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湯島の夜「シー・フィーバー 深海の怪物」


2019年のホラー作品。製作はアイルランド、スウェーデン、ベルギー。

シー・フィーバーとは海洋病のこと。

海洋生物学を専攻する人づきあいが苦手な女子大生シボーン(ハーマイオニー・コーフィールド)。博士号取得のために漁船ニーム・キノール号に乗り込みます。乗員は、船長のジェラード、船長の妻フレイア、船長の母キアラ、技師のオミッドに船員のジョニーとステイ。シボーンの神の色は赤毛。「赤毛の女は縁起が悪い」と縁起を担ぐ船員たち。

初めはぎくしゃくしていた人間関係も和んできます。金に困っている船長ジェラードは、赤毛のシボーンを乗船させただけでなく、大漁を求めて航海禁止ゾーンに入ってしまいます。突然、魚群探知機に巨大な何かが近づいて来るのを確認していたら、ガツンと何かにぶつかって船は停止。無線機も壊れてしまいます。

そのうちに船体の木に変化が現れます。変化した木から流れ出るジェル状の物体。その奥には生物の口のようなものがありました。口からはジェル状の物体が船内にヌメヌメと滴り落ちます。

シボーンが潜水して確認すると、いくつもの光る触手のようなものが船体を捕らえていました。背後に光る触手が見え、その奥には巨大なイソギンチャクのような生物の姿がありました。恐怖するシボーン。ラブクラフトが描く怪物ってこんな怪物なんでしょうね。

何とか触手を剥がそうと船体のウインチを使いますが、動かない。船員のジョニーが手に怪我をしてしまいます。そのうちに近くに大型船の姿が見えました。

シボーンと船長らは、ボートを漕いで大型船に近づいて乗り込みます。捜索すると船内に懐かしい曲が流れており、暗い船内で船員たちは全員死亡していました。そのうち一人は両目が破裂していました。

船に戻ると、船は動くようになりましたが、様子が変です。ウインチで手を怪我したジョニーは具合が悪そうです。シボーンの眼球の中に小さな生物が蠢くのが見えました。そして、ジョニーの目は破裂して死んでしまうのですが、眼球から飛び出したオタマジャクシのような生物は排水溝から船内の貯水タンクに潜入します。なんだか見たことがある展開ですね。そう、リドリー・スコットの「エイリアン」です。

要は巨大生物の触手から生物の卵が放出され、怪我をした人の体内に侵入して育つ寄生生物です。巨大生物の触手が、最近読んだ漫画「怪獣自衛隊」の怪獣に似ています。その姿形から、こいつも海から現れた怪獣なのでしょうね。

Amazonやいろいろな映画サイトでおバカ映画のように低く評価されていますが、個人的にはホラー短編小説のようで面白かったです。それに撮影と音楽が素晴らしいのです。それだけでも僕は満足です。

つけ加えることがあります。終盤で船が陸地に近づき、上陸可能になる際に、シボーンが「船員が感染しているかもしれないから上陸してはいけない」と主張します。しかし、怪物騒ぎで疲弊している船員たちは反発します。そして苛立った船長の母キアラに殴られてしまいます。結局は、シボーンの主張は正しかったことがわかります。作品中でシボーンは、怪物に寄生された人を「感染者」と呼び、「陰性か陽性か(寄生されていないか、寄生されているか)」と言うのです。幼生の頃はウイルスのようなモノなので間違いではありませんが相手は巨大化する怪物です。何だか不思議です。

でも、寄生された人間は隔離する必要がありますね。感染者を隔離して、感染拡大を食い止めなければなりません。

新型コロナで感染拡大している際に「マスクはしなくてもいい」「コロナはただの風邪だ」と主張して50万人以上が亡くなったどこかの国の大統領のことが思いだされて腹が立ちます。


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