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メディスン観劇から約1週間が経って。



◆まだ答えが見つかったわけではない。

ジョンは重度の精神疾患を持った患者

このメディスンの中で演じられていることが、
ジョンの空想なのかジョンの本当の人生なのか、そこは私の中でも自信を持って一つの答えには辿り着けていない。

メアリー、メアリー2は同じ名前だという意味を考えると、今は同一人物なのかと思う。
メアリー2は辛い人生をジョンに思い出させたり、人と違うことを認めさせる。
メアリーはジョンの素敵なところや自分を認めてほしいと思うことは悪くないんだよ、と優しく寄り添う。

どちらも今の(年老いた)ジョンにおいては必要な人、役割、という位置付けなのかなと。

◆medicineの意味

えりけんさんのnoteを読ませてもらった後は medicine の意味も考えた。
戯曲「メディスン」考|えりけん

4回の観劇を終えた後は、最後のメアリーの優しさがジョンのメディスンであればいいと思っていた。

いろいろ思考をぐるぐるしながら、たどり着いたのは、この舞台上で起こっている一連の流れがジョンの人生において必要な作業でメディスンなのかと。

愛されなかった人生。
辛い出来事にさらに辛い出来事が重なっていって、壊れてしまった。
自分を他の人と違うと思うことでしか、保てなくってしまった。また、そうさせる周囲の人たち。

きっと、ひとときの穏やかさを持っていることや、アイデンティティを尊重してあげたいという思いがあったとしても、総合的な判断で、ジョンはあの場所にずっといる。
何かのきっかけで爆発し、混乱するジョンが外の世界で出てきてしまった時のことを考えて。

小さな箱のような空間の中で、留まっておく理由、それを確認する作業を繰り返す人生だったのかな。

ジョンだけじゃなく、他の患者さんにも同じようなことが行われているのかもしれない。

◆大切にしたいあの詩

辛い人生の中でもジョンには夢があった。

作家になりたい夢。
愛を知ったかもしれない場面で語っていた、愛する人と故郷に帰り、それを両親に見せつけるという夢。

老人になったジョンの
二つの夢の意味をなすのがこの詩なのかな。

And heavy rounded in that hurt In darkness there a million times. Behind the cloud the sun it came And saw his shape – And how it shined. And in the sun the past it fades And gone the silence sorrow made The boy will live and days will ease And love will walk – Upon the breeze.
〜戯曲 メディスンより〜

完全なる私の意訳です。(※劇中でジョンが語ることばとも違います。)
『何回辛い思いをしても毎日はやってくる。でも誰かが見ていてくれる。思い出が新鮮であった時もあったけれど、時間と共に色褪せることで悲しみは消えていき、その中でまた生きていく。見守られていることで日々は楽になるし、愛を感じることもできる。』


◆実体験と重ね合わせたこと。


1週間経ってもずーっとメディスンのことを考えている。たまらず戯曲を電子版で購入してしまった。

13歳のジョンがやっとできたと思った友達。フィリップ。
舞台上でメアリーは口パクだが、流れてくるフィリップに独特のつまりがある喋り方なのは気になっていた。
戯曲を読んでそれがト書きで、『吃音』と表現されていたことで考えに及んだこと。

ここでも自分の体験に重なった。

子供と同級のママ友が自分の子供の吃音についてひどく悩んでいた。
私にはそんなに気にならないことに思えていたけれど、『他の子とは違う』ことに、気を揉んでいて、大きくなってそれに周りが気づいたらいじめられるんじゃないか、と矯正できる術はないかとずっと考えている様子だった。

ジョンはフィリップに出会った時、自分以外で『他の人とは違う』人に初めて出会った、とも思った。
自分と似ている人に出会えて嬉しかった様子だった。でもその友人にも裏切られ、つらい思いすることになるのだけれど。

前のnoteでも書いたが、私の祖母が認知症の症状が出始めた頃、被害妄想が強烈にひどくなり、ありもしないことを頭の中で作り出してしまっていた。そしてそれを口に出して語る。
とても仲の良かったお隣さんが自分の悪口を言っている。そんなことはないと繰り返し説明しても分かってくれない。そうこうしているうちに、ある時、祖母が隣人から家に火をつけられそうだと警察に通報するという事件が起こってしまった。
介護をしていた母がこのことで半狂乱になってしまい、結果この後、祖母は認知症患者専門の施設に入所することになった。

わたし自身、小さな頃からよく知る祖母とは全く違う人になってしまったようで、
また、自分のことを忘れてしまった祖母に会うのが悲しくて、怖くて、施設にはなかなか足が伸ばせなかった。

でも、
忘れられてしまっても、母はずっと、祖母のそばにいた。亡くなるまで。


◆メディスンの意義

-この劇を通して編まれている、と僕が願うのはー理解すること、聞くことへの喚起、そしてそれを持ってお互いを、特に弱い人たちを思いやり考える私たちの責任だ-
〜メディスン パンフレットより抜粋。初演の公演プログラムより転載〜

いろんな人の感想を読んだことでも考えたし、わたし自身も自分の実体験をこの舞台メディスンに重ねて考える部分が多かった。

エンダ・ウォルシュさんは、それを大いに目的にしていたのかな。

肉親であっても受け入れること、認めることが辛いことがある。
精神疾患って、遠い出来事のような気がしていたけど、少なくとも身近なことに重ねて考えるきっかけになったことは、この舞台を観劇した大きな収穫だ。

あと数回観劇の機会があるので、初見と違った見方ができるのを楽しみにしている。

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