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90秒の物語。

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90秒で読んで、一日浸れる物語書いてます。 ただし『やさしい復讐』は超長編。 note創作大賞2022の中間審査に通りました。 https://note.com/kun1ak… もっと読む
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2022年4月の記事一覧

小説 | 吾輩は猫である。彼女曰く

吾輩は猫である。彼女曰く実家のネコに似ているらしい。 「髪の毛の感じがそっくりです……」だそうだ。 サークルの合宿で仲良くなった僕たちは大学生らしいことを沢山した。BBQ、キャンプ、海水浴、、、キスだってした。 おぼこかった彼女がどんどん綺麗になっていくのは誇らしかった。 ある日突然呼び出された。 「先輩、話があります」 珍しく改まっている様子の彼女。僕の軽口にも曖昧にうなずくだけ。 「どうしたの?」 「……好きな人ができました」 僕たちの関係に、名前はまだない。

『携帯電話は忘れない』ショートショート

はじめて彼女が出来た。 モテなかったわけじゃない。モテなかったわけじゃないけど今までずっと彼女はいなかった。 「それをモテなかったっていうんじゃない?」と彼女は笑いながら言ってくる。たしかにそうかもしれない。そしてそれでいい。彼女の少したれた眉を見るたびに思う。彼女が最初の彼女で良かった。 僕たちは少し離れたところに住んでいた。車で30分。電車は2時間に1本。 免許が取れない僕たちの年齢からするとそれは途方もなく遠かった。 だけど、ぼくたちには『携帯電話』がある。 毎