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カーコラム「NISSAN BNR32 SKYLINE GT-R 備忘録 Part.2」

 伊藤主管の元、新型GT-R開発プロジェクト" GT-X "は着々と進行していった。

 新型GT-Rの心臓部であるエンジンの開発は、横浜鶴見のエンジン工場内(当時)の機関設計部第7設計機関課の手に委ねられた。

 まず、新エンジンの排気量は、レースでのクラス区分を考慮して2600ccに決定された。

 それにターボチャージャーによる過給を行うので、ターボ換算(1.7倍)によるレギュレーション上の排気量区分は4500cc以下となり、最低車両重量も1260kgとなる(当時のGr.A規定)。

 装着されるターボチャージャーに関しては、当初は大径のシングルタービンも検討されたが、一般走行での扱いやすさを考慮した結果ツインターボが採用された。

 ターボ・ユニット本体はギャレット社製が選ばれ、エグゾースト側にT25、コンプレッサー側にT3を組み合わせ、タービンは慣性モーメントが少なくレスポンスに優れたセラミック製のタービン(日産製)が採用された。

 ターボチャージャーの過給圧570mmHgに設定され、過給はスイングバルブ式のウエイストゲートによりコントロールされる。

 ターボ特性は、その後の度重なる実験走行の結果から細かいリセッティングが実施された。大きな変更点としては、減速状態から再加速する際のレスポンスを向上させるため、リサーキュレーションバブルが追加された。

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 新型GT-Rのエンジンは、レースでの目標出力が600PSという、極めて高いレベルに設定されていたために、エンジン各部にはあらかじめ適切なチューニングが施される事になった。

 基本的なエンジンレイアウトは、当初V6と直6とが検討されたが、ツインターボ化が決定していたために、装着スペース的に有利で、しかも排気系の取り回しが楽な直6に決定した。

エンジンの要となるシリンダーブロックには、輸出仕様のRB24用のものをボアアップして使用、その結果、ボア、ストロークは86.0mm×73.3mmとなり、排気量は2568ccとなった。

 ブロック自体にはRB26としての補強リブが増設され、高剛性ディープスカート型シリンダーブロックとなった。

 クランクシャフトは8バランスウェイト、7ベアリングの鍛造製を採用。さらに、強度を増すために不可欠なフェレットロール加工も施された。

 ピストンはアルミ鋳造製だが、高回転化に対応したサーマルフロータイプが採用され、ピストン・ピンとコンロッドとのコネクションはフルフロータイプとなっている。

 さらに、ピストン本体には、冷却用のクーリングチャンネルが採用され、シリンダーブロックには、そこにオイルを供給するためのオイルジェットが設けられた。

 コンロッドは、高出力、高回転に対応できる材料強度とすると共に、大端部径及び大端部の幅を最適寸法とすることでフリクションロスの低下及び軽量化を図り、レスポンスを向上させている。

 さらに、大端部の剛性を高め、高回転時におけるコンロッドの変形を抑え、コンロッドベアリングの対焼き付き性能を向上させている。

 シリンダーヘッドに関しては、基本的にRB系のツインカムと同一のツインカム24バルブだが、吸気ポート及び排気ポートを直線的にレイアウトし、バルブの挟角を46°の狭角タイプとして排気効率化の向上並びに高圧縮化を実現している。

 燃焼室は4バルブ・クロスフローのメリットを活かし、コンパクトなペントルーフ型とし、さらに、スパークプラグを中央に配置して火炎伝搬距離を短くすることで急速燃焼を促進し、燃焼効率の向上を図っている。

 高出力化に対応し、ヘッドガスケットはボアグロメット内にステンレス製ワイヤーリングを入れたカーボン製のものを採用し、シール性の向上が図られている。

 また、冷却に関しては、シリンダーブロック同様、各シリンダー独立の横流れ式となっている。

 常に高温にさらされる排気バブルには、国産車初のナトリウム封入バブルが採用された。これは、バブルステム内部に粉末状のナトリウムが封入されたもので、一般の中実バブルに比べ、バブル表面温度で約55°C、そしてナトリウム部のバブル頭部では約145°C程度低くする事ができる。

 バルブの駆動方式はコンペティティブなダイレクトプッシュ式で、バルブスプリングはシングル。

 バブルの閉開度は、インテーク240°、エグゾースト236°に設定され、バブルのリフト量も大きくとられている。

 しかし、オーバーラップはゼロであり、バブルタイミングとしては中低速重視の設定となっている。
 

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