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サラリーマン文化が育てた「だるま」

夜の街で「だるま」といえば、サントリー・オールドである。


一方、クルマで「だるま」といえば、トヨペットコロナである。

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サントリーとトヨタは、フルラインナップ商法で、サラリーマンのハートをつかんだ。

高度成長期のトリスバーで、サラリーマンにウィスキー文化を根付かせ、角瓶ハイボールで高級感を演出し、課長になったらオールド、部長になったらリザーブ、役員になったらローヤルなんていう、サラリーマンの心をくすぐるマーケティング戦略を取った。

トヨタも、若手のスターレットに始まり、主任のカローラ、係長のカリーナ、課長のコロナ、部長のマークⅡ、専務のクラウンに、社長のセンチュリーと、「車格」という言葉すら作った。

営業マンは、棚のボトルで人事を知る時代

高度成長期、夜討ち・朝駆けのセールスが盛んだったころ、狙った会社の社員の行きつけのバー(大企業だとカンパニーや担当役員単位毎に「たまり場」になるバーがあったらしい)で、トヨペットの営業マンは張り込み、角瓶に書かれた部署名と名前メモってはコロナセールスリストを。オールドに書かれた名前を眺めては、マークⅡセールスリストを綴ったらしい。

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東京トヨペットのライバルの東京日産や日産プリンス東京は、系列である芙蓉グループ企業の人事情報が回ってくると、職域営業がローレルやセドリックを売るだけで済むから、お気楽なものだったようだ。

サントリーのライバルのニッカは、本物志向で勝負する感じで、ヒエラルキーにはサントリーほどうるさくなく、クルマ界でいえば、スバルやマツダのような、欲しい人が買ってくれればという存在であった。

三菱グループの麒麟麦酒には、洋酒ブランドでキリン・シーグラムがあるが、それこそ自動車もやってます的な三菱自動車と相通じる殿様商法で、サントリーには敵わず、サラリーマン行きつけのバーで飲む洋酒といえばサントリーとなり、芙蓉グループを除く、多くのサラリーマンのマイカーと言えば、トヨタになった。

ドラマから見るトヨタのすごみ

昭和50年代に放映された2つの刑事ドラマでの、クルマの使われ方の差をみると、興味深いことがわかる。

トヨタのクルマが出てくる「太陽にほえろ」は、カローラに乗る若手からコロナやマークⅡに乗る中堅、藤堂係長のクラウン(係長でクラウンなのはちょっとおかしいが)に至るクルマに車格が存在しており、それぞれに良さを感じる構成になっていた。

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一方、装甲車まで出てくる「西部警察」は、日産のフラッグシップである、セドリックに、ガルウィングに改造されたフェアレディーZやスカイライン、そしてローレルにブルがどんどん出てくるが、そこにサニーやマーチは出てこない。

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のちに放映された、「あぶない刑事」も日産車が出てくるのだが、西部警察同様、アッパーミドル級のクルマしか出てこず、若手のタカとユージが、レパードを乗り回し、ベンガル演じる田中 文男は、グランツのグロリア。仲村トオル演じる新人級刑事の町田 透ちゃんは、初代セフィーロによく乗っていたような気がする。

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と、日産は生活感のない漫画チックなドラマを作り、トヨタは市井(しせい)に生きる人々の、心の隙間から犯罪が起きるような現実味のあるシリアス系ドラマを作った。

面白いのは、「太陽にほえろ」におんぼろの日産車(大体セドリック)が出てくると、大破するシーンが見られ、「西部警察」は、トヨタだけでなく、各社のクルマが破壊されていた。

業界最古参の意地だったのだろうか?とも思うが、わかりやすさでは、セドリックは弱いという、タクシードライバー評を見事に体現するトヨタの勝ちだったような気がする。

フルモノコックに四輪独立懸架のセドリックタクシーと、フレーム付きシャーシにリジットサスのクラウンタクシーでは、耐久性が全く違うのだが、それをドラマでさらにうまく描いていた。

宣伝広告費をトコトンとクルマを売ることに力を注ぐ商人のトヨタと、学生のリクルート的に企業イメージを高められればというぐらいの余裕をかましていた日産の公家文化が、まさにここに表れる。

だるまなトヨタは、転んでも起き上がるが、転んだら坂道を転げる日産は、なんとも情けない…

コロナ禍の2020年上半期の、世界自動車販売No.1は、トヨタになりそうならしい。

さすがは、コロナを作っていた会社である。おそらく、フォードのコルティナのパクりだったのではないかとは思うのだが…

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