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90秒の物語。

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90秒で読んで、一日浸れる物語書いてます。 ただし『やさしい復讐』は超長編。 note創作大賞2022の中間審査に通りました。 https://note.com/kun1ak… もっと読む
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2021年8月の記事一覧

小説 | スマホをなくした

スマホがない! あれ、昨日ヒロキとご飯を食べて、、それからどうしたっけ? 記憶が曖昧だ。飲みすぎたかな。 ただまあ今日は休みだ、仕事もない。早起きなんてしなくてもいい。 二度寝だ二度寝♫ あとでスマホについてはヒロキに聞いてみよう。 夢を見た。 ヒロキと一緒に白い家に住んでる。カーテンは青だ。大きい犬もいる。 ヒロキと私にちょっとずつ似ている子供が庭を駆け回っている。 幸せな夢だ。 起きたら少し頬が濡れていた。 結婚したい、やっぱり私はそう思ってるんだろうなー。 私達

小説 | 世界一生産性の高いロボット

「ロボットなんて役に立たないよね」 世間はそんな空気だった。 たしかに便利になったところもある。 だけど、まぁすべてのことを人間ができなくはない。ちょっとだけ生産性が上がったに過ぎない。そんなもんか、頑張った頑張った。 それを聞いた科学者たちは本気を出した。 僕たちの目指した未来はこんなもんじゃない。 数々の発明、実践、世界中の叡智が集まり、日夜不断の努力を続けた。 ある時完成した。 もうこれ以上「生産性」を上げることができない最高のロボット。 科学者たちは顔を見合

小説 | 嫌だなぁと思うと能力が増える

僕は14歳頃から「嫌だなぁと思うと能力が増える」ようになった。 たとえば、外で急に雨が降ってずぶ濡れになった時、本がめちゃくちゃ速く読めるような「速読スキル」が身についた。 他にも鳩のフンが頭の上に落ちてきた時、二桁の掛け算ができる「暗算スキル」が身についた。 おもしろくなって、色々試した所 「嫌だなぁ」って気持ちの大きさが、身につくスキルの便利さに影響を与えているみたい。 だから「嫌だなぁ」って思うことが起こりそうなことを色々してみた。 不良がたくさんいるゲームセン

小説 | 「ふつう」の男とホームレス

ツイてない。 本当にツイてない。 一生懸命頑張って入った会社は、部署ごとなくなりリストラに。 高校時代から付き合ってた彼女は、最近もっとステキな相手に出会ったと振られた。 ああ、もう元彼女か...。 東京の家賃高い。 もうお金払えないぞ。半年くらい払えてない。 家にいると管理会社から電話がかかってきて嫌な気持ちになる。 だから最近はもっぱらこの公園で過ごす。 100円コーヒーを買うこともできないけど、きれいな水は飲める。ちょっと暑いけど木陰ならなんとかなる。 家に帰る

小説 | 友達の彼女の誕生日

今日は友達の彼女の誕生日。 でも今日、一人らしい。 「お祝いしよっか?」というと「うん!」と嬉しそう。 その子の家の近くにオシャレなイタリアンがある。そこを予約し、誕生日用にお花とケーキを用意してもらった。最近はネットで完結する。便利なもんだ。 二人で会うのは初めてかもしれない。 僕たちは「3人」で仲がいい。 なんかちょっと緊張してきた。 待ち合わせに現れた彼女。 「お祝いしてもらおうじゃない」っていたずらっぽく笑う彼女は、僕の知ってる「いつもの」彼女だった。ほっと胸を

小説 | あるとき世界の仕組みがわかった

あるとき世界の仕組みがわかった。 「ここで手を動かせば、南米で地震が起きるのか...」 バタフライエフェクト? わかんない。 世界は全部つながってる。当たり前といえば当たり前。 それがあるときに腑に落ちた。それだけの話。 好きな人ができた。 ショートカットの似合う女の子。 この子の笑顔がみえるなら、このわかりきった世界も悪くない。 そんなふうに思える。 その子が死ぬのが見えた。 2年後。 死なせない方法もあるみたいだけど、それをすると僕が死ぬらしい。 なんという因果

小説 | 僕はアリ。キリギリスの友だちがいる。

夏。暑い。でも働かないと。 僕たちは寒さにめっきり弱い。冬になると新しい食料を手に入れることもできない。未来のために今頑張る。 「ラララ〜♪♪」 どこからともなく素敵な音色と歌声が。ヴァイオリンか? 目を凝らすと、遠くにキリギリスが音を奏でていた。いいな、特技があって。好きなことに興じるってどんな気持ちなんだろう? 冬が来た。 よし、食料は十分だ。これでこの冬を超えられる。 巣穴でじっと耐えて、春を待とう。 コンコンッ 誰だろう?熱が逃げるから開けたくない。 コンコ

小説 | 僕の名前は「桃太郎」

僕の名前は桃太郎。 冗談だと思うかもしれないけど、桃から生まれたから桃太郎。 じいちゃんとばあちゃんがそう言ってた。 じいちゃんが芝刈りに行って、ばあちゃんが川で洗濯してるときに、ドンブラコドンブラコって流れてきたらしい。驚きだよね。 ありえる?そんなこと。 ただ、じいちゃんばあちゃん好きだし、二人がそういうならそうなんだろう。それでいい気がしてる。だから、桃太郎って名前も気に入ってる。 ある時、鬼の噂を聞いた。 悪いことをしているらしい。どう悪いことをしているかはいま

小説 | 何でも作れる3Dプリンター

便利な世の中になった。 3Dプリンターだけあればなんでも作ることができる。 一時期拳銃が作れるって盛り上がったけど、3Dプリンターの真髄はそんなもんじゃなかった。 たとえば、データをきちんと入れることで「牛肉(と同じもの)」を創ることができる。もっというと、口に入れたときに食感、味、匂い、そういうものが「ステーキ」と全く同じものが作れる。 大きいものであれば、家も作ることが可能だ。データを入れてフル稼働したら2日ほどで、完成品の家がそこに生まれる。 まさになんでも作れる

小説 | 人類を滅ぼす方法思いついたかもしれない

「人類を滅ぼす方法思いついたかもしれない」 私の幼馴染はいつも突飛なことを言う。 そんなところも好きだからついついかまってしまう。 「どうやるの?」 「んー内緒。あんまりいいことじゃないからね」 「教えてよ。誰にも言わないから」 「ダメ。ほら、授業始まるよ」 「わかった核爆弾だ!」 「ちがいますー。滅ぼせないだろうし」 「あ、新しい病気が全世界に広まるとか?」 「ちがうって。アヤちゃんには思いつかないと思うよ?」 第三次世界大戦! 超能力! 隕石! 思い