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レビュー:「ザ・スーパーガール」第13話「女ドラゴン 紅の必殺拳」①

7年もの間人気を保ち続けた「プレイガール」2部作の流れを受け継いだ東京12チャンネル発の"お色気アクションドラマ"「ザ・スーパーガール」。1クール目の節目を飾るこの回は、レギュラーメンバーの牧れいを単独主役として、『女必殺拳』(74年)に始まる志穂美悦子主演の東映カラテ映画シリーズを本格的にリメイクしようと試みた、「ザ・スーパーガール」全51話中でも飛び抜けて異色のエピソードです。

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実は前章でもご紹介したリーダー役の野際陽子と牧れいは、本作が初共演ではありません。76年に「コードナンバー108 7人のリブ」という「ザ・スーパーガール」と酷似したシチュエーションのドラマで、リーダーと部下という本作と同じ立場で顔を合わせているのです。

7人のリブ7

7人のリブ4


「コードナンバー108 7人のリブ」は、「月光仮面」「隠密剣士」「光速エスパー」「シルバー仮面」「アイアンキング」「レッドバロン」など、昭和30~40年代にユニークな特撮ドラマを多数制作した宣広社の作品です。タイトル通り7人の女性スパイが国際的に活躍するスケールの大きい内容で、「プレイガール」の要素もあったとはお思いますが、お色気要素を控えめにして海外ロケをメインにした女性版「キイハンター」を作るつもりだったのでしょう。しかし諸事情により1クール13回のみで打ち切られてしまいました。では事情はともかく面白かったのかというと、コレが全く凡庸な出来で、野際陽子以下牧れいらメインキャストには全く精彩がありませんでした。呼び物の海外ロケはシンガポールとタイのみで、後者ではレアというより誰得といえるジュディ・オングとヤン・スエ(楊斯)の対決が実現した位でした。ヤン・スエはこの前に宣弘社制作の「闘え! ドラゴン」(倉田保昭主演、74年)に出演しており、その縁でのゲスト出演だったようです。ちなみに彼の代表作でもある「Gメン'75」の「香港カラテシリーズ」への参加はこの後になります。余談ついでに言えば、レギュラーには志穂美悦子の妹分的存在として推されていたハーフタレントのミッチー・ラブがいたほか、やはりレギュラーだった毬杏奴は、77年の東映特撮ドラマ「快傑ズバット」第20話「女ドラゴン 涙の誓い」でタイトルロールの女ドラゴン役でゲスト出演していました。

話が大きく脱線しましたが、結論から申しますと、「女ドラゴン 紅の必殺拳」のアクション自体は当時の特撮ドラマ等でも散見されたJAC(ジャパン・アクション・クラブ)流立回りの焼直しで、新味は感じられません。牧れい本人もアクションに意欲的だったのは確かでしょうが、志穂美悦子のように本格的な格闘技やスタントの訓練を受けたワケではないので、正直鈍重の域を出ませんし、ダブルもそれなりに使っています。
にもかかわらず、この回がいかに志穂美悦子主演作の再現に本気だったかをビンビン感じさせるのは、悪役の造型やハードで陰惨なドラマ展開と言ったシチュエーション的な部分なんですね。
牧れいに襲い掛かる偽札組織の刺客たちなんですが、役名は勿論のことそれそれ身に付けた独自の武術がテロップで表示されるんですね。コレはウレシい趣向です。正直そこまでやんなくても…とも思っちゃいましたが(笑)

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無題

実際に極真空手の有段者でもあった強面の石橋雅史(中央)は、何を演じていてもすぐわかっちゃうのですが(笑)、注目は3番目に登場する盲目の剣客、闇流忍剣・梶一鬼を演じた原田力という俳優さんです。元々今回の元ネタでもある東映カラテ映画10本前後に出演していたほか、居合など剣術の素養も実際あったようで、多数の時代劇ドラマに主として悪役で出演していました。そして東映カラテ映画のモチーフはブルース・リー(李小龍)に端を発する香港のカンフー映画ですが、このドラマが放送された直前、原田力は香港へ渡り1本のカンフー映画に出演していました。当時香港最大の映画会社ショウ・ブラザースが制作した『少林寺vs.忍者』(78年)です。

倉田保昭始め日本人俳優が大挙出演するこの映画で、原田力はやはり剣術の使い手として出演しています。しかも中国武術VS日本武道対抗戦の契機を作るというなかなか重要な役どころです。
上記のオリジナル予告編を見て頂くと原田力の英語表記が"YAMAMOTO"となっているのに気付かれるかと思います。どうやら彼の本名が山本らしいのですが、ここから彼について探っていくと驚くべき事実にぶち当たります。下記に挙げた参照ブログの一節に、力道山が創始した日本プロレスの合宿所に山本なる人物がおり、彼はその後原田力という名で俳優業へ進んだという記述があるのです。実際にプロレスデビューしたかは定かでないのですが、若き日のジャイアント馬場やアントニオ猪木と同じ釜の飯を食う仲間だったというのは、原田力の分厚い上半身を見れば納得も行くというものです。
ドラマとは言え、牧れいは物凄い猛者たちを相手にしてたんですね…。
(文中の俳優名は全て敬称略)

参照:
ブログ「那嵯涼介の“This is Catch-as-Catch-Can”」2011年3月27日分
「日本プロレス合宿所」
https://ameblo.jp/ryosukenasa/entry-10843400312.html

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