『携帯電話は忘れない』ショートショート
はじめて彼女が出来た。
モテなかったわけじゃない。モテなかったわけじゃないけど今までずっと彼女はいなかった。
「それをモテなかったっていうんじゃない?」と彼女は笑いながら言ってくる。たしかにそうかもしれない。そしてそれでいい。彼女の少したれた眉を見るたびに思う。彼女が最初の彼女で良かった。
僕たちは少し離れたところに住んでいた。車で30分。電車は2時間に1本。
免許が取れない僕たちの年齢からするとそれは途方もなく遠かった。
だけど、ぼくたちには『携帯電話』がある。
毎