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ホームラン食堂さんの「料理をしない料理教室」

2020年7月11日(土)
「ホームラン食堂」店主、 芥川可奈さんをお招きして、「料理をしない料理教室」を開きました。

「ホームラン食堂」とは、広島市中区十日市、隠れ家みたいなビルの二階にある居心地のいいお店です。おかゆモーニングとおやつのお店。
可奈さんおひとりでされています。

ホームラン

(写真はホームラン食堂さんインスタより。ある日のおかゆモーニングです)

今回は、
料理教室というよりも、料理のお話を聞く会。

以前、志和の無農薬有機栽培をされている「どじょうやさん」の畑に一緒に伺った時、冬の野菜たちの力強さに圧倒されました。
その帰りの車中、この野菜たちをどのように料理して食べるか、という話になりました。

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あの大根はこうやったらおいしい、あれと一緒に塩水で煮るんですよ、こうしてもいいですよね、などと、次々「ああ!うまそー!」という料理の仕方を教えてくれました。
帰宅して、耳で聞いたレシピを再現してみた。
出来上がりは、それが正解かわからないけど、たいへんおいしかった。
たぶん、可奈さんの作ったものとはちがうであろう。
だけどきっと可奈さんはこう言うだろう
「失敗なんかないんですよ、おいしかったらいいんですよ」

あの車中で聞いた「料理をしない料理の話」はほんとうによかった。
頭の中でイメージがふくらんで、味が思い浮かんで、よだれがでて、すぐやってみたいって思えた。それを皆さんと共有したいと考えていました。

昨今の状況を考え密を避けて、6名さまの会となりました。
(先着順で受け付けました。すごいご応募いただいたのにごめんなさい)
たった6名さましか参加できないのはあまりに残念なのですが、動画配信のようなやりかたは私たちには合わないような気がしました。当日の様子をテキストに起こしましたので、ぜひご覧ください。

・日時:2020年7月11日(土) 18:30~ 21:00
・場所:お茶の時間雲間 広島市中区白島北町16-22 1F
・参加費:4,000円税込 軽食・お茶つき

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◎時間となり、参加者の方々集まる

まずは水出し台湾茶(阿里山金萱烏龍茶)で暑気払い。
ホームラン食堂さんお手製「にゅうめんとおいなりさん」が振る舞われる。

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全員 「合掌!いーたーだーきーます!」

ホームラン食堂 芥川可奈さん(以下 可奈さん)
ボノベイクのルリ子さんからいただいた『アジアン七味』、けっこう辛いんですよ、ちょっとだけ入れてもらうといいかも。一気にアジアの味になります。

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参加者 これすごくおいしい・・・入れたらぜんぜん香りが違う。

可奈さん ね、ぜんぜん変わりますよね。今日ちょっと東南アジアっぽい気候ですしね。ちょうどいい感じ。

可奈さん 暑い時期に冷たいそうめん食べがちだと思うんですけど、わたしはにゅうめんがいいなと思っていて、こういう変わり種もいいかなと。いなり寿司もふつう寿司揚げの中に入ってるんですけど、今日は好きなお豆腐屋さんのお揚げでくるっと巻いてる感じで。

参加者 お揚げ、甘ったるい味付けじゃないですね。

可奈さん そうですね、いりこ出汁とお醤油で炊いてます。

雲間寺本 このにゅうめんのお出汁はなんですか?

可奈さん 昆布と、いりこを・・・どのくらいだろう・・・2時間くらい、沸騰させない感じで火にかけてて、そこに、鶏を茹でる時に昆布を一枚ひいて茹でた汁をあわせて、一回沸かしてアクを綺麗にとるとこういう澄んだお出汁になります。

寺本 鶏はどこ肉?

可奈さん 胸肉です。

参加者 胸肉なのにしっとりした感じ・・・

可奈さん 茹でた後、そのまま出汁の中に浸けとくんです。茹でる時も、タンパク質って80℃くらいで変性するんですね、ですから沸かさないくらいでのんびり火を入れて・・・・

寺本 タンパク質変性!化学の話出てきました!

可奈さん やわらかく茹でる方法はいろいろあって、最初鶏肉にお砂糖を擦り込んでおくと保湿作用でしっとりするっていう方法もあるんですけど、どうしても甘さが出るので好きじゃなくて、茹でる温度で調節するようにしてます。

寺本 これレモンを絞ると急にフォーっぽくなるのね。ミョウガがいいなぁ。

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可奈さん 薬味がいいですよね。今日はセリと、大葉と、ミョウガと、生姜、あとネギです。

寺本 さりげなくナスが乗ってますね。

可奈さん そうなんです。焼きナスを乗せてます。ヘタ付きでナスを焼くと水分が逃げないので丸一本で焼いて、熱いうちに皮をむいて、今日はそのまま出汁に入れました。そしたらナスからもいいスープが出てきておいしいんです。野菜からもいい出汁が出ますね。特に夏の野菜は水分が多いので、焼いたらジューシーでおいしいですね。

寺本 このおいなりさんの中身はなんですか?

可奈さん 三分づきの玄米と雑穀が入ってます。去年塩漬けにして常温保存していたシソの穂と、干し椎茸の佃煮を刻んで入れて。だからお酢はちょっとだけしか入ってないんです。

参加者 シソの穂の塩漬けってどうやって作るんですか?

可奈さん シソの穂を軸からぽろぽろっと外して、さっと洗って、水分をペーパーでとってザルに1時間くらい広げて乾かして、重さに対して10%くらいの塩をして瓶に入れます。塩だけで、茹でたりもしないです。生のまま。最初は瓶を振ってまんべんなく塩が行き渡るようにして、落ち着いたらそのまま保存です。シソ風味のお塩として使えるので、冷奴食べたい時にちょっと乗せるとか、今日のにゅうめんに入れてもおいしいと思います。

参加者 使う時に塩漬けの塩は洗わないんですか?

可奈さん そうですね、長期保存すれば塩味は丸くなっていくんですよ。漬けてすぐ使うときは、しょっぱかったら塩抜いてもいいですし、それこそ食べてみて、ああ今日はおにぎりこの塩でいっちゃおうと思えば塩抜かなくてもいいと思うし。あんまり決まりはないので・・・

可奈さん お客さんと一緒にこうやって自分の料理食べることないんでちょっと新鮮。いつもお店では見守るかんじなので・・・

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寺本 やっぱり食べた人の反応、リアクションあった方が嬉しいですよね。

可奈さん うーん、なんか「おいしい!」って言わなくっても、あっ目が丸くなったなとか、そういうとこを見てます。喜びです。

(みなさん食べ終えました。満足。ごちそうさまでした)
(水出し台湾茶の、開いた茶の葉を見ながら)

参加者 すごい開いてる・・・これもとはどのくらいの量使ったんですか?

寺本 あ、(1リットル瓶に対して)大さじ一杯くらいですよ。

可奈さん すごいですよね。広げたらきれいな葉っぱに戻ってるし・・・その茶葉をいただいてそれで燻製したことがあって。ベーコン作ったときもよかったんですけど、さつまいもが面白かった。

寺本 あー!そう、燻製さつまいもがもうスイーツみたいでした!

可奈さん 香ばしさの中にお茶っぽい感じもあって、不思議な感じでしたね。

寺本  はーおいしかった!ごちそうさまでした。
みなさんもう満足な顔をされてますけど、今日はここからが本題ですからね!?

◎いよいよ料理のお話、ゆるやかにはじまります

寺本 実は昨日、志和のどじょうやさんの畑に伺う予定だったんですよ。どじょうやさんの野菜をここに並べて、これはどうやって食べようか、というお話をする予定だったんですけど、すごい豪雨で行けなくて。

可奈さん ね、残念でした・・・ そういうふうに畑に行って野菜に触っていると、ああこういう風に食べたらおいしいかなってインスピレーションというか湧くんですよね。その場で収穫しながら葉っぱをちょっとちぎって味見させてくださるんですよ。なかなか生で食べたことなかった野菜も「こんなにおいしいんだ!」って。切った時に香りが広がることとか、貴重な体験させていただいてます。

寺本 今日は「料理をしない料理教室」ですので、料理をしないんですよ。口伝(くでん)といいますかね。なんでそういうことをしようと思ったかと言いますとね、どじょうやさんの畑からの帰りの車内での話がきっかけだったんです。

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どじょうやさんの畑の野菜ってすごい立派なんですよ。冬の小松菜なんてもうすごくて。そのへんのやわな野菜とは違ってて。これどうやったら美味しく食べられるかなって可奈さんに聞いたら「オイル蒸しにしたらいいですよ」って教えてくれたのでやって見たんです。
フライパンに多めにオリーブオイルをひいて、洗って刻んだ野菜を投入して、オイルをからませるように炒めて蓋をして蒸した。
それがね・・・ちょっと違ってたんですよね。

可奈さん おしい! オイル蒸しの良さって、野菜の持ってる水分で蒸せるところだと思うんですよ。なるべく野菜の水分が逃げないようにしてあげることが一番のポイントで。フライパンに入れる前に野菜をオイルで和えとくんですね。

寺本 さあここですポイント!

可奈さん 和えておくと周りが油でコーティングされてるので、切ったとこからも水分が逃げにくくて。それで蓋つきの鍋に入れて弱火でのんびり蒸し焼きにします。野菜だけの水分で火を入れていくんですね。

寺本 弱火じゃなくてジャー!!!ってやってましたもん。そりゃ野菜炒めですよね。
どうしたらこの野菜が美味しくなるかを考えた上で水分を油でコーティングして蒸すという目的に考えが及ばず、「オイル蒸し」っていう名前から考えてやってしまった行動、ああ、こういうことかと思ったんですよね。
お料理って、基礎学力と想像力なんだなぁ、と。

みなさん普段お料理されます?お料理される方・・・・いやどんな腕かは問いませんから!
(ぱらぱら手が挙がる)
例えば気分が乗ってうきうき作れる日もあるかもしれませんけど、疲れ切っちゃって何作ろう、なんにも浮かばねぇっていう日に、そうはいっても食べなくてはいけない。そういうときにどうするか。
今や便利な時代で、お惣菜も売ってるし、簡単に作れるキットもありますから、一食お腹を満たすことなんてすごく簡単なんですよね。ただ自力で自分の食べるものをなんとかしていくセンスというのか、そういうものは簡単なものに頼れば頼るほど無くなっていくような気がするんです。
車もオートマばっかり乗ってたらミッションの車に乗れなくなっちゃう。
獲得した能力は使わないと退化していってしまう。
知らない間に失っているセンスがあるのならば、そういうセンスを駆使してやってる人に話を聞いたらその差分がわかってびっくりするんじゃないかと思ったんですよね。
私は「オイル蒸し」で愕然としました。

可奈さんは仕事としてホームラン食堂でそのセンスを駆使して料理をされていますからね。

◎ホームラン食堂さんの「朝ごはん」の組み立て方

寺本 ホームラン食堂さんはすごくおいしい朝ごはん、お粥を出されているんですよね。

可奈さん そうですね。毎日玄米のお粥を土鍋で一時間くらいかけて炊いて、あとはその季節の野菜の副菜が7品か8品ついてくる朝ごはんですね。

寺本 その副菜のラインナップはいつ考えるんですか?

可奈さん お店を始めてしばらくは前日の夜考えていたんですけど、ある時から当日の朝考えることにしたんですね。

来場者 (ざわざわ)すごい・・・

可奈さん なんでかというと、前日に仕込んでいれば自分自身は安心なんですけど、たとえばその日の気候だったり、今日じめじめしてるからこの味付けじゃないなとか、実はこうやったほうがおいしかったかもと思ったことがあって、それ以来当日の朝に考えてます。
朝4時くらいに起きて、5時にお店に来て、7時にお店を開けます。出勤時間歩いて10分くらいなんですけど、だいたいその間に冷蔵庫にある野菜を思い浮かべて、味の組み合わせとか、今日ちょっと蒸し暑いからこうしようかなとか考えながら通勤してきて、着いたらヨーイドン!な感じですね。

寺本 野菜自体は前日に買っておいて?

可奈さん 本当はその日の朝に仕入れたものが使いたいですけど、お店の開く時間がとっても早いので。幸いうちの近所の八百屋さんが6時半に開けてくれるので、足りないものは駆け込むこともあるんですけどちょっと危険なので。
それ以外に自分で発酵食品とか作っているのでそれは季節ごとに毎日仕込みをしていますね。

寺本 副菜の数々で、レギュラーのがんもやお味噌汁以外はどういうバランスで決めているんですか?

可奈さん 酸っぱいものがあるとか、味噌っぽい味がするとか、あと漬物ですね。

寺本 最近はなんの酢の物作りました?

可奈さん 最近はきゅうりとオクラですかね。酢の物っていうと生で塩もみしてっていうイメージあると思うんですけど、わたしきゅうりもちょっと茹でるんですよ。

一同 ええーーー・・・どうやって・・・?

可奈さん きゅうりスライスして、塩入れたお湯にくぐらせる感じです。

寺本 ほら、スライスの厚さが気になりますよね。

可奈さん んーどれくらいですかねー でもあんまり薄すぎない感じで。

寺本 トントンと切って、塩当てずに、ぐらぐらの湯にくぐらせて、さっとザルにね・・・オクラは?

可奈さん オクラも茹でます。

寺本 オクラも別の鍋で湯がいといて

可奈さん えっとですね、そうしちゃうと火口が20個くらい必要になるんで・・・多めに湯を沸かしといて、火が通りにくいものから先に入れていきます。オクラ先に入れて上げて、きゅうり入れて。お湯をその都度変えるのはそんなに意味がないというか、アクが出たり味が極端に変わるものは湯を変えた方がいいですけど、オクラときゅうり、しかも最後一緒になるし。一緒の湯でぜんぜん問題ないです。

寺本 オクラ、へたつけたまま湯がく?

可奈さん オクラは切っちゃうとそこから湯が入って味が薄まっちゃうので、ガクをはずして、ヘタの硬いところを薄くむいてちょっと固めに茹でます。冷水にとると味が抜けちゃうのがいやなので、どの野菜も基本お水にさらさないです。ザルに広げて冷まします。その間にちょっと火が入るので、硬めに茹でて上げます。

寺本 ふむふむ。きゅうり刻んだの湯にくぐらせまして、ザルに上げます、そして?

可奈さん さっき酢の物って言ったんですけどおひたしに近い感じで作るんですね。出汁も多めに沸かしてるので、出汁をちょっと入れて

寺本 出汁はなんの出汁です?

可奈さん 昆布といりこですね。広島なのでいりこ出汁に馴染みがあって。

寺本 いりこ頭外します?

可奈さん いろいろ諸説あるじゃないですか、頭と腹とってとか。そうするとクリアな味になるとは思うんですが、わたしはいりこそのものの味なんだから苦くていいじゃん、と。だからぽいっとそのまま入れます。
この昆布といりこは前日から水につけて帰ります。そして朝火を入れる。沸かさないように80℃くらいで、弱火で2時間くらい火にかけっぱなしで置いてるんです。そのために朝5時に店に来なくちゃいけないんですけどね。
その出汁は味噌汁だけじゃなくいろんなものに使えます。合わせるときにちょっと入れたり。
出汁に塩と薄口醤油で味を整えておいて、冷めたきゅうりとオクラを入れます。で、冷蔵庫に入れておきます。冷めていくときに味がしみていくので。「酢の物」って言いましたけど、食べるときに梅醤油とかを垂らして酢の物っぽくして食べます。

寺本 酢の物の酸味は梅の酸味なんですね。

可奈さん お酢って体に必要なものなんですけど、なんとなく採りすぎると胃にくる感じもするんですね。冬の時期だと八朔や酢橘などの柑橘でお酢の代わりにしたりとか。梅を使うときはお酢を使わないとか。

寺本 あのですね、さっき衝撃的なものを見たんですよ・・・
梅干しの種だけが醤油に浸かってる瓶。
これは食べた後の・・いやそんなわけないよね、食べた後の種じゃなくて?

可奈さん こないだ梅味噌を大量に仕込んだときに種の周りにどうしても果肉がのこってて、もったいないので瓶につめて薄口醤油を注いで置いといたんです。これです。蓋をあけてにおってみてください。

(みんな手にとったり写真撮ったり蓋開けてにおったり)

一同 わぁ・・・・毎朝一個たべる梅干しの種とっとかなきゃ・・・しゃぶらないようにして

可奈さん 水ナスをこの梅醤油で和えて生姜足したりしても美味しかったです。今日のにゅうめんの出汁の中にもこの梅干しの種を何個かいれてます。隠し味で少しだけ梅醤油もいれてます。

寺本 ねー。梅干しの種が調味料になったり出汁が出たり・・・思いつかなかった。

可奈さん 梅醤油の味をダイレクトに使わなくてもいいと思うんです。梅のクエン酸で夏の疲れをとろうかな、みたいな感じでちょっと使うとか。白湯の中にこの種入れて飲んでも塩分とれますしね。とりあえず種もったいないからお醤油に浸けとこう、っていう感じで。

寺本 しかし話は戻りますが、きゅうり湯がくとは思わなかったな。「酢の物」でググったらきゅうり刻んだのに塩あてて水分出してぎゅっと絞れって書いてあるでしょ。

可奈さん 湯にくぐらせるときゅうりって瓜の仲間なんだなって感じると思います。甘さも出るし、青臭さも抜けますしね。この時期どうしても冷たいものを食べることが多くなるけど、体が冷えすぎてもいやなので、生野菜を食べるより一瞬でも湯にくぐらせた野菜の方が消化も楽でいいかなと。きゅうり炒めてもおいしいですしね。

寺本 なるほど。朝ごはんのほかの副菜、味噌味のものもあるんですよね。

可奈さん そうですね。味噌とその梅醤油を混ぜて新生姜を入れたりとか、山椒の実を入れたりとか、ごぼうが出始めたらごぼうと味噌を合わせて炒っといて小さいスプーンに乗せて添えたりとか。

寺本 その味噌はどこのお味噌ですか?

可奈さん 自分でもちょっとは味噌作ってるんですけど、お店でお出ししている味噌はお味噌屋さんから買わせていただいてますね。広島の米味噌と、山口の麦味噌2種類を合わせて使っています。
たとえば今日のお味噌汁この具材だから甘めの方がいいなと思ったら麦味噌多めにしたりします。寒い時とか豚汁する時とは麦味噌多めにしますね。

寺本 最近のお味噌汁の具は何が入ってました?

可奈さん 油揚げを焼いて入れるのが好きで

寺本 あっ!これ真似したんですよ。油揚げってぜったい湯かけて油抜きするもんだと思ってたけど、そのままフライパンでかりっと焼いたの入れたら香ばしくておいしくて!

可奈さん おいしいですよねー

寺本 こうやって聞くとやってみようと思えるじゃないですか、アイテムが増えますよね。さあ今日何アイテム増やせるでしょうか。

可奈さん それこそその焼いた油揚げで一品おかずにもなりますしね。生姜醤油でたべたり、味噌のせてもいいし、梅醤油でもいいし。今の時期は薬味たっぷり乗せてお醤油、もいいと思います。
あとは副菜のバリエーションとしては食感の違うものをと思って、野菜チップスをつけたりしています。
最近だったら新じゃがをスライスして素揚げして。

寺本 じゃがいもは水にさらす?

可奈さん はい、デンプン多いと焦げちゃうんですよ。水でしっかり洗って水気をしっかり拭いて。

寺本 そう拭かないと!爆発しますからね!そういうちょっとしたひと手間を惜しむから油まみれになって嫌になったりするんですよね。あーもう二度と揚げ物なんかしないって思っちゃう。

可奈さん あとは卵焼き。最近は出汁をたっぷり入れてオーブンでオムレツみたいに焼くんですよ。そうすると茶碗蒸しの延長線という感じの卵焼きができます。卵焼き器で巻く卵焼きって、入れられる出汁の量に限りがあるんですよ。うまく巻けなくなっちゃうので。それをオーブンで焼き上げるとちゃんと固まってくれる。かつ、食べたらジューシーで。暑いとボソボソしたもの食べたくないじゃないですか。つるっと入る方がいいので。最近は出汁オムレツが多いですね。中に好きな具も入れられるので。クミンと荒くみじん切りした新玉ねぎとじゃがいもを一緒に炒めて入れたりとか。カレー風味のオムレツになります。先に炒めとくと水分も飛びますし甘みもでますしね。

参加者 卵何個で出汁はどれくらいですか。

可奈さん 卵3個で出汁が120ccくらいです。お塩と、保湿のために味醂をちょっとだけ入れます。ガラスの耐熱容器にオーブンペーパーひいて流し入れて、うちは200℃のオーブンで20分くらい焼いています。焼きたてはプルプルです。

寺本 玄米のお粥にあう副菜を7、8品、定番のがんもにお味噌汁に漬物、野菜チップスに酢の物・・・

可奈さん 旬の野菜と、味のバリエーションをいろいろ妄想しますね。

寺本 買い物はどんなふうに買ってます?野菜とか

可奈さん メニューは決まっていないので、美味しそうなやつを買って帰るというか・・・なるべく季節のものしか買わないんで、あっ、ズッキーニが出てる、と思ったらズッキーニ買うとか。

来場者 どこで買われているんですか?

可奈さん ホームラン食堂の斜め前に朝6時半から開く八百屋さんがありまして、そこが毎日三次から無農薬露地栽培の野菜を運んでくれる産直なんですね。そこで季節の野菜を買って帰って、並べてみて、たまたま横に並んでたこの二つがああこれ美味しそうだなーっていうので組み合わせたり。それこそきゅうりとオクラとか。

寺本 なんか色が近いと相性がいいって言ってましたよね。

可奈さん そう、きゅうりとキウイはおいしいとか。ドレッシングにしたりしてもおいしいです。迷った時は同じ色のものを合わせるとびっくりするようなおかしなことにはならないです。

来場者 彩りは考えて作ってますか?

可奈さん 彩りは・・・あんまり考えないです。

寺本 全体まっ茶色が神、みたいな感じですもんね。いかにインスタ映えないかっていうね。

可奈さん おまけでトマトをいれるのはいやなので。トマトが食べたかったら入れますけど。ぜんぶ緑の日もあるし。それで季節がちゃんと出るんですよ。こないだズッキニーが黄色で、トマトが赤で、オクラの緑があってっていうのを見て、ああ夏が来たんだなーって思いました。

寺本 ねー。年中弁当にブロッコリーとプチトマト入れちゃうからほら。季節感ねー。

◎ないなら作る、保存食。そしてその応用

寺本 今は夏野菜がわーっと出てきて楽しい季節ですけど、ある瞬間、なんか野菜がなくなる時ってあるじゃないですか。そういう時は?

可奈さん そうですね、春の前とかですね。そういう時は乾物にお世話になっています。豆とか干し椎茸とか、切り干し大根とか。椎茸が出盛りの時に買って干しておいたりとか。

寺本 そうか。保存して持っておくという手段もお店の中にあるってことなんですよね。
ホームラン食堂の入って右手にあるあそこなんてもう神棚みたいなスペースがありますもんね。あらゆる瓶や野菜たちが並んでて、気持ち良さそーに発酵してたり干されたりしてますよね。発酵ってことでいうと、それだけであと3時間くらい喋れちゃうと思うので、それはまた改めて・・・。

たとえばさっきのシソの穂もそうですけど、旬のものが安くて新鮮で大量にあったとき、違う季節にも使いたいから保存するというのは昔から普通の人たちがみんなやってたことなんですよね。だけどあらゆるものが年中スーパーにあるし、苦労せずともすべていつでも手に入るから、今はやらなくなっても成り立ってますよね。
ただ、季節の自然な姿を考えると、八百屋に並ばない時期は当然ある。それにこれだけ災害が続けば、スーパーにあらゆる野菜が並ぶのが当たり前じゃなくなる。これからなにが起こるかわからないわけで・・・
自分の家に保存する手段を持っていると、これからの安心かもしれないですよね。野菜干してあるとか、ぬか床のなかに野菜があれば、それだけで栄養とれるわけで。
今お店にどのくらい保存食ってあります?

可奈さん どのくらいありますかねぇ・・・

寺本 こないだ死ぬほどらっきょう漬けてたでしょ。

可奈さん ああそうです。今年は6キロ漬けました。後悔しました・・・剥いてる時に。

寺本 らっきょうはわたし「オタフクのらっきょう酢」で漬けるものだと思ってましたけど、塩水で漬けるんですよね?

可奈さん 塩水で漬けて乳酸発酵させてから甘酢に漬けるかたもいらっしゃるんですけど、わたしはそのまま塩水で発酵させて熟成させます。これが不思議なことに半年経つと甘みとかうまみとか、お酢入れてないのにちゃんと酸味も出てきてて。らっきょう独特のエグイ感じが抜けるんですね。
あとは今月は山椒の実を塩水につけましたね・・・梅干しも・・・ぬか床もあるし粕床もあるしキムチも漬けるし・・・あそこに瓶がどのくらい並んでるのか・・・? あとは梅シロップも作りました。

寺本 その神棚スペースから今日はこっから一品だそうかってこともあるんですよね。

可奈さん はい、ありますね。ぬか床の漬かりが浅いから今日はらっきょうにしちゃおうとか。すごく頼もしいです。困った時にとりあえず瓶を開けるか、みたいな。

寺本 梅干しはおにぎりに入れるものだとしか考えてなかったんですけど、その種を醤油に浸けるとか、それを調味料として使うという感覚がすごいなあと。

可奈さん そうですね。たとえばぬか漬けも古漬けになって酸っぱくなれば、にゅうめんに入れて、それから出てくる塩味と酸味で味をつけちゃうとか、炒め物に入れちゃうとか。

寺本 さっきも「しょっぱくなった古い生ハムがある」って言ったら「調味料にすればいいのに」って。

可奈さん ちっちゃく鰹節みたいに削って焼いた野菜にかけてもおいしいと思うし、それから出汁もひけると思うんですよ。

寺本 生ハムから! そうか、要は魚じゃない肉版のかつおぶしみたいなもんだからか・・・
生ハムといえばバター巻いて食うとかね、ワインのお供とかね、食品としてしか認識してなかったけど、塩味があって発酵してるものだと考えれば調味料として使えるんですよね。

可奈さん そうなんです。お粥を今日は洋風に食べたいなと思ったりしたら入れても。ちょっとリゾットっぽくなって。チーズとか、胡椒とか合いますし・・・

◎「食べたいもの」を作るには

寺本 普段はおそらく自分が食べたいものを作っていると思うのですが、何をどう考えて作ってますか?

可奈さん んー

寺本 食べたいものってすぐ浮かびます?

可奈さん ピンポイントで浮かぶ時もあります。今日はどーしてもナポリタンが食べたい、とか。でもだいたい「体が今なにを欲しがっているかな」という感じで考えています。
今日ちょっと暑いからボソボソしたもの食べたくないな、というのでつるっとしたものにしたり。

寺本 そうだ、今日なんでそもそもにゅうめんにしたんでしたっけ?

可奈さん 湿気があって暑くって・・・冷たいものを食べると一瞬は涼しくなるけど汗引かなくないですか?あったかいもの食べた方が汗が引くなと思っていて。これからクーラーの中にいたり、冷たいものを飲んだり冷えることが多くなると思うんですよね。なのでなるべくあったかいものを夏は食べたいので、にゅうめん。

寺本 みなさん、にゅうめんとか作ります?

参加者 (ちらほらうなづく・・・)

寺本 わたし、にゅうめんって粗雑な扱いをしてました。余ったそうめんを味噌汁に入れる、くらいの感覚だったので、のびきったそうめんなわけですよ。ご馳走に昇格しましたね今日、にゅうめん。

可奈さん しかも「ああいう食べ方をしてもいいんじゃない?」という感覚で、今日は暑いからちょっとさっぱり食べたいっていう時に、酸味が欲しいな、梅干し入れるのがいいのか、レモンなのか、今日はレモンを絞ってもらいましたけど。

寺本 うーん、自由、ですよね。にゅうめんにレモン絞ってアジアン七味入れたら国境超えましたもんね。
・・・にゅうめんって、まずはそうめん湯がくんですよね?出汁の中にいきなりそうめんの束入れたりそんな乱暴なことはしないですよね?そんなことはみなさんわかってますよね?

可奈さん さっと茹でて、しっかり冷水でぬめりを洗って締めてあげるとそのあとのびないんですよ。

寺本 で、お出汁の鍋の中で泳がせて・・・

可奈さん 今日は泳がせてない・・・お椀に麺を入れて、あたためたお出汁を張りました。
お出汁の中で一回あっためてもいいと思うんですよ。そっちのほうがとろみが出たり・・・そこはお好みで。
わりと自分の中でルールを決めないようにしています。ストレスになるのが一番いやなので。作るときも、食べるときも。

寺本 なんですかね、あのストレス。ちゃんと作んないといけないっていう。

可奈さん 「こうできなかった」っていうストレス・・・でも「そうできなくってもおいしく仕上がってたらOKじゃない?」って。ちょっとなんかいつもより長く茹でちゃったな、でも逆に長く茹でたことで怪我の功名みたいなとこあるじゃないですか。こっちのほうがおいしいじゃん!みたいな。おひたしする時にあったんですよ。うっかり湯の中に小松菜入れっぱなしだったことが。ひとまず茹で過ぎだけどおひたしにはしてみたんですよ。そしたらこっちの方が味が入って柔らかくてたべやすかったりして。

寺本 日本料理の世界だったら親方に蹴り飛ばされたりするところでしょうかね・・・葉物はぴんとシャキッとして緑が美しくないといけないという料理の世界じゃなくて、家庭の料理ですからね。

可奈さん 日常食べるものにそこは必要ないんじゃないかな。自分の喜びとして美しく仕上げるのはありだと思いますが、どっちかっていうと食べやすさとか、そっちのほうが大事かなと。

◎自由自在の力

寺本 なんというか、「応用していく力」というのはどうやって育つものなんでしょうかね。

可奈さん なんでしょうかね? これとこれを一緒に食べたらおいしいんじゃないかなっていうのを「とりあえず」やってみるスタンスなんじゃないですかね。

寺本 最近なんかそういう挑戦というか実験してみました?

可奈さん 挑戦・・・ たまたまブルーベリーをたくさんいただいて、ジャムにしちゃうのが好きじゃないのでどうしようかな、と思ってフレッシュなブルーベリーを入れたスコーンを焼こうと思って。それだけじゃ面白くないな、ってことでなんか塩っ気と合わせるのが好きなので「チーズいいんじゃない?」ってことでカマンベールチーズ買ってきて、あまってたナッツも入れて焼いてみたんですけど「あっ!いいじゃん・・・」ってなりました。
味がどうなるかな?って想像してみて、とりあえず作ってみようと。

寺本 みなさん、そういうことってやったことあります?

来場者 ・・・・

寺本 まあここでありますとは言いにくいですかね?
うーん、えーと「クックパッド」使う方!ネットでレシピ検索する方?

来場者 (手が上がる)

寺本 どういうとき使います?

来場者 下ごしらえどうやるのかな?とか

寺本 ああー「タコ 茹で方」とかね。そのくらいわかるか。ちょっといい例が浮かびませんけども
そういうテクニカルな部分を調べたりとかね。

来場者 使ってない野菜を使わなきゃってときに「●● ◎◎」とか素材で検索します。

寺本 ああー「ナス 豚肉」みたいなね。
クックパッドで作ってみて、わたし美味しくなったためしがないんですよ・・・なんなんですかね? あと、クックパッドで作った料理は二度と再現性がないというか、検索するから覚えないんですよね。

来場者 クックパッドとか材料検索してみるんだけど、調味料やら作り方やらいろいろありすぎて・・・やめた!ってなっちゃう。ふつうに炒め物にしちゃう。

寺本 可奈さん・・・クックパッド使われます?

可奈さん あー、でもこれとこれの組み合わせって合うのかなって検索したら「あっ、作ってる人いるんだ」ってへーって思います。
ああいう検索とか・・・わたし「レシピ本」とかほとんど見ないんですよ。面白くないので・・・確かに数値化できてるってすごいことだと思うんですよ。でも、春のたまねぎと秋のたまねぎって味が違うしってなった時に、必ず同じグラム数ってわけにいかないんですよね。レシピの数字で覚えちゃうともったいなくて。それに「この時にしか使わないよね」っていう調味料とかあるじゃないですか。

寺本 ナンプラーわざわざ買ってきたりとかね。

可奈さん そうそう。だったらもっといろんなものが活用できた方がいいかなと。

寺本 料理本のレシピ見たらだいたい味が思い浮かびます?

可奈さん ああ、そうですね。

寺本 料理本とか見て、なんでこうしないんだろうとか思います?

可奈さん ええっ・・・それはない・・・ですけど・・・
一概にこのグラム数ではないんじゃないかなとは思います。たまねぎ1個の大きさだって違うし・・・

寺本 作る時に計量とかします?

可奈さん おやつに関してはします。
あと漬物の時のお塩のパーセンテージに関しては計算しますけど、それ以外はしないです。

寺本 なるほど・・・まずはなんとなく分量の感覚で合わせてみて、食べてみると。ちょっとしょっぱかったなってなると?

可奈さん 出汁足したりとか。あとから差し引きできると思ってるんで・・・あんまり最初から濃い味付けにはしないんですけど、足りなければ後から足せばいいと。たとえばおひたしだけで味が決まらなかったとしても、鰹節かければそれに塩分が入ってて急に決まったりすることも。味をピンポイントで狙うのは難しいと思うんですよ。決まったら気持ちいいけど。あとからいくらでもどうにでもできるんで。

寺本 ちょい足しアイテムがあるといいですよね。例えば梅醤油とか。なんとか味噌とか。

可奈さん そうですね。じゃあ今日は柑橘の皮を刻んで混ぜようとか、そういう感じで。

寺本 食べてみてから調節すればいいんですね。

可奈さん そうですね。味見しながらやればいいと思うんですよ。お野菜も個体差がすごく激しいし、雨の続いた時と晴れた時の味も違うし。生で食べられるものはちょっと切って食べてみればいいんですよ。今日のナスめっちゃおいしいじゃん!ってなればじゃあ味醂はなしにしよう、とか。

寺本 素材の時から切って食べてみればいいのかー なるほどね!

可奈さん 「あなたこんな味なのね」っていう。そこは大事かなと思います。

寺本 料理の最初からさいごまで全然味見せずに盛り付けちゃう人っていますよね。わたしもやりがちですけど。

可奈さん ちょいちょい味見をするほうがストレスがないと思うんですよ。最終的に食べるときに「ようしどれどれ・・・あれ!?」っていうよりは。

寺本 リカバリー方法をいくつか持っておくのも大事かも。

可奈さん そうそう。足りなければ足せばいいっていう感じでやるくらいが自分は楽なので。

寺本 そうですよね・・・ あ、料理教室行かれたことある方?

来場者 (3名ほど挙手)

寺本 ここで先生の悪口は言いづらいとは思うんですけど、やっぱり料理教室行くと「大さじ3杯」とかテキストで習いますよね。行かれてみてどうでした?

来場者 意外と、帰って作らなかったり・・・豪華すぎておしゃれすぎて・・・

来場者 美味しかったけど・・・結局簡単なものしか作らなくなる。その時は楽しいんですけど。

来場者 材料の量や種類がそんなに揃えられない。一人分が作れない。

寺本 レシピって4人分を一人で作ろうとして材料それぞれ1/4にしたらいいってもんじゃないですもんね。

可奈さん やっぱり一度にたくさん作る方がおいしいですしね。

寺本 料理を学ぼうとしたときに、料理本を見たり、先生のところで習ったりというのが「学び」というイメージなのかなと思うのですが、すると「学んだ先生がゴール」「あのとき食べた味が正解」ってなってしまう。でも材料も道具も調味料も違うところで再現できないとなると、それが挫折感につながったりするのかなと。それは料理に限らずなんですけどね。先生の仕上げたものが目標になるとそれ以外はダメなんじゃないかと。
お茶教室でもそうなんですよね。「あの時飲んだ味にならないんです」って。なりませんよそりゃあ!だって全部違うんだもん!ってね。正解をどこにするかってことだと思うんですけど。

可奈さん そうなんですよね。食べておいしかったらOKなんじゃない?っていうところはあると思ってて。他の人に食べさせるわけじゃないじゃないですか。家族や自分で食べるわけで。まあわたしはお客さんに出してるんである程度の線は、と思いますけど。
その日の体調とかによって、疲れてたら塩分強くしちゃおうかなでぜんぜんいいし。あの味にならなかったからこの料理は失敗、というのはもったいないような気がしますよね。

寺本 真面目に考えすぎて、これは成功か、失敗かってことになっちゃうと、毎日食卓の前ではーってため息ばっかりついちゃいますよね。作りたくなくなっちゃう。

可奈さん 「オイル蒸し」の話に戻れば、作り方は違ったけど、おいしかったんならそれでいいと。違う作り方を知ってやってみたら「あれ、こんなにちがうんだ」っていうのも一つの発見だと思うし。

寺本 あれは知らず知らず「野菜炒め」でしたね。どうりでかたいなーと。まあ美味しかったんですけど。

可奈さん そうそう。どう感じたかの方がたぶん、大切なのかな。

寺本 そう、自分が感じることをけっこうないがしろにしがちなんですよね。自分がどう思ってるかという視点を忘れがちというか。どう思う?って人に評価してもらうことばっかり普段しがちじゃないですか。会社だったり。人に評価してもらうことが仕組みとして多いんですよね。
たとえば煎茶なんか、熱湯から氷水までいろんな温度で淹れられるんですけど、どこが正解ってことじゃないんですよね。どこが好きですか?ってことなわけで。
酸味もね、すごく欲しかったら例のおひたしににお酢をだーっと

可奈さん そうそう。お酢入れてもいいと思います。

寺本 自分の好きな味にしていけるテクニック

可奈さん 制限を設けないことかな、と思いますね。こないだ教えてもらったのはこうだけど、今日はナス入れた方がおいしそうじゃけこうするとか。料理名はこうだけど材料は違っててもいいんですよね。ナムルっていったらもやしとほうれんそうとぜんまいと、というイメージだけど、別になんでもナムルになるんですよ。じゃがいもでもできるし。

寺本 ナムルの定義ってなんなの?

可奈さん 「和える」っていう意味だと思うんですよ。だからごま油と、ニンニクと、ちょっとお砂糖と酢入れる、というのが基本レシピなんですけど、べつにお砂糖も入れれば味がはっきりしてわかりやすくなるけどなくてもいいし。朝ニンニクはちょっと食べたくないからショウガに変えよう、とか。「ナムル」って料理名なんだけど自分の好きなものを入れて和えちゃえばいいわけで。

寺本 べつにね、全日本ナムル連盟みたいな人に「これはナムルじゃない!!」とか怒られたりすることはないわけでね。

可奈さん そうですそうです。季節の野菜で作ればいんです。

寺本 そうかー・・・・ちょっとあったかいお茶でも淹れましょうかね。
(お茶を淹れて休憩)

◎来場者からあふれ出す質問

寺本 今日はせっかく来ていただいたんで、日頃疑問に思ってることとか、聞いてみたいことあればぜひ。
ここからはフリー可奈ちゃんタイムです。

来場者 出汁ってどういう分量で作られますか?

可奈さん 1リットルの水に対して昆布が10g、1パーセント。あとはどのくらいいりこの味が出したいかですね。たくさん入れたら濃い味になりますが、家計的にたいへんなので、だったら前の晩から水につけておけばいいんです。だいたいいつも3リットル弱出汁をひいてるんですが、いりこはだいたい一掴みくらい。昆布である程度ベースが整うので、そこにいりこを合わせた方がおいしいと思います。
味の相乗効果、ですね。

寺本 (来場者の方に)お出汁どうされてます?

来場者 一人だと、出汁パックを使ったりします。

可奈さん 出汁パック、いいと思います。私だって休みの日に一人分の味噌汁が作りたいときには「ありがとう♡」って使わせてもらいます。でもそれだけだと私にはなんとなく足りない気がするので昆布を1枚足したりするんですけど。

寺本 私には足りない、って感覚があったらいいんですよね、足せばね。
出汁のいりこってどうしてます?

可奈さん そのまま食べたりとか、佃煮にしたりとか。揚げたこともあります。水切って片栗粉まぶして。自分のおやつ。

来場者 いりこはどちらのいりこですか?

可奈さん いりこは香川の「やまくにさん」のいりこをつかっています。

来場者 コストが!おいしいけど! 家族で毎日使うとなると・・・

可奈さん 広島にもいりこ屋さんありますしね。よくオススメされるのは八丁堀の「いちばんだし」さんで相談するのがいいよと伺いますね。

寺本 調味料のコストで思い出すのは・・・昔おいしいもの好きな友人からある醤油をおすすめされたんですよ。ひと瓶が1000円くらいするの。ふつうの醤油が400円くらいなのに。高っ!って言ったら「考えてみて、飲むわけじゃないんだよ、どのくらいで消費する?これで料理の味がぜんぜん変わるんよ。基本の調味料がうまかったら、あなたの腕がダメでも美味しくなるから」って言われてサッと買いました。

可奈さん そうですね、やっぱり野菜とかの方がいいものを毎日揃えるのは大変なんですよね。父親に口酸っぱく言われていたのが「いい塩を使え」。調味料は大事ですね。

来場者 よくお料理するときに、自分の料理の味が「味は濃いのにパンチが足りない」と思っちゃって・・・最後に、これでいいんじゃろうけどと思いながら余計なものを足しちゃって失敗するんです。「パンチが足りない」っていうのは何なんですかね?

可奈さん 味が濃いのは調味料でつけた味、だと思うんですよね。たとえば醤油味が濃い、ということなんだと思うんですけど・・・お味噌汁で例えると、すごくちゃんととった出汁だと味噌ってほんとに少しでよくて。たぶんそのへんだと思うんですよ。オイル蒸しも弱火でじっくり火を入れると野菜の水分で蒸されてすごく甘くなったり・・・ 出汁引いたりする時も沸かさずにゆっくり・・・まあ毎日2時間かけて、っていうのはあんまり現実的ではないのですが、たとえば前日からいりこを水につけて冷蔵庫に入れといたのを朝鍋に移して弱火にかけて、それから歯磨いて顔洗う、ってするとそれだけでもぜんぜんちがいます。そのベースの部分の味、なのかなと思います。

寺本 あーわかる。出汁引かずに野菜から出汁でるじゃろと思っても、永遠に味噌を入れ続けないといけなくなるあの感じ。

可奈さん でもすごいめんどくさい時に味噌汁が飲みたくてでも出汁引くのもちょっとな、っていう日もあるんですけど、そういう時には鰹節やおぼろ昆布を入れて味噌溶くと、わりと整います。

寺本 調味料の下に「うまみ」というか豊かなものがあれば、調味料がちょびっとでも満足するんでしょうね。

可奈さん 体に染みていくかんじですよね。舌先だけで味わっちゃうとどうしても調味料がたくさん必要になっちゃいますよね。

寺本 野菜が火を通すだけで甘いっていう感覚あるじゃないですか。料理してないのに。
話脱線しますがわれわれ今「土器」にはまってまして。
「寺本さん、土器すごいです」って言われて、あの縄文土器とかの土器?って・・・土を素焼きしたもので、水分が滲んだりするプリミティブな器なんですけど、それでお粥をたくと全然違うんですよね?

可奈さん そう!香りからしてまず違って・・・味が濃いんですよね。びっくりしました。なんで?って

寺本 土器で豆を炊いたら死ぬほど時間がかかるんですよね?

可奈さん そう・・・強火にかけれないんですね、素焼きで土の密度が高くないので。いつもは1時間で炊けるお粥炊くのに3時間かかったり。お豆炊くのに4時間かかったりするんですけど。ただびっくりしました。土のミネラル分ってやっぱりうまみなんだな、と。共通して感じたのは、どじょうやさんの野菜を食べた時のあの土の感じ、あの味の濃い感じは、ああ、土の味なんだなとしっくりきたというか。

寺本 出汁から今「土」、最先端ですねこれ。
ズッキーニを土器で焼いたら雲みたいなんですって?

可奈さん はい、雲食べてるみたいになるって。要は野菜の水分だけで炊いてるんですよね。

寺本 こないだTwitterかなんかで目にしたんですけど「ズッキーニの1時間焼き」っていうレシピがあったんですよ。半割りにしたズッキーニを1時間焼くんですって。土器で焼いた雲みたいなズッキーニの話を聞いていたのでやってみたんですよ。そしたら焼肉のたれ味がいちばんうまいと思ってる高校生男子が「あまい!」って食べましたね。
火の入れ方で甘味が出せるってことや、出汁で満足感が得られるってことを忘れていたなと思いました。

来場者 野菜炒めってあんまり長く火を入れるイメージないんですけど。

寺本 ね。中華料理だとすごい火力で中華鍋をこうがーっとふるってますよね。

可奈さん 家庭用のガスの火力ではあそこまでできない・・・中華料理は一瞬で炒めあげるくらいの火力なんで強火でいいんですけど、家庭の火力の強火で火をいれると、どんどん水っぽくなっていくという・・・
中華料理の「青菜炒め」みたいなの好きでよくやるんですけど、鉄のフライパンをよく熱しておいて、じゃっといくんですけど、その時にお水と塩を足すんですよ。お店によってはスープと塩。うちは出汁を引いてるので出汁と塩とナンプラーとかで味をつけるんですけど、そしたら一瞬でさっと火が通ります。野菜だけで炒めちゃうとどんどん水が出ていってしまうんで。

来場者 やっぱり硬いものから順に炒めるんですよね?

可奈さん はい。うちで小松菜とか人参できんぴらにすることがあるんですけど、やっぱり小松菜から水がでてしまうので、さっとゆでてから

一同 あー・・・・

可奈さん 中華料理の油通しとたぶん一緒だと思うんですけど、さっとお湯くぐらせとくと水分が若干抜けた状態で炒められるのでべちゃべちゃになりにくいです。

寺本 ほんとにコンロが20口くらいほしいですよね。

可奈さん うち作る時になぜかコンロ2口しかなくって・・・なんで2個でいいって言ったんだろう・・・

寺本 うちより少ない。うち3口あるもん。

可奈さん ですからカセットコンロとか駆使して仕込みしてます。
さっきじっくり火を通すことで甘みが出るって話がありましたが、一番わかりやすいのが焼き芋だと思うんですよ。芋の特性でもあって、温度が上がり切るまでじっくり時間をかけたほうが、芋のデンプンの状態がよくなる。50℃で30分とかじっくり蒸してあげると崩れにくくなります。そのまま蒸しあげるとめちゃくちゃ甘いし、型崩れしにくいです。

寺本 それは何で学ばれたんですか?

可奈さん 本、ですかね?

寺本 それは調理科学、みたいな本?

可奈さん ああそうですね、こんな分厚い本でした。

寺本 へー。つまり料理の研究者でもあったんですね。

可奈さん ですかね。じゃがいものことを調べていて、それが出てきて。弟も詳しいんでこういうのがあるよって教えてもらったり。

寺本 料理ってたぶん、知識とテクニックと直観でできてると思っていて。それは料理だけでなくてお茶淹れることもそうなんですけど。上手になろうと思ったら、知識とか知恵って役立つんですよね。タンパク質は80℃くらいから変質するとか。
たとえば煎茶でも、70℃より高い温度でカフェインやカテキンがよく抽出される。逆に低い温度で淹れれば抽出されにくいんですよね。それさえ知っておけば、甘いお茶が飲みたければ温度を下げればいいんだな、とわかる。
たぶん本で読んだ知識とか人から聞くことって大事で、今日はそこをふくらませる会だと思うんですけど。
あとテクニックっていうのは自転車に乗れるようになるとか、湯がき上がりを箸先でわかるようになるとか、きれいに刻めるとか、そういうのは繰り返すことで習得していけることだと思います。

じゃあ、直観、とか、センス、っていわれるものは、どうやって磨いたらいいのかな、っていつも思うんですよね。

可奈さん どうなんですかね・・・ わたしは、想像力、だと思っていて

寺本 想像力

可奈さん はい。なんか、うーん たとえば外食したりして、これってこういう組み合わせでこういう味になるんだ、ていうのが貯金されていってて。もし自分がこれを作るとしたらどうやって作るかなっていう「想像力」。同じにする必要はないんですけどね。
想像して、おいしいものが食べたいなって思う、それだけかなと。
100人いれば「おいしい」の感覚も全員違うので、だれかのおいしいを作らなくてもいいじゃないですか。自分が食べるとしたら、を想像したらいい。
「いつ料理考えるんですか」ってよく聞かれるんですけど、たとえば店で出してる「おやつ」も新しいやつ突然始めて突然やめるんですけど、ちゃんと告知してって怒られるんですけど、あっ!これ!おいしいだろうなって想像して作ってみて、おいしかったらメニューに載せて、作るの飽きちゃったらやめちゃうんですよね。季節によって食べたいものもぜんぜん違うから。

寺本 基本「自分が食べたいもの」っていうのがモチベーションとしてはいちばん強いんですかね。

可奈さん かな、と思います。

来場者 50℃蒸しのやりかたってどうやるんですか?

可奈さん 温度計も必要だとは思うんですが、蒸す時に超弱火にして蓋をちょっと開けとけばだいたい50℃になります。蒸し器の湯を沸かした後ふたをあけて、菜箸なんかをはさんでちょっと蒸気を逃がしてあげて。

寺本 蒸し器の中の温度をコントロールできるなんて思ったことなかったです。蒸気は100℃!って。

来場者 そっか、サウナと一緒ですよね。人間が100℃にならないように・・・

来場者 ホームラン食堂さんの料理って、きっとシンプルにできてるんだろうと思うんですけど、そのシンプルさ加減がわからなくて・・・家に帰ってやろうと思っても、これでいいのかな?って。

可奈さん でもほんとにシンプルなんですよ。

来場者 結局蒸して塩かけて終わる、というか、せっかくの素材の味を生かそうとしてそこ止まりになる。へたにつつくとろくなことにならんと。

寺本 シンプルだけど、蒸して塩かけただけが最高、じゃないよ、っていう料理法があるってことかな。

可奈さん 素材の味で食べたいってところは一緒で、塩味で食べちゃうっていうのがもったいないなって思うんですよ。このじゃがいもすごくおいしいのに塩で食べたら塩味じゃん?っていう。野菜の味の輪郭がはっきりするようなイメージで、たとえばお出汁いれてあげたほうがはっきりするかなとか、ナスは焼いた方がいいなとか、なるべく野菜の味が引っ張り出せるような感じで組み立てている感じはあります。
このひとはどうしよう、蒸したり、焼いたり、煮たり、揚げたり、いろいろあるじゃないですか。干したり。

寺本 干したり、が入ってくるんだ。

可奈さん 料理ってたぶん「いかにその野菜の水分を抜くか」っていうその調理法の違いだと思うんですよ。だから「干す」も調理だと思います。冬の間に買ってきた白菜はすぐ使わずにまず干すのは、干すことによって野菜の甘みがしっかりして、かつ、煮炊きしても溶けないし、白菜からすごくいい出汁が出るようにもなります。旨味が凝縮してるというか。そうなったらおひたしとかにする時にも出汁は必要ない。

寺本 先日お客さんが可奈さんに「どうしても糠床がすぐ水浸しになるんです、吸い取っても吸いきれないくらいべちゃべちゃになる」って聞いてらしたけど、「それだったらちょっと干して漬けたらいいですよ」って答えてて。 そうか、きゅうりもフレッシュなままだーんと入れるんじゃなくて、半割りとかにしてちょっと干せばいいんだって。

可奈さん きゅうりとかも干してから漬けるとぱりぱりした食感が残りやすくて。糠漬けにしなくても酢醤油に漬けるだけでもおいしいと思うんですけど、干してから漬けることで食感がよくなります。

寺本 酢醤油につける・・・料理名でいうと「ピクルス」とかになるんでしょうけど、ピクルスから検索すると、酢の他にいっぱいスパイスやら工程やら必要で、めんどくさいからピクルスの素とか買っちゃおうかなってなるんですけど、「酢醤油につけとけばいいじゃない」って、料理名のない料理というか、簡単なことなんですよね。

可奈さん それこそきゅうり塩水につけとくだけで発酵しますから、酢のいらないピクルスになるというか。

寺本 でた、目に見えないものを自在にあやつる感じ。ナウシカ的なね。

可奈さん 仲良くして欲しいですけどね、菌には。

寺本 その糠漬けのべちゃべちゃ解消法ですけど、「スポンジみたいなもので吸ってもいいですけど、干し椎茸入れたら吸ってくれます」「ほししいたけ!そのあとそれどうするの!」「そのまま入れとくと溶けてなくなっちゃいますし、出して出汁としてつかっても美味しいですし」「考えたこともなかったぁ!!」って。

可奈さん そうそう。炒めたりすると糠床の塩吸ってるんでわざわざ塩使わなくてもいいし、糠床にもそれでしっかり旨味が出ておいしくもなるし。
料理名が先行じゃないんですよ、自分が作る時って。きゅうりいっぱいあるけどどうしようか、全部糠漬けにしてもつまんないじゃないですか。じゃあ一部はぬか漬けにして一部は酢醤油につけて一部は塩水につけてそのまま発酵させちゃおうかな、とか。そしたら時間差で食べられて味もちがって。おひたしに入れて使っちゃおうとか。

寺本 今日はいっぱい技を知りましたねー。
たぶんこのまま一晩中お話続けられますね。
料理をする料理教室だと、目の前の切ることだとか湯がいたり混ぜたりすることに集中しちゃって、先生の言うことが自分の中に残らないことがあるなぁ、ということで今日は手を動かさずお話だけに集中する料理教室でした。
聞いた中のひとつでも二つでも、なにかやってみようかなということが増えていたらいいなと思います。わたしは増えた。きゅうり湯通ししてみようと思いましたね。

最後に聞いておきたいこととかありますか?

来場者 とうもろこしが大好きなんですけど、塩茹でくらいしか知らなくて、最近芯と一緒にとうもろこしご飯炊くのを覚えたのですが、ほかになにかありますか?

可奈さん とうもろこしは茹でるより蒸した方がおいしいです。蒸しとけば置いとけるので、一部はそうやってとうもろこしご飯にしてもいいし、そのご飯でカレー食べてもおいしいし、一部はなにかをあえる時に実の部分を使ったりして。モロヘイヤをさっと湯がいて刻んでその蒸したとうもろこしを塩麹と一緒にあえて、それをお粥にのせて食べるのが好きでした。

寺本 自由自在だなー。モロヘイヤ買う勇気なかったよね。

可奈さん 難しくないんですよ。湯がいて切れば粘りが出て。同じ季節に出るもの同士はそんなにケンカしないです。
普段だったら、酢の物って絶対これじゃないとみたいなのはやめて

寺本 タコときゅうりとわかめとかね。

可奈さん それはそれでおいしいんですけどね、違う酢の物があっていいと思うし、料理名がない料理があってもいいと思います。

寺本 塩麹って作ってるんですか?

可奈さん つくってます。麹に対して35%の塩、けっこうしっかり入れるんですよ。湯さましにした水を麹ひたひたくらいまで入れて翌日になったら麹がぎゅーっと水分吸ってるのでまた湯さましを足します。たまに混ぜて、そのまま常温で熟成させてます。

寺本 もう菌の話になると、あと3時間くらい話せちゃう。

可奈さん 楽しくなってきちゃう。

寺本 発酵の世界って腐敗と紙一重じゃないですか。

可奈さん どっちも発酵なんですよね。人間にとって都合のいいものが発酵って呼ばれて、そうじゃないものが腐敗って言われてるんですけど。

寺本 食べてまずかったらやめとけばいいんですかね。

可奈さん そうですね。絶対わかります。うえってなります。だめだったらごめんなさいって捨てます。

参加者 田舎から大量に野菜が届くんです。ありがたいんですけどね、だいたいの野菜は克服したんですけど困ってるのは春先に届くまだほそーいにがーい大根。あれがどうにもこうにも美味しく食べられなくて。あと、トウがたったキャベツ。この二つをどうやって美味しく食べたらいいでしょうか。

可奈さん 味の相性としては、苦いものには酸味が相性が良くて、苦味が気にならなくなるというか。すっごく小さく刻んで、やっぱり火を入れたほうがいいと思うんですよ。葉っぱも一緒に刻んで炒めて、なんか陳皮とかと一緒に佃煮にするとか。苦味が気にならなくなると思います。
あとキャベツはじっくり火を入れるのがいいと思います。蒸して食べるのがいいと思います。もっと言うと、土器で焼くとスが入ってる野菜もびっくりするほどおいしくなります。

寺本 ザワークラウトとか?

可奈さん あれは乳酸発酵した酸っぱい漬物なんですけど、ちっちゃく刻んでもざくざく大きいままでもいいんですけど、だいたい塩分濃度2%~3%、キャベツと塩を合わせて水分出させてその中で発酵させるんですけど、スが入ってたらたぶん水分出ないと思うので3%の塩水を作って足してやると発酵します。

参加者 ザワークラウトやってみたんですけどぜんぜん水があがらなくて。そうか、塩水足せばいいのか。

可奈さん そうなんです。乳酸菌って空気が嫌いなので完全に塩水に浸かってることが大事なんで、3%の塩水を足して、ジップロックで空気を抜いてしまえばいいと思います。そこに昆布を入れれば和風になりますし、好きなハーブを入れてもいいと思います。
これからの季節だとクミンとか入れとくとカレー風味になるので、カレー食べるときにちょっと横に添えたりするといいです。

寺本 ああー絶対うまいやつじゃないですかそれ。

可奈さん 酸味って大事なので、サンドイッチ作ったときに入れるのもいいですし、つけ汁ごとで豚肉とか炊いてもおいしいので。

参加者 いいこと聞いた・・・この大雨で畑が浸かったっていうのでぜったいキャベツ送られてくると思うので・・・

寺本 ぜひ今日聞いたことチャレンジしてみてくださいね。
予定時間をずいぶん過ぎてしまいました。にゅうめんも美味しかったですね。
「これはちょっとホームラン食堂の秘密なので」ってこともなく、全部お話ししてくださった可奈さん、どうもありがとうございました!

(一同拍手)

寺本 どうでした可奈さん?

可奈さん いやー、台本もなかったのでどうなることかと思いましたけど。

寺本 そうなんですよ、ひどいんですよ、「可奈さん料理をしない料理の会しない?」「いいですね」そっからいきなり今日ですからね。打ち合わせもなく。

可奈さん でもすごく楽しかったです。

寺本 料理のお話うかがうのすごく楽しかったです。下手とか苦手とか意識があったんですけど、わたしにもできる、っていう、あっ面白い!と思えることがいくつもありますよね。
可奈さんほんとにありがとうございました!

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■ご参加いただいた方々に後日感想を送っていただきました。


昨日は楽しい時間をありがとうございました😊
コツを教えてもらうと言う会が始めは様子が掴めず、
頓珍漢な感じでございましたが(ただのホームラン食堂さんファンミーティング参加的な…)、
だんだんと、料理ってレシピじゃないんだよね、ほんとに。
と思い出して、何となく美味しいと思う加減を楽しみながら自分が美味しいと思うものを作れば良いんだなあと感じました。
出汁がベースにあり(出汁と言っても毎日はハードルが高いので…
とにかく旨味が出るものを何かと受け取りました。)あとは何を足すかですもんね。濃過ぎたら、出汁を足せば良いと言われてるのを聞いて、そうなのか!と発見あったり…
食材がたらなくても調味料足らなくても、思いつきでやってみたら良いのかなと。ちょっとづつ入れるタイミングや温度、野菜はじっくり低温で。
あーもっとこう言うコツを聞けたら良かったです。
でもすごく自由に考えたらいいんだなーと思えたので、キッチンに立つ事は気が楽になるし、何か作ろうかなと、今日はかなさんが言われていたオーブンで卵焼きを作りました!出汁の味を見て、塩を足した方が良いのか要らないのか、もうすごく適当でしたが、なんだか美味しい卵料理となりました!またこういう機会(調理温度のお話しはもっと聞きたかった…)があれば参加したいです。にゅうめんとお稲荷さんもおいしかったです!
ありがとうございました!
先日はかなさんのお料理教室、激しく質問してすみませんでした。
そして、本当に幸せな時間でした。聞いたことの実践に夢中で、すっかり感想文を忘れてました…。
かなさんのお料理とどじょうやさんのお野菜は、私の人生でも本当に大きな衝撃で、2月(でしたかね?)の雲間さんのイベントから、ちょうどコロナウイルスで世間が激変したこともあり、もともと食べることは大好きだったのですが、改めて何を人生で優先していくかを大きく変えることになる体験でした。
情報過多な時代にファッションでもなくSNS映えでもなく、自分の気持ちや身体を緩めてくれて、整えてくれるもの。お茶もそうだと思いますが、口に入れるものを自ら整えていくことの大事さに、より目を向けるようになりました。
そんな中で、家で料理をする中で、どう素材に向き合うのか、レシピではなく、目の前の野菜たちの甘さや香り、固さや苦味など、一つとして同じものはなく、刻々と変化していく素材であること、それを大事に調理することで整えてあげること。
上手くいくこともいかないこともありますが、かなさんにヒントをもらった私が嫌っていた苦い大根も、実はきちんと甘さや凝縮した味を持っていて、ヒントをもとに違う目線で調理をしてみると、いつもとは別人の味わいを見せました。
かなさんの真似をして、かなり久しぶりにパンやスコーン作りなどもやっていますが、粉や水に向き合いながら、レシピに忠実であることだけでなく、よりどうしたらどうなるのか?
ヒントをたくさん下さるのが、食いしん坊としては、最高に幸せです。
お店や販売の場所だけでなく、語るだけ…というめったにない素敵な時間を作って下さった寺本さんには本当に感謝です。
出してくださった煮麺も、いりこだしにナンプラー、レモンに唐辛子と、不思議と和風からエスニックに味わいをへんかさせ、味の繋がりが新しい発見でした。稲荷寿司もかなさんの手にかかると、こうもおしゃれで、ただ甘い、すっぱいではない、どこかが尖り過ぎていない、整った優しいお味になるのが、心遣いをとても感じました!
書き始めると興奮再びで、文章になっていませんが、やはりステイホームが再び課題な昨今、人生を豊かにするためには食は欠くことのできない要素ですし、どじょうやさんのように真剣に素材に向き合っておられる生産者の方々が側にいらっしゃること、広島に住んでいて、こんなに幸せだなと思うのも最近のことです。
また第二弾…そしてどじょうやさんの会夏バージョンなども切望しています。どこまでもまとまらず、申し訳ありませんが、参加出来たこと、本当に感謝しております。
先日はお世話になりました。
自分が幸運の6分の1になるなんて夢のようで、本当に嬉しかったです。
メモも録音も無しというルールのお陰でメモを取ることに必死にならずじっくりと寺本さんや、かなさんのお話を聞けたと思います。
この野菜をいかに美味しく食べるか、想像力だと言われたのが印象的でした。たくさんの事を教えて下さったので、頭の中で美味しいが溢れてあれもこれも作ってみたくなりました。
きゅうりはただ酢の物にするのでなく、さっとお湯にくぐらせて出汁と調味料を合わせるとか、味付けもエトセトラで、どんどん引き出しが出て来ます。干したり、糠床につけたり、聞いててワクワクでした。
梅の種を醤油に浸けておくと次第にとろみがついて美味しくなるとか。
そして色味が同じ野菜は合うとか、たとえ茹で過ぎたとしても調理次第でかえって美味しくなることもあるなど、聞いててほっとしました。かなさんの大きさというか優しさを感じました。皆さんからの質問もさらっと答えて下さってすごいなあと思いました。
お店のお話もメニューは今は当日、家から店に着くまでの間で考えているなども聞けてあっという間の時間でした。
当日頂いたにゅうめんもあっさりとしたお味で、さらに入っていた香味野菜で季節感が出て美味しかったです。途中レモンやアジア風七味で味がどんどん変化して楽しめました。ありがとうございました。
また料理をしない料理教室を開催して頂きたいです。
とても楽しい会をありがとうございました。
「料理をしない料理教室」、こんなにおもしろい企画をありがとうございました!感想、遅くなってスミマセン(^-^;
書いていると、毒舌になっているんじゃないかと書いては消し書いては消しを繰り返し遅くなってしまいました。(自分では毒舌とは全然思ってないのですが、まわりから「毒舌」「辛辣」と言われること多し(>_<))
今の世の中、いろんなことにスタンダードがあって(「これって誰がやってるん?おかしいじゃん!」というものがたくさん。。。)、「べき」「ねばならない」の思考に陥りやすいシステムになっているような気がします。
あるがままを受け入れ、素材を生かし直感を信じて料理する。このような料理をする方は、生き方もその通りなんだなぁと思いました。その感性、好き!好き!その通り!と激しく同意しながらきいてました。
作られた、取って付けたような事などしない、研ぎ澄まされた。。。「研ぎ澄ます」ことは意識的でなく、人間が本来持っていたはずの感覚なんじゃないかと。
情報があふれ情報に振り回されてる昨今、料理であれば、目立つことに長けている自称「料理家」をマスコミがチヤホヤ取り上げ、多くの人はその「目立つ料理家」がスタンダードと思いこむ。
美容であれば、人間としてあり得ない色を顔に塗りたくり、顔のパーツを不自然に形成した人工的なものが美しいとされる理解不能の感覚・・・(ちなみに、こんな輩が「自然がいいよね~」とか「あるがままよね~」とほざくのが聞こえたら、「顔面自然破壊が何言っとんねん!」とグーパンチしたい衝動を押さえるのが大変です(;´д`))
ちょっと脱線しました。すみません。
このお話から派生するシリーズ(?)があれば是非とも聴きたいです。これだけでなく、雲間さんで開催されるイベントはどれも興味あるものばかりです。ただ私の知識が全く到達しておらず、参加に躊躇したりしてます(^-^;
まとまりのない文章になりましたが、今回のお話の内容は府に落ちるもので、聴いたあととても気持ちが良かったです!
ありがとうございました。

可奈さん、みなさん、ありがとうございました。
またいつか、ぜひ。



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