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卒業式ではマスク不要!みんなはどうする?

3月と言えば、別れのシーズン。多くの学校で卒業式が実施されます。
これに先立ち、令和5年2月10日、文部科学省は卒業式ではマスクの着用は不要との見解を示しました。これは、3月13日からマスクの着脱は個人の判断とし、学校では4月1日からマスク不要との政府方針を踏まえたものです。もちろん強制ではなく、個人の判断でマスクをしても構わないとされています。
 ここ数年、多くの場面でマスク生活を余儀なくされてきた児童たち。卒業式では、みんなの笑顔が見られると喜んでいる人もいるでしょう。

 一方で、今さらマスクを外すのが恥ずかしいという人や、やはり感染対策のことを考えたら、素直に受け入れていいものか悩んでいる人もいるはずです。そこで今回は、改めてマスクについて考えてみたいと思います。
(本稿は『みんなはどう思う?感染症』の一部を編集したものです)

マスクをするのは自分とまわりの人を守るため


 感染予防の必需品となったマスクですが、そもそも何のためにマスクをする必要があったのでしょうか。

 一つ目は、まわりの人に感染させないためです。

 昔は手術する医師であっても、手を消毒して、マスクをするのは当たり前ではありませんでした。そのため、医師の手や飛沫から細菌やウイルスなどの病原体が患者の傷口に入り込み、化膿して亡くなる人もいました。マスクをすることで、知らないうちに自分が病原体をうつすのを防ふせぐことができます。

 二つ目は、自分が感染しないようにするため。

 口や鼻の中や目はいつも湿っています。それは粘膜でバイキンの侵入を防ぐため。乾燥するとカサカサのすき間から病原体が入りやすくなります。マスクの着用は、自分の息で湿っぽくなるので、乾燥対策になるのです。

 また、マスクで口と鼻を覆うことで、病原体が付いた物を触った手で自分の鼻や口を触って感染することを防げます。さらには、病原体を含んだくしゃみやせきの飛沫を吸い込むのを防ぎます。花粉やほこり対策にも役立ちます。



ウイルスは不織布マスクを通り抜ける


 とはいえ、マスクは完璧ではありません。
 洗って繰り返し使える布(ガーゼ)やウレタンなどの他、使い捨ての不織布マスクなど最近のマスクは素材がいろいろありますが、不織布のフィルターは布の編み目よりも「目」が細かく、物体は通り抜けにくいです。でも、ウイルスそのものは非常に小さいので、不織布でも通り抜けてしまいます。さらに、顔とのすき間から横漏れしやすかったりします。

 一方、お医者さんなどの医療従事者が使うN95マスクはウイルスを通さないくらい編み目が細かくて防御力が高まりますが、息がしづらくなります。

 では、N95マスクでないと意味がないのでしょうか。そんなことはありません。不織布マスクなどでも病原体を含んだ水滴、つまり「飛沫」を防げるからです。ただし、ウイルスの小さなつぶ(飛沫核)が空気中に漂うような「空気感染」の場合は普通のマスクでは対処できないことは覚えておきましょう。

マスク以上に大事な「相手への配慮」


 国の方針を受け、自分の体調、外出する場所、マスクの効果などを勘案して、自分でマスクの着脱を判断することが求められます。きっとマスクを外す人が多くなるでしょう。
 一方で、マスクを外して出歩くことが恥ずかしいと思う人や、花粉症などの何らかの理由でマスクが必要な人もいます。また、一部のお店などでは引き続きマスクの着用を求められるかもしれません。

 その時、みなさんはどうするでしょうか。

 一時期、マスクをしていない人を「悪」と決めつけて攻撃する、いわゆる「マスク警察」が出現し、問題となりました。もし今回、マスクを外すことを強要する「逆マスク警察」が出現したら、私たちは同じ過ちをくり返すことになります。
 大切なのは相手への配慮。卒業式でも、写真撮影の時だけマスクを外す人、終始着用する人・しない人、きっと混在するでしょう。個人の判断にゆだねられるということは、相手の事情をくみ取る力も、今まで以上に必要になってきます。どうかハレの日に、マスクをめぐって険悪な思いをする人がいないようにと願うばかりです。マスクをしていても、していなくても、みなさんが笑顔で素晴らしい門出を迎えられますように。

堀川晃菜(ほりかわ あきな)
科学コミュニケーター、サイエンスライター。新潟県出身。東京工業大学大学院生命理工学研究科を修士修了。農薬・種苗メーカー、日本科学未来館勤務後、Web メディアの編集者を経て独立。著書に『化学技術者・研究者になるには』(ぺりかん社)他。監修に『どうなってるの? ウイルスと細菌』(ひさかたチャイルド)。

堀川さんの著書『みんなはどう思う?感染症 大人も悩む「正解のない問題」に挑戦』は大人でも答えをだすことが難しい問題に対して、子どもたちが知識を得ながら、自ら考える姿勢を引き出す本になっています。ぜひこの春休み、親子で一緒にこの本を読みながら、考えたり、話し合ったりしてみてはいかがでしょうか。詳しくはこちら(KUMON SHOP)

(タイトル・本文写真:ピクスタ)