もある程度匂いは共通しているのだろう。
古本を手にとる。
匂いを感じる。
古本がつなげてくれた光景。
そして、美しい人。
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