ドライビングテクニックベーシックPart.3「ブレーキング・基礎編」

 モータースポーツの世界では「ブレーキングがうまいヤツほど速くなる」といわれている。アクセルを踏むのは誰でもできる。よほどの大パワーを持つクルマでない限り、加速時にホイールスピンしてしまうことはあまりない。つまり、アクセルをペタッとフロアまで踏み込むだけで、誰でも全開加速が可能になるわけだ。

 一方、制動は、たとえ時速20km/hでもブレーキペダルを思い切り踏みつければ、あっさりとタイヤはロックしてしまうだろう。ましてや100km/h前後からのブレーキングなどいわずもがな、だ。つまり、100馬力や200馬力のパワーを路面に伝えるよりも、1トン前後の鉄の塊を止めることのほうが、タイヤにとってはより大きな負担がかかるわけだ。ここにブレーキングの難しさがある。

 ブレーキングにおいて「ロックさせるのは禁物」とは、よく聞かれる言葉だ。タイヤの基本特性として、どんなタイヤでもロック寸前の状態が、もっとも高いグリップ力を発揮するといわれているからだ。ブレーキングが難しいのは、ロックさせずかつ制動力を自在にコントロールするためには微妙なペダルワーク要求されるからにほかならない。

 もっとも、本当のロック寸前のフルブレーキングは、日頃はほとんど体験することはないだろう。不注意からオカマを掘りそうになってロックさせることはあっても、意識してハードブレーキングをすることはないはずだ。したがって、ギリギリのブレーキコントロールを身につけるには、まずそのようなハードブレーキングを繰り返し体験してみることが大切。

 もちろん、安全がきっちりと確保されているジムカーナコースやサーキットなどで行なってほしいが、もっとも初心者が犯しやすいのがロックしたままコースアウトすること。これは[ブレーキング(応用編)]でも述べるが、タイヤはロックしてしまうとまったく舵が効かなくなる。いくらハンドルを切っても真っ直ぐ進むだけなので、仮にロックさせたら、そのロックを解除できるようにならなくてはいけないわけだ。

 ロックを解除するにはどうするか。簡単な話だ。そう、ブレーキを緩めてやればいい。ところが、本来は車速を落とそうと思ってハードブレーキングしている最中にブレーキを緩めるなんてとんでもない、と思ってしまいがち。だが、そこで緩めればアラ不思議。ハンドルを切り込んだ方向にスッとノーズが向いてくれるはずだ。

 もちろん、完全にペダルから足を離すのではない。ちょっと緩めるだけ。そして、緩めてタイヤがグリップを回復したらまた強く踏む、を繰り返すわけだ。いわゆるポンピングブレーキがこれ。

 気持ちとして、どうしてもブレーキを緩めるのは怖いから、最初はなかなか難しいだろう。だから、最初は広大な広場など、コースアウトしないような場所で繰り返しトレーニングし、身体に覚え込ませるしかない。


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