エッセー「映画 " LORD of WAR " に見る戦争の現実と経済原理」

2005年公開のAndrew Niccol監督作品 " LORD of WAR "。

 映画の冒頭、薬莢が散乱し建物から黒煙が立ち上る戦場に、場違いなダークスーツをまとい、ブリーフケースを持ったNicolas Cage演じる主人公の武器商人Yuri Orlovがタバコを吸いながらカメラに向かい語りかける。

There are over 550 million firearms in worldwide circulation. That's one firearm for every twelve people on the planet. The only question is: How do we arm the other eleven?
(全世界で5億5000万発以上の銃器が流通している。地球上の12人に1つの銃器だ。 問題は残りの11人をどうやって武装させるかだ。)

 そしてBGMが流れクレジットと共にイントロが始まる。旧ソ連の弾薬製造工場で製造された一発のAK47用の7.62mm弾が、出荷から搬送を経てエンドユーザーの手に渡り、アフリカの内戦で使用されて一人の人命を奪うのまでの行程を弾丸からの主観映像で追ったイントロは、発射された弾丸が一人の黒人の額に命中する直前で終わる。

 地球上に人間が存在する限り戦争は永遠に続き無くなることはない。破壊と殺戮を生む武器を製造し、それをビジネスとして販売するのは国家である。そう国家は最大の武器商人なのである。そして、戦場において廃棄される膨大な数の銃器を含む武器をリサイクルし、再販するのがこの映画の主人公Yuri Orlovのような武器商人である。

 イデオロギーや大義で戦争をする時代はとうの昔に終わっている。戦争は莫大な利益を生み出すシステムであり、そこには善も悪も存在しない。戦場はただひたすら営利を追い求めるためのビジネスフィールドなのである。

 悲しいかな、それが現実。そしてそれを理解できなければ世界経済を理解することはできない。

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