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家路2「空中水槽」
武雄は、また帰り道を急いでいた。
遅くなってしまった。もう午前0時を過ぎている。
終電には間に合ったが、終電は、自宅ひと駅手前の駅が終着駅なので、そこからひと駅歩いているのだった。明日は、朝いちで片付けなければならない仕事があるので、早めに出社しようと考えている。最近はこの調子で寝不足が続いているのだった。
「少しでも早く眠りたいよ」
自宅まであともう少しというところに公園がある。この公園を通れば自宅までの時間を短縮できる。ただし、公園の中は照明がなく、最近はひったくりやおやじ狩りが起きている。
しかし、武雄は躊躇することなく公園に入った。
しばらく歩くと「おい」と男たちの声がした。
振り返って見れば、マスクをした高校生らしい男が5人立っている。そのうちの2人は木刀のようなものを持っている。5人は武雄の周りを小刻みに左右に動いて武夫が逃げないように囲んでいる。
「またか…もう、うんざりだ」武雄はため息をついた。すると、木刀を持った男2人が、左右から武雄の頭部を狙って木刀を振りかぶった。それを見た武雄が両手を彼らに向けてかざした。すると、武雄の両手から大量の水が噴き出して、あっという間に男2人の全身を覆った。男2人は水槽の中の魚のようになった。2人は空中水槽の中で苦しみ藻掻いた。
「うわ」それを見て逃げようとした残りの3人も、いつの間にか空中水槽の中にいた。
「その苦しみをしっかり記憶しておくんだな。来世は、よい子になりなよ」武雄は空中水槽を一瞥して足早に去った。
翌日、公園で5人の高校生の遺体が発見された。不思議なことに死因は、全員溺死だった。
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