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中途半端のすすめ②

*上の写真は平凡パンチとBRUTUSから届いて当時のものです。

僕は何をやっても中途半端です。それは子どもの頃から現在に至っても少しも変わらないのですが、若い頃は本当に重症でした。特に続かないのが仕事でした。若気の至りというか、仕事と人とのつきあいに飽きたら辞める、自分が悪いのに怒られたら辞める、要は自分の思い通りにならなければ辞める…という、まるでお子様。

さて、絵の次に熱中した写真のつづきです。

写真家のアラーキーこと荒木経惟さんに思いつきで師事しようと平凡パンチに投稿を続けていると、出版元のマガジンハウスさんから手紙が届きました。封筒の中には「アラーキー写真塾 上諏訪温泉合宿 招待状」(写真左参照)が入っていました。

この時期には「G公論」という美術雑誌で「電話営業」を仕事にしていました。新聞の求人広告かなんかに求人広告を見つけて、美術雑誌の編集部と勘違いして応募したんですが、入社してみたら、今のブラック企業同様の雇用形態で、仕事は出版詐欺のようなものでした。

上諏訪温泉合宿の当日に、その美術雑誌の営業部長に「風邪ひいたから休みます」なんて嘘言って、オリンパスOM1を2台首から下げ、フィルムをたくさん入れたショルダーバッグをたすき掛けして、新宿から電車に飛び乗ったのです。「もしかしたら荒木さんの弟子になれるかも」という甘い期待感が僕の心の中に満ちていました。

僕を乗せた電車はゆっくりと新宿駅を発車しました。当時、僕は新宿区の上落合という所に同棲相手の女性と住んでいました。上落合は東西線の上落合駅と中央線の東中野駅が最寄り駅です。

「弟子になってくるから」と彼女に言って自宅を出た僕は、通過する東中野駅を車窓から自宅方向を見て「待っててね」と、呟いていました。それが叶わぬ幼稚な夢と実感するのはもうすぐでした。






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