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レビュー「大豆田とわ子と三人の元夫」第3話

「第3話 全俺が泣いた 〜器が小さい男の恋」

佐藤鹿太郎は2番目の夫。カメラマン。
3番目の夫である慎森が論理思考なのに対し、感性に寄っている人である。
時々慎森の理屈(屁理屈)に対して応戦しようとするが、トンチンカンなことを言って空回りしている。
その掛け合いがまた面白い。
とわ子にサプライズで花束を贈ったり、優しい言葉を照れもなく言える。
愛を語るロマンチスト。
ただし、時折、器が小さい。

第3話では鹿太郎ととわ子の馴れ初めに触れている。
とわ子とは社交ダンスの場で知り合った。

◯鹿太郎が以前に告白した女性(とその彼氏)に遭遇し、容姿を馬鹿にされるシーン
鹿太郎を馬鹿にする女性に対して、
とわ子「残念でしたね!」一撃。
 続けて、「残念でしたね!」と追撃。
 さらに女性とすれ違った後、振り向き様に「残念でしたね!!」でトドメの一撃。
鹿太郎(ナレーション)「全俺が泣いた」

YOU WIN!!
昇竜拳が鮮やかに決まり、見事に高飛車女の息の根を止めた。

この人の魅力を分からないなんて、残念な人ですね、こんな素敵な人と付き合えなくて残念でしたね、と。

鹿太郎にしてみたら、好きな人(とわ子)と至福の時間を過ごしている中、過去の赤っ恥を晒されてプライドもズタズタに切り刻まれるようなどん底の場面。
場合によっては、とわ子にも見放されてしまうかもしれない。
どうする、俺。
そんな重要な局面で、とわ子の攻守兼備の一手が炸裂する。

根底にあるのは鹿太郎に対する全面肯定、全面擁護なのだ。
とわ子みたいな女性が隣にいたら、「惚れてまうやろー!!」な場面である。
鹿太郎が惚れるのも当然の成り行きだ。
だから、「全俺」が泣いてしまう。

「全米」が泣くのは創作の世界の話だが、ここでは「全俺」が泣いている。
とわ子の愛が、まさに今、「全俺」の全神経を強く震わせている。
遠い誰かの話ではなく、「俺」に起きている事実なのだ。


この物語は、いろいろな場面で出てくる言葉の一つ一つにもユーモアと深い意味、センスを感じる。
登場人物たちも現実の世界にいるんじゃないかと思わせてくれる。
完璧な人間なんていなくて、どのキャラクターも少し駄目なところが見え隠れするから、より一層愛おしいのだ。



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