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注文住宅の資金計画⑥建築中のトラブル「土地所有者のあれこれ」

私が住宅メーカーの資金管理部門や、住宅ローン会社で出会った注文住宅の資金計画トラブルについて、その内容と対策をまとめています。
今回は土地の所有者に関するトラブルです。

住宅ローン借入には、「土地」「建物」への抵当権設定が必要

当たり前のことですが、住宅ローンを借りる場合、建築する建物とその土地の両方に抵当権を設定することが必要となります。土地の所有者は、住宅ローンの申込時に「住宅建築に関する地主の承諾書」という書類にてその旨を承諾する必要がありますし、住宅ローンの金消契約時には「抵当権設定者」として銀行へ来店し署名・捺印をすることとなります。

住宅ローンの返済が滞り、抵当権が実行されるとその土地(と建物)は金融機関が最終的には競売等で現金化し、住宅ローンの返済に充当します。

トラブル①相続がされていない土地

いざ住宅を建築しようと、土地の登記簿謄本を見ると名義がなくなった祖父母や曽祖父母などのままであるということはよくあります。その場合は、基本的に建築確認申請までには相続をし、正しい名義に登記をしておく必要があります。相続自体が進んでいないと、相続人間で話がすぐにまとまらない可能性があるため、できる限り早く対応すべきです。

私が知っているケースですと、相続がされないまま建物が完成し、いざ相続をしようとしたら施主が把握していない相続人がいることが発覚したというものがあります。(少なからずあります…)結局相続に時間がかかり、建物のお引渡しもローン実行もかなり遅れてしまいました。

トラブル②土地所有者が高齢で意思確認がとれない

土地所有者が高齢のケースは非常に多いです。中には意思確認が取れずに、成年後見人をたてなければならないこともあります。裁判所での手続きになるため時間もかかりますし、状況によっては利益相反となって抵当権設定が認められない可能性もあります。

また、注文住宅の工期は長く、打ち合わせからお引渡しまで半年から1年を要します。土地所有者の状況が変わることも考えられるので、事前に対応策(生前贈与など)を家族で話し合ってもらう必要があります。

トラブル③抵当権を設定するなんて聞いていない

最後は土地所有者が「抵当権を設定するなんて聞いていない」というケースです。

土地所有者の親族が「建築は承諾したけど抵当権設定は聞いていない」という場合は、まだ親族ですので、話し合いの結果承諾してもらえることが多いと思います。

問題になるのは、接道要件を満たすために建築地に入っている道路部分の所有者に主張されるケースです。

住宅ローンの性質上、建築地となっている土地にはすべて抵当権を設定します。

建築確認の申請手続きを行うのは、基本的に設計担当で、設計担当は住宅ローンの担保のことよりも、「建築確認申請が通るか」を意識して業務を行っています。営業担当と設計担当の連携がうまくいっていないと、建築地の所有者が置き去りになって手続きが進んでしまうケースが実際にあるのです。要は建築地に他人の土地が入ってしまっていることになります。これは本当に厄介ですが、よく出くわすのです。

土地の所有者の承諾があることを事前に確認

対策としては、やはり事前に(打ち合わせを始める前に)土地の所有者の承諾があることを確認することです。住宅メーカーによっては独自に「地主の承諾書」の提出をお願いしていると思います。

何か懸念点がある場合は、司法書士の先生に協力してもらいながら問題の早期解決に努めるべきです。

そして、何よりも「建築確認上、建築地となる土地については、すべてに抵当権設定が必要」であることを、職種に関わらず住宅メーカーの社員がきちんと認識することから始まるのだと思います。

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