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田中一村の壱

僕は不運な人が大好きです。しかし、彼ら彼女らは死後に名声を得ることが多いので純粋に不運とは言えないかもしれません。特に画家にはそういった方々がたくさんいます。

青木繁、萬鉄五郎、竹久夢二、佐伯祐三、最近知った寺門彦壽(てらかどひこじゅ)に岡本神草、画集持ってるけど実際の作品を見たことがない石田徹也(以上敬称略)…等々。昨日、作品を見に行った田中一村もそうです。生前に運をつかめなかった方々の苦悩は想像することもできません。ですからプロとして名を馳せた方々は、ご自分たちの運に感謝しなければなりません。

さて、田中一村です。昨日見た軍鶏の絵を見て下さい。これは画集を撮影したものですから実物とは比較になりませんが雰囲気だけはわかると思います。ちなみに無断で掲載していることをお詫びいたします。

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グッと睨み見つける目、両脚を踏ん張って威嚇する姿勢。逞しい筋肉を覆う鎧のような羽根(柔らかい羽毛も表現されています)。それを表現する力強い描線、筆運び…。迫力があります。どうすればこのような描線が描けるのでしょうか? 僕は目が悪いので暗い美術館内では、作品の多くがしっかり見えなかったのですが、一村の代表作「アダンの海辺」よりも、この軍鶏の絵の方に瞠目しちゃいました。間近で長時間見てました。

ちょいとモノクロにしてみましょう。モノクロも凄いけど、やっぱり朱が効いている方がいいですね。

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もうひとつは、光沢のある墨の中に鶏冠(とさか)に肉髭(にくぜん)を含む顔の部分の朱です。これが凄く効いているんです。他の作品にも墨で描かれた大きな植物の下に朱い彼岸花を描いた「彼岸花」があるんですが、これを見て僕は泣きましたね。

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あらら、小さな写真を撮影したのでボワンとしてますね。ごめんなさい。やっぱり実物を見ていただいた方がいいですね。田中一村展は、千葉市美術館で28日まで開催しています。

*写真はすべて「田中一村 千葉市美術館収蔵全作品」のカタログより無断転載。申し訳ない。



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