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【STAND UP FOR ANIMALS動物愛護シンポジウム】覚書き③

連投になりますが、保護猫カフェ「ねこかつ」さん主催のシンポジウムの講演記録です。

本日は、朝日新聞記者の太田 匡彦(おおた まさひこ)氏の講演をかいつまんでご紹介しようと思います。

太田氏は、主にペット流通業の取材を通して発信されています。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』『「奴隷」になった犬、そして猫』(いずれも朝日新聞出版)などがあり、表題をみても、内容の深刻さ、そして著者の真実さを感じます。

私は「ねこかつ」さん主催のこういったイベントは二回目の参加で、前回も太田記者は登壇なさり、改正後施行となった、動物愛護法について詳しくお話をされました。

今回は、その動物愛護法施行以降の現状についてのお話でした。

正直、現状もあまり変わってはいないと言いながらも、一部廃業になった業者もあるということから、一定の効果はあったのかもしれないとのこと。

流通業に関しては、オークションくらいしかはっきりした形が見えないので、実感がないのですが、それも、行政の立ち入り調査等がいまだ終わっていないという現実があるようです。

【元々の問題点】
犬や猫がペットショップのケースに展示されるまでに、どういう経緯があるのか。

想像はつくかと思いますが、まず繁殖業者で子供が生まれ、その子供を直接ブリーダーから購入するか、オークションと銘打つ競り市にかけて、バイヤーが購入するという形がとられます。

オークションでは、子犬や子猫が小さな箱に入れられ、まず、マイクロチップを挿入され、健康診断等したあとに、魚のように競りにかけられます。

しかし、この流通過程が非常に問題で、今でも少なくとも、2万匹以上が亡くなっています。

しかも、新しい動物愛護法により、8週齢規制が敷かれたにもかかわらず、その生年月日を偽って、いまだに4週くらいで流通させている。

本来ならば、授乳により必要な菌などが体内に育つ過程を引き離されるわけですから、弱い子が命を落とす危険は最大級です。
生命力が強い子であっても、何らかの病気を発症する危険性はある。

先日も、環境省の行ったアンケートで、実際にこの8週齢は、実に7割の業者で守られていませんでした。
そもそも、年齢を明記するシステムもないわけですから、さもありなん。

スライドも出されましたが、まるでお菓子のコンベアーの箱に、入れられている子犬たちの姿は正視できません。

また、オークションは誰でも登録できるため、個人で子供を産ませて出品することもできます。

更に最近の問題として、下請け愛護団体と言うものが存在し、売れ残った犬猫を引き取り、保護動物として譲渡し、その費用として10万なりと値段を付けるということも起こっています。

【猫が増えている問題】
今まではこういった流通産業の主な動物は「犬」だったのですが、
ここ最近は「猫」がブームになってきており、今までは犬専門だったのに、「猫」も兼業する繁殖業者が増えているそうです。

実は猫は季節繁殖動物です。日当たりに関係があり、冬などの日照時間が短い季節は発情しません。

逆に、室内などいつでも光があるような状態だと、猫は発情を繰り返します。妊娠期間も2か月と短く、繁殖業者の間では、「ケージの蛍光灯をつけっぱなしにしていると、いくらでも子供を産む」というようなマニュアルもあるくらいです。

また、体が小さくスペースを必要としないため、定年退職を機にブリーダーを始める人もいるとのこと。

こういった状況で、オークションは誰でも登録可と言うことになれば、素人でも、かなりハードルが低いというのが解ります。

【どうすれば現状を変えられるのか】
恐らく、どの登壇者さんも仰ることだと思いますが、結局は「法制度で規制する」しかない。

前述しましたが、8週齢規制に関してはまったく実効性が低い。理由としては、オークション会場や繁殖業者の不正がある。
こういうことに関して、法を敷いたのだから、法で規制するしかないということです。
しかし、実際は、法規制に関しての立ち入り調査が終わらない現状。

いつも思うのは、太田記者もEvaの杉本彩さんも、ひどい現状を目の当たりにして、本当に、はらわたが煮えくりかえる思いを死ぬほどなさっているだろうと思うけれども、冷静です。

裏を見る機会も多いであろう太田記者にしては、はっきりと必要なものもわかっている上で、記者らしく、データとしての現状をしっかりと伝えてくださる。

行政指導だけでは、法を犯した人間に処分はできません。命令出ないと実施できません。それが出来るのは、法を司る行政だけなんです。

【善意を利用した悪意】
人間は本当に欲深い生き物だと思うのは、保護動物ビジネス等で、売れ残りの犬猫を下請けし、譲渡に際して10万円の寄付を要請するという事例が起きています。

この事例の問題は、保護して里親に繋げるということでは、第二種動物取扱業で良いかもしれませんが、10万円で「売る」ならば、第一種動物取扱業と言わねば筋が通りません。

この境目もあいまいです。
だからこそ、こういう保護動物に対して「ビジネス」が存在してしまう。

また、恐らく行政に見せていない繁殖場は多々あると、太田記者も仰っていましたが、闇の部分が多すぎるのも怖い問題です。

それから、ネットショップ。
これは、2019年の動物愛護法改正により禁止となりました。が、しかし、現在はペットショップを媒体として、結果的にネットショップをやっている業者もいるようで、法の網目はいくらでも潜り抜けることが出来ると、ため息とともに、もはや感嘆さえしました。

【今後の課題とは】
太田記者が最初に仰っていた、「法制度規制にたいして、立ち入り調査が終わらない」と言う事実。

これが解消されれば、問題は大きく進展すると感じられました。
どんな問題もそうでしょうが、いたちごっこを取り締まるには、管理しかないのだろうと思います。

ここで、前回の埼玉県生活衛生課長の橋谷田さんの言葉を思い出しました。

すなわち、「消費者がしっかりした感覚を持ち、厳しい目を向ける」こと。

人知れない繁殖場での悲惨な現状などは、どうしても見つけられないこともあるでしょう。

しかし内部告発などにより、誰かの目に見えてくることがあるのは、やはり、どうしても耐え難い事実があるからだと思います。

誰しもが、動物の問題だけを考えているわけではありません。
だったら、誰もが、様々なことに視野を広げる必要もあるのかもしれません。

太田記者の記事は、朝日新聞で読むことが出来ます。
記者と言う立場からの、冷静なお話の仕方に、逆に心を打たれました。

そして、筆を通して伝えていく、と言う、記者の力を感じた時間でもありました。

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