見出し画像

「巨人」

しつこいようですが、僕は絵が下手なので、画力のある漫画家さんが好きです。そのひとりが石川球太(改名して石川球人)先生です。石川球太と言えば、僕は戸川幸夫さん原作による漫画や「牙王」などの動物漫画が印象に残っています。それに最近になって知ったのですが、石川さんのアシスタントをしていたのが「孤独のグルメ」や「父の暦」の谷口ジローさんなのですね。もの凄い画力ですよね。

石川さん(2018年78歳没)も、谷口さん(2017年69歳没)も、既に鬼籍に入られています。天才は早世(100歳寿命では早世です)するのです。

画像1

さて、石川球太先生の「巨人獣」です。

実は僕、この漫画のこと全然知らなかったんです。それが2013年に霞ヶ浦までブラックバスを釣りに行った際に立ち寄った小林という街のダイソーで石川さんの「巨人獣」を発見したんです。2冊で200円ですよ。他に村野守美さんの「オサムとタエ」を購入しています。

以下、僕のブログ(2013年8月27日アップ)から転載します。

「巨人獣」というのは、カフカの「変身」同様に「目覚めると変身していた」って作品なんですが、その内容っていうのが人間が嫌になっちゃうほどに暗く重いんです。

ある男(あとからトド・ウタマロ、23歳 土佐出身ということが判明しますが、彼のことを名前で呼ぶことはありません)が悪夢にうなされていて、目覚めると巨人になっているんです。しかもどんどん巨大になっていくんです。一般市民は初めは恐怖しますが、罪もないのに巨大化してしまって泣くばかりの彼に次第に同情して食べ物を与え、衣服を与え、排便する場所まで与えたりするんです。

政府は彼の生活保護を決定しますが、実は13mから30mから50mと巨大化していく彼を危険な生物としか捉えていないのです。

巨大化が止まらないことで気が変になっていく巨人獣ウタマロ。だって、巨大になると全てがさらけ出されるわけです。特に多くの人が見ている中で排便するなんて恥ずかしいじゃないですか? 匂いだってねぇ…。んで、何もかもが嫌になったウタマロは海に逃げます。

そんなとき、大阪でも巨人獣が現れます。まるで怪獣映画です。でも2人が怪獣のように対決することはないのです。なぜなら大阪の巨人獣は可愛い女性だからです。

ウタマロは大阪に女性巨人獣が現れたことを知って大阪に向かいます。紆余曲折の末に無事に2人は遭遇。彼らの優しさと安全性を確認した一般市民は彼らが「2人だけで暮らす場所を提供して欲しい」という願いを受け入れて、政府は完成したばかりの原子力エンジン搭載の巨大タンカーに乗せて南海の孤島に護送します。

彼らを嬉々として祝福し、見送る市民。しかし政府は彼らを赤道を越えた海上で原子力エンジンを爆発させて暗殺しようとしているのです。いつの間にか船長以下、乗員が消えてしまったタンカーの船上で、異変に気づいたウタマロは女性を抱えて海に飛び込もうとするのですが、時遅し、2人は爆発の巻き込まれて…というのが2巻までのあらすじなんですが、実はこのあとも悲惨な話が続くのです。でも、どういうわけかダイソーコミックスとしては2巻までしかないのです。

この作品に見えるのが一般市民と政府の意識乖離です。一般市民が何と言おうと思おうと、政府はその意向を受け入れる気はありません。それどころか市民の気持ちを表面上は受け入れるように見せかけて実は逆のことをしちゃうんです。日本だけでなく、アメリカだってほかの国だって、政府と市民の意識乖離によって成り立っているんです。それがこの星の平和、安全原則なんですね。

しかし、漫画ではこのあと巨人獣暗殺を知った市民の怒りが爆発するのですから凄いんですね。それでも漫画の結末は悲惨なのです。

さて、ついでにその他の巨人映画や漫画を以下に紹介しておきます。

「プルトニウム人間」(1957年)

アメリカのSF映画に「戦慄!プルトニウム人間」、続編の「巨人獣」という作品があります。

これは未見で、手元に資料がないので仕方なくWikipediaを見ると、

ネバダ砂漠で行われたプルトニウム爆弾の実験中、マニング中佐は不時着したセスナ機を救助しようとしたため核爆発に巻き込まれ、被爆し全身大火傷を負います。マニングには新たな皮膚が再生して回復を見せ始めますが、ある日、彼は病院から姿を消してしまいます。

マニングの婚約者・キャロルは、これを不審に思い、ようやく彼が収容された陸軍基地を探し当てます。しかし、そこにいたのは部屋一杯に巨大化したマニングの姿でした。彼の身体は巨大に成長し続けており、軍は事態を隠蔽するためにマニングを隔離したのです。

巨人となったマニングは、その心臓が身体の巨大化に追いつかず、生命に危険が及ぶと診断されます。そこで科学者達は彼を元の姿に戻すための研究に取り組み、キャロルもマニングを必死に励ましますが、マニングは巨大化した自らの姿に耐えきれず、精神は徐々に崩壊していきます。そして、ついに異常をきたしたマニングは、基地から逃亡してしまいます。

「ハルク」(1962年コミックに登場)

映画観たことが、あるけど忘れちゃったからWikipediaを参照します。物理学者のロバート・ブルース・バナーは、新型爆弾ガンマ・ボムの実験中に実験場に迷い込んできた少年を助けますが、大量のガンマ線を浴びてしまいます。致死量のガンマ線を浴びたはずのバナーは無事に生還します。しかし、怒りや憎しみなどの感情の高揚によって、怪力を持つ巨人「ハルク」に変身するようになってしまいます。普段はおとなしいバナーは、危害を加えられるとハルクに変身して暴れまわり、ありとあらゆる物を破壊してしまうのです(これはジキルとハイドですね)。その圧倒的な破壊力を危険視した軍上層部は、ハルク/バナーを殺すこと事を決定します。

「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」(1965年)&「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」(1966年)

日本にも巨人獣映画があります。第二次世界大戦末期にドイツからUボートで日本にあるモノが運ばれます。フランケンシュタインの怪物の心臓です。死なない兵隊を作って大戦にのぞむという計画なんですね。紆余曲折の末に広島に運ばれますが、そこに原爆が投下されます。その15年後にフランケンシュタインの怪物が現れます。はじめは少年の姿でしたが急成長を続けて巨人になります。同じ頃に秋田県の油田に地底怪獣バラゴンが現れます。バラゴンは人や家畜を襲いますが、これが巨大化したフランケンシュタインの怪物だと誤解されてしまいます。

画像2

「ウルトラQ 変身」(1966年)、「ウルトラマン 禁じられた言葉(フジアキコ隊員の巨大化)」(1967年)

僕が子どもの頃に放送されていた特撮テレビドラマ「ウルトラQ」にも巨人が登場します。蝶の鱗粉を浴びて巨大化するという内容でした。

もうひとつ「ウルトラマン」にもメフィラス星人によって、科学特捜隊のフジアキコ隊員が巨大化されてしまうお話です。

今は人が巨大化するお話よりもゾンビものが多いですね。

さて、巨人獣…完全版は高価なので入手しておりませんが、この尻切れトンボのダイソー版コミックでも充分に伝わってきます。

国家にとってプラスにならぬモノは、たとえ自国民であっても捨てるのです。今回の新型コロナの対応(貧困層、高齢者、中小企業の排他)を見ればおわかりでしょう。

石川球太先生の「巨人獣」を一読すれば、それを実感できるでしょう。


ああ、「最近の巨人漫画」は、画力に問題があるので僕は読みません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?