カーコラム「1993年、DTMを震撼させたアルファショックの真実 追想Alfa Romeo 155 V6 Ti」
90年代初頭、最も熱く激しいツーリングカーレースとしてその名を世界に轟かせたDTM(Deutsche Tourenwagen Meisterschaft/ドイツツーリングカー選手権)は、伝統的にベルギーでの初戦がシーズンの幕開けとなっていた。
93年、注目の開幕戦となった第1戦ゾルダーでは、誰もが驚きを隠せなかった。メルセデスに招かれ、DTMにやって来た真紅のアルファがいきなりポールポジションを獲得。雨のレースでラリーニとダナーがワンツーフィニッシュを演じ、F1を凌ぐ65000人の大観衆に大いなるショックを与えたのである。
路面も乾き始めたゾルダーでの第2戦。メルセデス勢の期待も虚しく、ラリーニ、ダナー、そしてそしてナンニーニのアルファが快走。ただ一台、ダナーと同じシューベル・アルファに乗るフランチアだけがエンジン火災でリタイアしたものの、ラリーニ、ダナーのアルファがまたもやワンツーフィニッシュを決め、DTM初参戦にして見事初優勝を飾り、さらに開幕第1戦、第2戦での連続ワンツーフィニッシュという快挙を成し遂げた。
これが後の世に言う"Alfa Shock"である。
このレース主役であり、ライバルであるメルセデスから尊敬と畏怖の念を込め"La Bomba da Milano(ミラノの爆弾)"と呼ばれたAlfa Romeo 155 V6 Ti(アルファロメオ 155 V6 Ti)は、メルセデスからの招待で初めてDTMの迫力を目の当たりにした名門Alfa Corse(アルファ・コルセ)の総帥ジョルジョ・ピアンタが、その参戦を決定した1992年2月からわずか7ヶ月たらずでシェイクダウンへとこぎつけた革新的且つ極めて強力な怪物マシンである。
アルファロメオ155の面影を残しながらも、格別の凄みを感じさせるボディは、その外板の80%以上がカーボンファイバー製で、エンジンフードをフェンダーが一体となったフロントカウルもグループCカー並に軽い。唯一の例外として左右のフロントドアはスチール製だが、これはDTMの安全規制に従っているためである。
タコメーターは13,000回転以上までメモられたバーグラフ式。ステアリングには電動式のパワーアシストが付き、ギヤボックスはアルファ製の6段。シート脇にはブレーキバランサーやスタビライザーコントロールなど設置される。
フォーミュラーカー並の着脱式サブフレームに低くマウントされるオールアルミ60度V6 2.5リッターエンジンは、カーボンクラッチを含めても145Kgと軽く、24本のバルブはチタン製、12.5という高い圧縮比から最高出力は11,800回転で420馬力、最大トルクは9,000回転で30.6kgを搾り出す。
ブレーキは巨大な4ポッドキャリパーを持つブレンボ。ABSは装備されていない。
ホイールはテクノマネージョ、スピードライン、OZ製の10J-19インチ。タイヤはミシュランを履く。
4WDの前後トルク配分は初参戦の93年には33:67に設定されていたが、翌94年からは30:70に変更された。センターデフはZF製だが、後にファーガソンのビスカスシステムに変更された。
"Alfa Romeo 155 V6 Ti" Spec
Body Dimentions : 4,576×1,750×1,410
Wheel Base : 2,540
Track : F 1,500/R 1,500
Weight : 1,040kg
Steering : Electronic Power Assistted
Power Train : 2Plate Carbon Clutch
6Speed Gearbox
4WD(F 37/R 67)
Engine : 60°V6 2,498cc(93×61,3mm)
C.R: 12.5 4Valves
Wwber-Marelli S4 Multi Point Injection
420PS/11,800rpm 30.6mkg/9,000rpm