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エッセー「日々生まれ変わる肉体」

 肉体の細胞は、恐るべき速度で入れ替わりながら組織再生が進むようになっている。肉体には実に37兆個ほどの細胞がある。現在知られている銀河の星の数よりずっと多いこれらの細胞は、古くなったものが死んで常に新たな細胞に入れ替わり、1秒ごとに実に81万個以上に及ぶ細胞が入れ替わる。例えば、1日あたりに体が作り出す新たな赤血球は1兆個だ。

 動脈や静脈をめぐって体内の細胞に酸素と栄養分を運んでいる赤血球の寿命はおよそ4か月で、寿命を終えた赤血球からは肝臓で重要な要素が取り出され、残りは脾臓へと送られて再利用される。体内には6か月前の赤血球は1つも残っていないということになるのだ。半年で赤血球はすべて新たなものに入れ替わっている計算になる。

 消化管の粘膜も4日ごとに入れ替わる。肺組織は8日間、骨格はその10%が毎年入れ替わる。また、脳内には約840億個の神経細胞と、およそ同数の非神経細胞が存在する。脳内でも同じように常に新しい神経細胞が生まれており、細胞1つひとつが数千個の神経細胞と150兆個のシナプスで網の目のようにつながっている。

 そして、脳内では少なくとも毎秒1つの神経細胞が常に入れ替わっている。海馬と呼ばれる部分は記憶と学習を司っており、ここでも常に新しい神経細胞とシナプスの刈り込み(取り除かれること)と再生が繰り返されている。ある神経路が萎縮してしまうと、その部分の海馬も縮小する。成長すれば、その部分に関する海馬は増大する。

 今日現在の肝臓の細胞の中で最も古いものは、約5ヶ月前のものだ。ほんの最近まで、心臓の細胞はいったん死んでしまうと再生することはないと信じられていた。しかし、心臓組織にも損傷や壊死した細胞を再生する幹細胞領域があることや、心臓細胞は生涯に少なくとも3度はすべて入れ替わることが最近の研究で明らかになった。

 目の角膜は24時間以内に再生し、肌はすべてが新たな細胞に生まれ変わる。胃の内膜は1週間で自然再生するが、直腸の再生はもっと速い。

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