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戦術的ピリオダイゼーション理論

はじめに

今回は戦術的ピリオダイゼーション理論について
書きたいと思います。(以下、戦ピリ)

サッカー好きなら一度は聞いたことがあると思いますが、「サッカーはサッカーをすることで上達する」
このフレーズをはじめて見たとき、本当にその通りと感動した記憶があります。なぜなら自分自身、選手時代に受けたトレーニングではサッカーとはあまり関係のないようなトレーニングが多いと感じていたからです。もう30年も前の話です。
どのようなトレーニングを受けてきたかは書きませんが、今現在でもそのようなトレーニングはあるのではないでしょうか。そのようなトレーニングの全てが良くないわけではありませんが、他にも、いろいろな考え方のトレーニング方法論があるということ。今回はその一つの戦術的ピリオダイゼーション理論について書きたいと思います。

戦ピリとは?

ポルト大学教授ビトール フラデによって提唱されたサッカーを向上させるための1つの方法論である

ビトール フラデは大学教授でサッカーのプレーヤー、指導者。そしてポルトガルのプロチーム、ナショナルチームなどトップレベルの指導にも携わる人でした。なので、この考えは、エリートレベルからきた話です。

この方法論は多くの指導者に影響を与えました。有名な監督であればジョゼ モウリーニョ、マルセロ ビエルサ、ファン ハール、マウリシオ ポチェッティーノ。あげればキリがないほどいます。

どのようにして出来たか?

21世紀、科学のあらゆる分野での転換期を迎え、特に認識論や医学の分野の変化はビトール フラデ教授に影響を与えました。
アンリ ラボリ(フランスの外科医、神経生物学者、作家、哲学者)、エドガール モラン(フランスの哲学者、社会学者)、アントニオ ダマシオ(神経科学者)、各分野の情報を持ち寄り、この方法論はより理解し、サッカーの理解もより深めることとなりました。

複雑系

複雑系とは、相互に関連する複数の要因が合わさって全体としてなんらかの性質を見せる系であって、しかしその全体としての挙動は個々の要因や部分からは明らかでないようなものをいう。 これらは狭い範囲かつ短期の予測は経験的要素から不可能ではないが、その予測の裏付けをより基本的な法則に還元して理解するのは困難である。

まずこのパラダイムの複雑性を理解することから。
実際に人生は複雑なもの。
サッカーや人生においての伝統的な考え方に疑問を投げかける。
戦ピリを理解する第一歩は固定概念を取り払うこと。
これまでのサッカートレーニング方法の考え方では、いわゆる要素還元論というもの。
サッカーの構成要素は技術、戦術、フィジカル、メンタルの4つから成るとされています。
従来のトレーニングではこの構成要素それぞれを分けて考え、例えば試合でパスミスが多かった。パスのトレーニングをしようということで技術のみに焦点をあて対面パスを行う。試合で当たり負けが多かった→ではフィジカルを鍛えよう→筋トレ、などです。このようなトレーニングの考えに疑問を持っていた方は多くいたのではないでしょうか?
戦ピリでは要素還元論ではなく全体論が用いれられていて、技術、戦術、フィジカル、メンタルの4つの要素は複雑に絡み合い切り離して考えるものではないとしています。

サッカーの特異性について

特異性とはあるものだけにみられる質的な特殊さ

サッカーで言えばゲームモデルに当てはまると考えています。
ゲームモデルとは成功や成長、タイトルなどをチームに持ってくるもの。
指導者の理想があり、その理想からゲームモデルは誕生します。
ゲームモデルが定義することは、戦術、メンタル、分析力、マインドセット、リーダーシップ。これらが相互作用することを意味します。もちろん技術、戦術,フィジカル、メンタルも相互作用し明確に定義しています。

サッカーのトレーニングについて
サッカーにおいて明確なトレーニングはないと考えます。しかし、明確なゲームモデルに対して
明確なトレーニングはあるということ。

特異性の原則


「特異性の原則」とは、「トレーニング効果はトレーニングしたようにしか高まらない」という原則であり、どんなにキツいトレーニングを行っても、それが競技特性と結びつかなければ意味がないと言い換えることができます

戦ピリでは全てのトレーニングをゲームモデルに関連させます。W-upから最後のトレーニングまでゲームモデルによって導かれます。

このように複雑さと特異性はこの方法論で意図されています。

戦ピリの原理原則について

①推進力の原則

11対11からはじまり、トレーニングの種類を増やしたり、人数を増やしたり減らしたり。スペースを広くしたり、狭くしたり。ルールを増やしたり、ゴールの数や位置を変えたり。
重要なことは、現象を引き起こしたり、現象を少なくなったりすること。
ゲームの中の、できていない部分を発生させ向上させる。気をつけなければならないのは、トレーニングのエッセンスは無くさないこと。ここでいうエッセンスとは局面の移行の瞬間。そして
ゲームモデルを理解するまでの学習プロセス。
学習プロセスについては、個々にも全体的にも雰囲気が大事です。
神経学では学習プロセスにおいて感情の重要性がいわれています。一般的に関連する記憶は感情と創造力が重要で強化したい要素のある状況を作り出すことが重要です。
ゲームがいつでも、もっている感情(楽しさ)を無くしたり、減少させてはいけないということ。
そして、ドリル的なトレーニングにしても勝負という要素は常にあった方がいいということ。
あとは、トレーニングを紹介して解決策を教えるのではなく、状況を伝えて、その中で選手たちが解決していく必要があります。また、起こる現象が明らかすぎてもいけません。選手自身に考えさせて、解決策を見つけさせることも重要になってきます。


②複雑な進行の原則

ゲームの答えに関する全ての側面は常に進化させ相互接続させる必要がある。
少し難しい言い方ですが、要するにゲームモデルを参照として、自分達が向かう方向を理解し、いつでもこのパターン(ゲームモデル)になるということ。そしてゲームモデルでの4局面の要素はどんなトレーニングにも含まれるべき。ゲームモデルは日々進化していくものでなければならない。

③特異性の水平方向の交互の原則

これも何言っているか理解し難いですが、日本語に訳すとこのようになるみたいです。が、どういうことかというと、特異性については、その要素はどのトレーニングにおいても、ゲームモデルの考えに沿って行動すること。水平方向の交互は論理の1週間のコンテンツ。ここでいう論理とは、①パフォーマンス、疲労、回復の3つの関係 ②全体と個人 ③方法と方法論 のことです。

1週間にわたるコンテンツ=モルフォサイクル

モルフォサイクルとはチームをヘルプするための大事なアイデアで、最後の試合から全体、個人として、休みをとり、次に習得トレーニングへ移行し、それによってチーム、個人のパフォーマンスが向上。最後はフレッシュで全回復した状態で試合に臨むといった1週間のサイクル。

次に全体と個人の関係。全体的なパフォーマンス、疲労,回復は計測が難しいということ。最低でも4日は空けることでパフォーマンスは維持できるということ。これはFIFAやUEFAが長年の経験から導き出した日数である。
しかし4日ごとに試合ではどこかのタイミングで疲労がでるので、連続しては行わない。
トレーニングでは試合から4日後にゲーム形式のトレーニング。その次の日は疲労によるパフォーマンスの低下を引き起こすが、この時の疲労は3日で回復するようオーガナイズする。

最後に戦ピリは方法論であって方法ではないということ。
3つの方法論的な原則がガイドラインとなりそれぞれの状況で手助けになるということ。大切なのは論理。
意識することは、コンディションと正しい日にできているかどうか。チーム全体でパフォーマンス、疲労、回復をリスペクトすることは大変重要だということ。

細かなことはまだまだありますが、戦ピリの基本的なことはこのような考えです。今回は以上です。最後まで読んで頂きありがとうございました。

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