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Essay

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鳴海邦彦が思いつくままに、そして気ままに綴るフリーエッセー。
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2022年5月の記事一覧

ショートエッセー「終生 "走り屋"」

久しぶりに夜の箱根を走った。 奥湯河原から大観山を経て芦ノ湖へと至る県道75号線、通称「椿ライン」。 今を遡る事40年前、毎晩のように走ったホームロードである。 攻めたわけではない。コーナーの一つ一つを、昔の思い出を慈しむように走った。 驚いたことにほぼ全てのコーナーを憶えていた。 しかもコーナリングラインがはっきり見えた。 「俺、まだいける。」 大歓山の駐車場にクルマを停め、満天の夜空を見上げ確信した。 走りへの熱き思い。荒ぶる走りへの渇望。 「いくつにな

エッセー「サム・ペキンパーの金言」

 「わらの犬」、「ワイルドバンチ」、「戦争のはらわた」、「ゲッタウェイ」といった数々の名作を生み出した巨匠サム・ペキンパー監督は、かつてとあるインタビューの際、「なぜあなたは暴力をテーマにした作品を撮り続けるのか?」というインタビュアーの質問に対し以下のように答えた。  「暴力は避けようとしても向こうの方からやって来る。その時、いわれなき理不尽な暴力に屈するか、それとも戦うか。あなたならどうする?」  人間性の本質は悪である。性善説など信じない。人間の心の本質は悪魔であり