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食べチョクに投資した地銀VCという存在

はじめまして。いよぎんキャピタルの徳永です。
弊社は、愛媛県松山市に本店のある伊予銀行のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)です。先日、食べチョクを運営するビビッドガーデン社のシリーズCに新規株主として参加させていただきました。今回、食べチョクさんのPR力に便乗して初めて投稿してみることにしました。

こちらの調達ですが、地銀系VC(を通じた地域金融機関)との連携強化という打出し方をしていただき、twitterなんかを見ても概ね好意的な評価が多かったように思います。戦略的に地銀系VCで調達というリリースはこれまでも時々ありまして、弊社が関わったものだとアンドパッドさんのシリーズBなどが挙げられます。

地銀VCの苦悩

さて、食べチョクさんの調達記事をNewspicksで見ていると、いつもシャープで的確なコメントをされるあるプロピッカーの方が以下のようにコメントされていました(ご本人と面識なく転載許可取ってないのでエッセンスだけ引用)。

ビビットガーデンさんは地域との繋がりを打ち出し、地銀VCは珍しく投資する理由を描きやすい先と判断した
地銀VCは、地方発のスタートアップが少なくイケてる地方スタートアップは一般的なVCから調達してしまい案件に恵まれない

これ、まったくそのとおりなんですよね。中の人かと思うくらい的確な分析だと思いました。

地銀系VCは、究極的には地元のスタートアップエコシステムの活性化、大学発ベンチャーの育成支援、地元企業のオープンイノベーション支援、などなど地域経済への直接間接の貢献を期待されている存在なのですが、地元の有望な投資先は数が限られ、一方で投資しないことにはただの管理報酬泥棒になるので、なんとか理由をつけて地元以外のスタートアップにも投資しているというのが実情、というところが多いのではないかと思います。

私も、理想としては地元スタートアップのファーストファイナンスにリード的な立場で入って伴走支援し成功させたい、と思っているのですが、そもそも地元には特にIT系のスタートアップはありませんし、数少ない研究開発型ベンチャーですとBNVさんやANRIさんがプレシードから強いので思うようには運びません。能力が伴っているかどうかはとりあえず置いておいてですが。

主な地銀系VC(西日本編)

そんな訳で、弊社も他社と同様に東京のスタートアップにも投資を行っています。今回、東京のスタートアップへの投資という視点で西日本の地銀系VCをまとめてみました。これから地銀系VCで調達を検討しているスタートアップの方は参考にしていただければと。ただし、分類は私の主観も入っておりますし、投資方針は変更されることもありますので参考程度でお願いします。また、全社網羅している訳ではありませんのでご了承ください。

「これちょっと違う」という方こっそり教えてください

改めてこうして見ると、みんな東京のスタートアップにも投資していますね。ごうぎんさんとちゅうぎんさんも実はやってますし。

せっかくなので、中でも特徴的な動きをされている地銀系VCを独断と偏見で2社紹介したいと思います。ちなみに、私はこの2社の動きはこっそりチェックしています。

FFGベンチャービジネスパートナーズ

ベンチャー特化で合計3桁億円の巨大ファンドを運用する地銀系最大のVC(一般的に地銀系のファンドは5~30億円程度)。ファンドサイズに加え人材への投資も惜しまず、設立直後から一貫して拡大路線。地元行政や銀行グループとの連携も良好な(に見える)地銀VCの雄

NOBUNAGAキャピタルビレッジ

地銀VCの抱える課題などを十分に吟味分析した上で満を持して設立された十六銀行系のVC。社名から銀行名をはずしていることや、いきなり01さんと組んで東京拠点を開設するなど独自の動き。設立準備に携わった方がとても優秀な方なんだろうという印象

この2社以外は弊社も含めて正直似たりよったりです(皆さんすみません)。というのもこの2社は比較的新しいVCで、弊社のようにそれなりに歴史のある会社は、これまでの変遷やしがらみもある中で思い切った新機軸を打ち出しにくいことも影響していると思います。

地銀VCの投資対象や投資目線

各社工夫されて東京のスタートアップへの投資を正当化する行う理由を考えられていると思うのですが、整理すると概ね以下のようになるのではないでしょうか。

  1. 地元に事業拠点を構えており雇用を生み出している

  2. 銀行の取引先に対するソリューションを提供するなどアライアンスの展望や提携仮説を描きやすい

  3. 銀行自体がユーザーとなっており、銀行の経営高度化やオープンイノベーションに貢献している

  4. 地域課題の解決につながる事業や地場産業との結びつきの強い事業を営んでいる

  5. 地元出身の起業家

  6. ファイナンシャルリターン(IPO期待や投資妙味)

1、5、6は特に説明不要と思います。2は、地銀の主要顧客層は地方の中小企業ですのでSMB向けのSaaS なんかがイメージしやすいかと。3は、例えばFintechとか銀行自体が使うデジタルソリューションなど。4は、一次産業とか観光とか地域交通とか人材とかでしょうか。メガバンクさんと違ってスタートアップが銀行本体の取引先にすぐにはなりにくいということもあり、どうしてもCVC目線が重視されがちな印象です。

ちなみに弊社の場合は、1~5の材料に6を加味して判断することが多く、6だけでは投資決定に至らない感じです。

なお、関東近郊の地銀系VC(ちばぎんCさん、横浜Cさん、静岡Cさん、山中さんなど)は東京は地元という扱いだと思いますので、まったく違う視点で投資検討されてらっしゃると思います。

儚き地銀VCという存在

国内VC生態系のすみっコにダンゴムシくらいの存在感で生きている地銀系VC、なんとかして各方面に存在感を示したいと日々努力はしておりまして、その一環が東京でのシンボリックな投資ラウンドに参加することでもあると思っています。ただ、親会社の偉い人に「地元の企業だけに投資しなさい」と言われたら、ある日突然東京のスタートアップには一切投資出来なくなるとても儚い存在でもあります。

また、目立つ案件に参加すればしたで、親会社の人に「楽しそうな仕事でいいな」とか「また○○大学出身者じゃん。情実投資か?」とか小嫌味を言われたりするので、それをにっこり受け流す胆力も必要だったりします(最近実際に言われました)。

まとまりない文章になりましたが、今後もヒエラルキーの末端で立場をわきまえてしたたかに渡っていく所存ですので、引続きどうぞご贔屓にお願いいたします。


いよぎんキャピタルでは、瀬戸内圏域(四国、岡山、広島、大分など)を地元と捉えて積極的に投資活動を行っております。また、東京、名古屋、大阪、神戸、福岡などでも前述の投資目線に合致するスタートアップからのご相談を随時受け付けております。ご興味持っていただいた方はお気軽にご相談ください。


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