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「東大読書」


 仮に、今まで読んだ本の中で人生を変えた1冊はありますか?と聞かれたら、多分この本をあげるでしょう。 「東大読書」。読んで字のごとく東大生の本の読み方です。
 40歳後半になり、管理職にもなり、それなりに苦労もしてきたつもりでしたが、正直なところ、社会の事は全然でした。そもそも知ろうともしてなかったので、新聞は読まない、そういった類いの番組はほとんど見ないという感じでした。本は読んではいたのですが、いわゆる推理小説です。赤川次郎さん、西村京太郎さん、最後は東野圭吾さんを好んでよく読んでいました。というわけで知識や教養を深める為の本は一切読んでませんでした。テレビでは、池上彰さんや林修さんが活躍しており、色々な社会の事をわかりやすく説明しているのをたまに見ては、「頭良いよなあ、すごい勉強したんやろうなあ、あんなふうに人に教えれたらカッコイイなあ。」なんて思っていました。その時分に林修さんが、番組内で200冊以上の本が家にあるかないかで、その家の学力がわかると言われている。それぐらい本を読む事が大事。というような事を言っていたのを聞いて、「それはわかるけど、今から何冊の本読まなあかんねん。だいぶ手遅れやな。難しい本読んでも全然頭に入らんし、読むスピードめちゃくちゃ遅いし・・。」と思いながらもまず考えついたのが速読でした。「一冊を2分で読めるって!これなら追いつける!」・・・愚か者です。3冊ぐらい速読に関する本を買いましたが、当然のごとく何一つ身につかずでした。速読はできる人もいるでしょうし、決して否定はしません。ただ、今までの知識や教養のマイナスを速読で一気に取り返そうとしたのは愚かでした。動機が不順です。ただ、それからは推理小説は一切やめて、池上彰さんの分かりやすそうな本を買ったり、せめて日本の事を知ろうと思って、世界遺産を覚える為に本を買ったりとか、とにかく少しでも知識や教養が身に付きそうな本を読むようにしました。そんな時に、目に止まったのが、この「東大読書」です。覗き見すると、著者の西岡壱誠さんが、「東大生は、記憶力が良いわけでも、集中力が高いわけでも、一を聞いて十を知るわけでもない。覚えた事もほっとけば、2日目には7割ぐらいは忘れる。頭脳は普通の人と一緒。ただ本の読み方、勉強の進め方が違う!それを真似すれば、あなたも東大生のようになれる!のような謳い文句です。読んだ結果どうなったか?・・もちろん東大生のように、頭が冴えて、読んだ内容がビシバシと頭に入り込んでいくわけはありません。ほとんど変わってないでしょう。ただ、少し行動が変わりました。読んだ本の内容を、A4の紙1ページにまとめるようになりました。わからない単語はもちろん、なんとなくわかっていた単語もきちんとアウトプットできるよう調べ直すようになりました。3ヶ月に1回会社で作っていた新聞の中で、自分が携わっている障害者支援と本の内容を関連づけて文章を書くようになりました。今こうして、noteさんに書かせてもらっているのもその名残かもしれません。
 この「東大読書」の中で1番衝撃を受け、合点がいったのが、冒頭の方に出てきた「本が読めない人の9割は準備不足」。東大読書は読む前から始まっている。文章に入る前に、タイトル、カバーや帯から必要な情報をできるだけたくさん得る。それを踏まえて、本の内容の仮説づくりをする。本を読む事を暗い森の中を歩くと例えて、帯・装丁読みで、ライトを手に、そしてそのライトで照らされた灯りをヒントに自分なりの仮説を立て地図をつくる。つまり、地図とライトを持ってから森(本読み)に入るという事。この手間をくわえる事で、本読みが格段に変わる。東大生は、読解力があるのでなく、ヒントを得るのがうまい、など。言い当てられてます。私は、本を読み進める前に、タイトルを見てどんな事が書いているか想像したり、キーワードをよりたくさん見つけて付箋に書いて印したり、著者がどういった人物で、他にどのような本を出しているのか調べたりするなんて事は全くしていませんでした。すらすらと読み進めていただけです。結局のところ、東大生は、たった1冊の本の中でも考える場面を自ら多く作っていました。それをこの本の中では「地頭力」と言っています。
 東大生の事がわかりました。そして自分は東大生になれない事がわかりました。完敗です。「東大生みんなこんな事やってんのか。たかが1冊の本を読むのにそんな面倒くさい事できんわ!」ってなもんです。でもこの本のおかげで、読書の時間が増え、新聞も少し目を通すようになり、テレビはニュースを見るようなり、本屋には頻繁に入り、店頭を眺めるようになり、読んだ本をこれからの人生に少しでも活かしたいと考えるようになりました。
 私の中で、豊かな人生を手に入れるポイントは、良い環境と良いパートナーに出会う事だと思っています。頭が良い人や読書家の人からすれば、当たり前で馬鹿げた言葉だとは思うのですが・・・。
 「人だけではなく、本にも出会いってあるんですね。」
 



 



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