見出し画像

鼻出血

今年は「帯状疱疹」に持病の「憩室炎」と、軽度(放置すると大変な事になるのですがね)の病気ばかりしている。厄年なんか、とうの昔に終了しているのに・・・である。

で、確たる病気と言えないかもしれないが、また病気の話である。

◆あとから読み返してみたら、前半の部分が長いので、概要を書いておきます。出血量が多い鼻血が1週間続いたので、病院に行って医師に診てもらったら「鼻腔内に血管が飛び出しており、そこから出血を繰り返すのだ」と言われて電気メス(ピンセット状で、先に電極がついている)で患部を焼いて止血してもらった…というだけの話です。

概要

先月の31日から今日まで連日で鼻から出血していた。出血量が多く、なかなか止まらないが、ティッシュで鼻栓をしていれば、5分ぐらいすれば止まるので、ただの鼻血かと思って放置していたのだが、よく考えると鼻出血は水道の蛇口からチョロチョロと水漏れしてなかなか止まらないようなイメージだ。しかも1週間連日の出血だったので、合わせれば、かなりの出血量なのだ。これは白血病や命に関わる病気なのでは?と怖くなって病院へ行こうと決めた。

で、今日の朝にもかなり出血した。病院に行く途中で出血する可能性もあるのでヒヤヒヤしながら、万が一の時に鼻を押さえるための大きなタオルを手に持って、徒歩と電車で隣町の総合病院まで出かけた。そこは今回初めて診てもらう総合病院だが、カルチャースクールの生徒さんの評判が良いので行ってみることにした。

その病院は、船橋から柏に向う電車の中から見えるか見えないかの低層階の建物で、その病院があることを知っていただけの僕は「幻の病院」と呼んでいた。

隣町は数年前に起こった殺人事件の舞台となったところだ。犯人とされた男は無期懲役刑となっている。

病院の最寄り駅の建物は、経年変化によって色褪せていて、そのせいで昭和の匂いがする駅である。それに今どき上下線の線路を架橋で渡している。駅が古いかと思えば、改札を出ると、駅前も取り残されたように寂れている。

東武野田線の駅

線路に沿って、来た方向に歩く。線路沿いに植えられている桜の木からこぼれ落ちた小さな黒い実が地面を黒く染めている。その駅は丘の上にあり、目的の病院は裕福そうな住宅街を抜けたところにある。丘であるから住宅街の道は急坂で足を踏ん張りながら降りていく。

懐かしい雰囲気の駅である

10分ほど歩くと、その病院に着いた。

病院は。巨大な平屋建てといった感じだが、実際には5階建てのようである。不思議な印象である。そういえばどこかでこういう病院を見たような気がすると、歩きながらしばらく考えたら答えが出た。母親が肺がんで死んだ相模原の総合病院にそっくりなのである。太平洋戦争後に水木しげるさんが片腕の治療をされた病院でもある。

病院の受付付近

病院内に入ると、田舎町の役所のような感じである。大きな受付には多くの女性が忙しそうに動き回っている。広い院内は奥まで見渡せるが、照明は電球色で薄暗く、事務員や看護師は幽霊のようにも見える。きっと多くの人たちが亡くなっているんだろうと納得できる雰囲気である。

玄関口で「検温をお願いします」と言われる。カメラ検温機械に顔を近づけると間の抜けた自分の顔の上に問題のない数字が表示された。「検温済み」と印字された紙片を渡される。何だか屠殺される家畜のようだ。

受付で、「初診なのですが」と言うと、「では、これにお名前とご住所をご記入ください」と聡明そうな女性事務員に受診票を渡された。

僕は字が下手だからこういうものを書くのが苦手だ。下手なんてもんじゃない、普通の人には、なかなか読めない字だ。それが芸術的であるならばいいが、決してそんなものじゃない。幼児が落書きしたようなものだから困る。

書き終えて、事務員に渡すと、それとプラスチック製の診察券が挟まれた透明なファイルを渡されて「奥の耳鼻咽喉科に行ってください」と言う。

ファイルを持って院内を歩く。薄暗い外来待合棟は、一切仕切りがなく広い。中央にソファーが並べられて、それを囲んで内科、外科などの各科が、放射状に設けられている。

一番奥の耳鼻咽喉科の受付には事務員がいなかった。「ファイルを入れてください」と印字されたファイル入れにファイルを入れてソファーに座る。患者は僕しかいない。妖しい雰囲気である。こういうのが僕の大好物なのである。ところが、しばらくして患者たちが続々と現れた。診察開始時間になったからである。妖しい雰囲気が消失してしまった。

「お前ら、どこにいたんだよ?」心の中で呟いてガッカリする。

20分ほど経つと、名前を呼ばれた。

診察室に入ると、ゴチャゴチャした診察室にはホラー映画に登場するような診察台(金属製の椅子である)が数台並んでいて、それぞれがカーテンで仕切られている。恐怖感が全身を襲う。

「座って」と言うのは僕と同年代の医師である。検査台に座るのは拷問を受けるような感じだが、仕方なく座る。ビクビクしている。

「鼻血?」
「はい、1週間、連続でかなりの量が出ます」
「どれどれ・・・」
僕は歯医者や耳鼻科において、もの凄く痛い記憶があるので、妄想的緊張感は最高潮である。

医師は左手に鼻の穴を押し広げる鼻鏡(びきょう)で僕の右鼻の穴を押し広げ、右手に持った先の長い噴霧スプレーガンを持って僕の右鼻の穴に少し入れてスプレーをする。

シュッと噴霧されると「うっ!」と思わず声を出してしまう。

「ああ、かなり出血したでしょう?」
「はい」と言いながら再度噴霧する。
また「うっ!」声を出してしまう。
「鼻の中の血管が飛び出して、そこから出血したんです。噴水のように出たでしょう?」
「噴水とは言いませんが、水道をチョロチョロ出したくらいの勢いで、なかなか止まらなかったんです」
「うん、じゃあ」と言うや医師は、お尻にコードが付いた長いピンセット状の器具を取り出して「血管を焼いて止血しますから・・・」と言う。
ピンセット状のモノは、グリップが緑色で、鋭く尖った先端が銀色に光っている。
ーーああ、ピンセットの左右を合わせると電気が流れて患部を焼くんだな?と即イメージできた。これは痛いだろうなと思うが、今後も突然の大量出血が続いては出かける事ができない。それに今さら痛いから治療拒否ってのは66歳のお爺ちゃんらしくない。あとで調べたらピンセット状の器具は「バイポーラ」(一本の電極から高周波電流を流した後、もう一方の電極にて回収する)というらしい。ちなみにドラマ「ドクターX」でお馴染みの電気メスは「モノポーラ」である。

「お願いします」と返事をすると、
医師は「はい」と言ってピンセットを鼻腔に突っ込む。
バイポーラが突っ込まれた直後に鼻腔の奥にもの凄い痛みが発生した。
ーーぎゃあ!と心の中で叫ぶ。先が丸まった針でグイと突かれた感覚である。思わず涙が流れる。涙が右頬に流れる。施術は数秒であるけれど超痛かった。
「終わりました」スプレーガンを噴霧、それから「薬を塗るから」と言って、金属製の棒で軟膏を塗る。涙をタオルで拭きながら「ありがとうございます」と言ってから「通院する必要がありますか?」と聞くと、
「通院の必要はないよ。鼻炎みたいだから鼻炎薬を出しておくね」

「あ、何で鼻の中に血管が飛び出るんですか?」と聞くと
「いろいろと言われるけれど、わかんないんだよ」
「ふーん」と返事をして涙を拭く。
「終りです。お大事にね」と言われたので診察室を出る。

ファイルを受付に持っていって会計をする。どの病院も自動精算機になっている。4390円だった。

「それにしても痛かったなぁ」まだまだ涙が出る。痛みに弱い自分が情けない。トボトボと駅まで歩く。

帰宅してから調べると、施術名は「鼻粘膜焼灼術」と言い、花粉症で鼻粘膜を焼くアレである。しかし、読んでみると、複数の耳鼻咽喉科のサイトには「鼻粘膜焼灼術施術前に麻酔して、20分ほど経過したあとに施術するので殆ど痛くない」と書かれている。それでは麻酔せずに僕がやられてしまったあの施術はどういうことなのだ?と怒りがこみ上げてきたが、多分治癒したので(再発の可能性はあるようである)我慢しよう。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?