見出し画像

墓穴

能州(現在の石川県)飯山の谷合に神子ヶ原という村があった。

村のは百姓某の妻は脇に鱗があり、乳房が長く、子供を背負い乳房を肩にかけて乳を飲ませていた。さらに妻は力持ちで男にも負けたことはなかった。

その妻は、ある日、病死してしまう。死後17日目に妻の幽霊が現れて夫を取り殺してしまった。

その後も村にその幽霊が現れて、女子どもが恐れた。そこで、村の作蔵という男が「死人の墓に穴があれば、幽霊が出るそうだ。もし、女のだ墓に穴があれば埋めてしまえばいいそう」と言い、女の墓を確かめると穴が開いていた。穴は深く、苦労してようやく穴を埋めた。

その夜から作蔵の家に女の幽が出るようになったので、近隣のかくら田村に名刀を借りて傍に置くと、幽霊が出なくなった。しかし、刀を返すと再び幽霊が現れるようになり、ある日、山へ芝刈りに行った帰りに後ろから着物を引っ張る者がいる。振り返ると、女の幽霊で、作蔵を谷底に投げ込まれて気を失ってしまった。

女の幽霊は、作蔵が死んだと思い、気が済んだのか、その後は現れなくなった。しかし、作蔵は気を失っただけで、死んではいなかった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?