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与太者雑記

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2021年4月の記事一覧

ピストル強盗清水定吉 1

その名前を初めて聞いたのは、故立川談志師匠の高座だった。たぶんラジオの放送だったと思うが、調べたらCDになっている。1982年6月18日国立演芸場「落語家生活30周年記念 立川談志ひとり会より 源平盛衰記」がそれである。談志はマクラで、学校で教えるのはありきたりの人物ばかりでもっと他に教えなくちゃいけない奴がいるだろう、といった論調で「国定忠治とか五寸釘の寅吉とかピストル強盗清水定吉とかね」と言っ

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ピストル強盗清水定吉 2

「(前略)この樋口さんの近所にピストル強盗清水定吉の住んでることを覚えている。明治時代もあらゆる時代のように何人かの犯罪的天才を造り出した。ピストル強盗も稲妻強盗や五寸釘の寅吉と一緒にこう云う天才的たちのひとりであったろう。僕は彼の按摩になって警察の目を眩ませていたり、彼の家の壁をがんどう返しにして出没を自在にしていたことにロマン趣味を感じずにはいられない。(後略)」

芥川龍之介晩年の随筆「本所

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ピストル強盗清水定吉 3



写真はイメージです。

前回は清水定吉をガキの頃から手癖の悪い与太者と書いたが、森本哲郎「日本快盗伝」横田順彌「明治バンカラ快人伝」その他の資料から清水定吉の実際の有り様をお伝えしたいと思う。

清水定吉は、元旧幕旗本松平何某の家臣で、自身も旗本のれっきとした武士であったという。名の定吉も本来は「サダヨシ」と読む。剣はもとより槍術柔術などにも精通しており。当然上野戦争に参加して官軍と戦っている

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