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ショートエッセー「終生 "走り屋"」

久しぶりに夜の箱根を走った。

奥湯河原から大観山を経て芦ノ湖へと至る県道75号線、通称「椿ライン」。

今を遡る事40年前、毎晩のように走ったホームロードである。

攻めたわけではない。コーナーの一つ一つを、昔の思い出を慈しむように走った。

驚いたことにほぼ全てのコーナーを憶えていた。

しかもコーナリングラインがはっきり見えた。

「俺、まだいける。」

大歓山の駐車場にクルマを停め、満天の夜空を見上げ確信した。

走りへの熱き思い。荒ぶる走りへの渇望。

「いくつになっても変わらないな、お前も?」

「あ~、変わらないさ。変わってたまるもんか!」

自問自答している自分に思わず苦笑した。

職業を問われれば、胸を張ってこう答える。

「走り屋」

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