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【一日一題 木曜更新】 音楽と、文章と

山陽新聞の「一日一題」が大好きな岡山在住の人間が、勝手に自分の「一日一題」を新聞と同様800字以内で書き、週に1度木曜日に更新します。ほらいつか岡山在住ライターとして一日一題から依頼が来るかもしれないし……し…?

 
 クラシックに全く嗜みのない私が声楽のリサイタルに行くなんて。

 私を会場へ向かわせたのは、山陽新聞のコラム「一日一題」でした。ピアニスト木口雄人さんの一日一題は、たった800字の中にユーモアと痛快さ、明るい自虐があり、週の始まり月曜日の心が軽くなる文章で。この文章が元々好きな作家やアーティストのものであれば、チケット購入は当然の流れ。憧れの推しのあの人に会いたいですもの。
 でも私は、これまで全く知らなかった音楽家の書く文章に心を動かされて、チケット3500円を買ってしまったのです。

 読者に行動を促す魅力的な文章。しかも、書き手である自分を全く知らないであろう人の心に入り込み、そして自分のファンにしてしまう。仕事で書き物をしている身としては、ちょっと口惜しいくらいの文才です。天はどうしてひとりの人間に二物三物を与えたのでしょうか。少し分けていただけませんか。
 
 面白い、楽しい、気づきが、学びが。それだけの感想で終わる文章と、そこを飛び越えて読んだ人の後々の行動まで促してしまう文章の間には、とても大きな違いがあります。

 それは書き手の顔が見えるかどうかです。個性的な文体や強い主張は、それはそれでとてもわかりやすいけれど、そうではなくても「顔」が見える時ってありますよね。最近の私にとって、木口雄人さんの文章がまさにそれでした。

 当日、わくわくしながら早い時間に会場に入り、最前列中央に着席。木口さんがコラムの中で「最前列で味わってみて」と書いていたからです。クラシックの声楽なんてどう楽しむのかわかりませんでしたが、プログラムを見て、今日ここへ来た理由がなんとなくわかった気がしました。

 木口さんとソプラノ歌手の森野美咲さんの「詩と即興」。クラシックにうとくても、新川和江さんと長田弘さんの詩には馴染みがあります。言葉を扱う日々を過ごす私にとって、こんなに嬉しいプログラムはありません。

 歌声とピアノに圧倒されて、思わずにじんだ涙。歌詞なんてまったくわからないのに、です。
 文章に導かれたこの嬉しい日。やっぱり書き続けましょう。なんでもいいから。

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