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モニタースピーカーによるモニタリングについて

 昨日、約2年振りにイヤーモニターではなく、モニタースピーカー、いわゆる転がしモニターでライブをした。
 そこで気付いたことが結構有益だと思ったのでここに書いておく。
 簡単に言うと、モニタースピーカーでやりにくいのは当たり前で、練習するときこそイヤーモニターを使うべきだということである。
 これだけでは意味が分からないと思うので、詳細に書いていく。


そもそもモニタリングとは何か

 モニタリングとは、演奏しやすくするために自分たちが鳴らしている音を聞くことである。
 目的は、演奏者が演奏をしやすくすることにある。
 要するに気持ち良く演奏できればそれで良い。
 ただ、ここに落とし穴があって、モニタリングに意識が向き過ぎて、その外にある演奏という大枠を忘れてしまうのだ。
 演奏の目的は聴衆に自分たちの音楽を届けることにあるはずだが、モニタリングを意識すればするほどそれは小さくなってしまう。
 モニタースピーカーだと特にそれが顕著で、外でどう聞こえるかより自分のやりやすい音を追求し過ぎて、ハウリングが起きたり、モニタースピーカーから出ている音が大きくなり過ぎ、外音に干渉して聴衆が聴く音のバランスが崩れてしまったりする。

諦め、妥協のモニタリング

 中音が大きくなり過ぎて外音に干渉したりするのは、イヤーモニターではまず起きないことである。
 モニタースピーカーでモニタリングするにあたって、モニタリングのやりやすさではイヤーモニターに勝ることはまずないと言える。
 だから、モニタースピーカーでのモニタリングはある意味で諦め、妥協が必要になってくる。
 しかし、何よりも演奏の気持ち良さを追求するというのなら外音に干渉しようが何をしようがそれで良い。
 別に批判するつもりもないし、そういう音楽があっても良いのだ。
 音楽は自由である。
 聴衆に向けて音楽をするのなら、気持ち良さは諦めて、外音のために多少のやりにくさは諦めるしかない。
 これはもう仕方のないことなのだ。
 イヤーモニターのやりやすさが100ならば、モニタースピーカーは1である。
 それくらいやりにくいのが普通で、快適さは諦めるしかない。

100を知れ

 ここで出てくるのが冒頭で記した、練習でこそイヤーモニターを使えという言葉である。
 モニタリングにおける一番快適な状態をまずは知った方が良い。
 そしてモニタースピーカーではその状態に絶対に勝てないということを身を持って知るべきだ。
 やりやすさを知り、やりにくさに慣れるということである。
 そして諦めと妥協を知る。
 何故これを推奨するかと言うと、特にボーカルは顕著なのだが、演奏者は自分の音が聞こえていないと、不安になってどんどん力み、音量だけが無駄に上がり、不自然な音になっていく。
 ボーカルがこれに陥ると本当に最悪で、音程よりも音量、響きよりも音量、ニュアンスよりも音量……と聞くに耐えない歌声になってしまう。
 だからこそ、まず一番自然な歌声を知る。
 それもバンド演奏という爆音の中で自然な歌声である。
 抜群の歌唱力や声量がない限り、これはモニタースピーカーではまずできない。
 なので、一旦イヤーモニターを使って自然な歌声の感覚を体験するのだ。
 そして、同じ感覚のままモニタースピーカーで歌ってみる。
 そこで気付くはずである。
 「え、ちっさ!?」
 そう、自然な歌声、音楽的な歌声の音量はそんなもんなのである。
 PAさんに感謝ですよ。
 そして、モニタースピーカーのやりにくさを理解し、快適なものでないと知る。
 そもそも、元々快適なものではないから快適にやろうとするのが間違いなのだ。
 自分の感覚では、モニタースピーカーで歌う場合、残響音の中にある倍音を拾って歌う、という途方もなくやりにくい感覚でやっている。
 これくらいの感覚でやれば、ハウリングも起きないし、外音に干渉することもない。
 より音楽的な音響でライブをすることができる。

具体的な練習方法

 能書きはもうええねんという方に具体的なやり方を書いておく。
 まず、ヘッドフォンアンプを買う、もしくは借りる。
 最近のスタジオなら多分貸し出しているはず。
 ヘッドフォン、またはイヤフォン、あとは標準プラグのケーブルを用意する。
 そして、スタジオのミキサーにあるAUXにケーブルを挿し、ヘッドフォンアンプと接続する。
 後はミキサーのAUXツマミで返したい音を好きなように返せば良い。
 それでイヤフォンなりヘッドフォンなりを装着して普段通り練習してみる。
 やりやすさに恐れ慄くことだろう……。
 そしてモニタースピーカーに戻してやりにくさに恐れ慄くことだろう……。
 だがそれで良い……。
 モニタースピーカーはやりにくいのが当たり前という認識になるだけで良い。
 これで無理にモニタリングの理想を追い求めようとはしなくなるはずだ。
 モニタリングの理想よりも外音の理想を追い求めよう。

最後に

 何度も書くが、モニタースピーカーはやりにくい。
 でも批判している訳ではない。
 圧倒的に便利だし使いやすい。
 しかし、モニタリングのしやすさはイヤーモニターと比較すると正直終わっている。
 だからこそ上手く使わないといかんのだ。
 中音が大きくなればなるほど外音は汚くなる。
 これに関してもまた書こうと思っている。
 中音は小さければ小さいほど良い……。

写真:https://www.instagram.com/yui.kita26/

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