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選挙野郎!!衆議院議員選挙 陸

「清弘さん、今日は“北風の会”に行きまっせ」

「え? 北風の会って…」

北風の会とは約200万人の信者を抱える宗教団体だ。

「ん? 宗教団体ですわ」

「なんで宗教団体なんかに行くんですか?」

「清弘さんは何も知らんのですね。日本強欲党だって総進党だって総進の母体である総身捨去会あってのものですよ。信者さんが票を入れはるんですわ。あいつら強欲と総進にほどよく票を入れさすんですよ。選挙区によっては票を振り分ける。だからバンバン当選しちゃう。北風の会は、うちのご贔屓さんなんですよ。んでも強欲党は長期政権最大与党で経済界とも癒着してまっからね。実は北風の会の教祖は、四つ葉電気の創始者の奥さん…四つ葉美紀子なんですわ」

「四つ葉電気? 僕も家電業界誌時代にお世話になってました。広告いっぱいくれましたよ。四つ葉電気の創始者夫人が北風の会の教祖なんですか?」

「はぁい、四つ葉電気の創始者、四つ葉構造夫人ですわ。強欲党は経総連から政治献金を貰ろてますからね。北風の会は切っても切れへん関係っちゅうやつですわ」

「じゃ、うちの…いや、民所党のご贔屓さんじゃないんじゃ…」

「それがちゃうんですよ。政治や宗教団体っちゅうのはそこがオモロイんですわ。いつ政権交代が行なわれてもいいように、どっちゃにもいい顔しとくんですよ。総身捨去会だけは強欲党べったりやからちゃいまっけど、北風の会はどっちつかずのブレブレですわ。今は、まがりなりにも民所党政権でっから、ご贔屓さんなんですわ」

「でも、今は民所党も斜陽じゃないですか。偉人党も注目されてるし…民所党は嫌われ者ですよ」

「そやから選挙前によろしくっちゅう挨拶に行くんですわ」

「あ、なるほどね…」

「あ、昼や。清弘さん、昼飯食ってから、行きましょ」

「はい」

そこに労連の金井芳雄と松井貢太郎が看板立てから戻ってきた。今日は成田まで行くと言っていた。金井が僕を見るなり「清弘さん、まだ折られだよ」と言って僕の前にドスンと音を立てて座った。

「うわぁ、漏れちゃうぅ…」松井はそのままバタバタと便所に駆け込んで行った。

「え、また…。これから立て直しにいくんですか?」

「いや、今、直してきだどころだがら、大丈夫」と言って金井はため息をついた。

「しかし、強欲党も酷いですよね。缶コーヒー飲みますか?」

僕は事務室の前から缶コーヒーを2つ持ってきて、家内の前に置いた。

「ありがと。こないだ清弘さんと一緒に立て直したやつもやられだんだよ」

金井が缶コーヒーのタブを引っ張って開け、グビリと一口飲んだ。

「お、金井さん、お帰りなさい。ほい、弁当がきましたよ」村井がやって来て僕と金井の前に弁当を置いた。しつこいようだが、弁当は立派な公選法違反だ。

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