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エッセー 「ダーティーハリー2 (MAGNUM FORCE)の思い出」

 マカロニ・ウェスタンでスターダムにのし上がったクリント・イーストウッドが、職務遂行のためなら非合法すれすれの捜査も厭わない一匹狼のタフな刑事を演じて世界的大ヒットとなった「ダーティー・ハリー」。

 正義と法の番人として、スミス&ウェッソンM29 44マグナムを容赦無くブッ放すサンフランシスコ市警察殺人課のハリー・キャラハン刑事というキャラクターは、それまでの刑事映画の主人公とは全く異なるヒーロー像として後のポリスアクション映画に多大なる影響を与えた。

 アメリカでは劇場公開直後からキャラハン警部が愛用しているスミス&ウェッソンM29 44マグナムが飛ぶように売れ、全米の銃砲店で品切れが続出した。それを受け、製造メーカーであるスミス&ウェッソン社が急遽M29の増産体制に入るなど、全米にマグナムブームが巻き起こった。

 スミス&ウェッソンM29 44マグナムは、この映画が公開されるまで狩猟用拳銃として、ごく一部のハンティングマニアにのみその存在を知られていた特殊な拳銃だった。

 スミス&ウェッソンM29 44マグナムには、銃身の長さが4インチ、6.5インチ、8インチのタイプがあるが、映画で使用されたタイプは6.5インチのタイプである。携帯性を考えれば、実用限界ギリギリの巨大拳銃である。

 主演のクリント・イーストウッドは、撮影前にスミス&ウェッソン社の専用シューテイングフィールドで元警官のシューティング・インストラクターからM29 44マグナムに関するレクチャーをみっちりと受けたという。

 強烈な反動をコントロールするため腰を落として腕を真っ直ぐに伸ばし、銃を両手でしっかりとホールドするという独自のシューテイングスタイルはその時の経験から生まれたものだ。

 第一作の大ヒットを受け、1973年にはシリーズ第二作が製作された。

 ダーティー・ハリー=クリント・イーストウッド=スミス&ウェッソンM29 44マグナムという図式が完全に出来上がっていたため、第二作目のタイトルは「MAGNUM FORCE(マグナムの威力)」。

 第2作のオープニングシーン、ラロ・シフリン作曲のテーマ曲が流れる中、深紅の背景に下からゆっくりと現れるスミス&ウェッソンM29 44マグナム。テーマ曲とクレジットが流れる間中その圧倒的な破壊力を秘めた偉容を見せつける。

 曲がエンディングに近づくと、構えていた掌の親指はゆっくりと動き撃鉄を引き起こされる。そして、ゆっくりと銃が動き銃口が観客に向けられる。

「This is a 44 magnum, the most powerful handgun in the world, and would blow your head clean off... "do I feel lucky ? "」 BANG!!!

 何度観ても鳥肌もののシーンである。スミス&ウェッソンM29 .44マグナムは男性的力の象徴であり、男性器のメタファーである。

 この第二作は、日本でも空前の大ヒットとなった。

 公開された渋谷パンテオン(当時)の広いロビーは人で溢れ、モデルガンメーカーのMGCが出店した特設販売コーナーには黒山の人だかりができプラガンのM29やM19のリボルバー、M730ライオットショットガンのモデルガンなどが文字通り ”飛ぶように" 売れていた。


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