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「妄想邪馬台国」8

「話が複雑になってきたから一度整理してみようね」治子は自分のノートを取り出してさっきまでの話をまとめだした。
「ええっと、テキトーに書きだしてみるね」
「うん」
「あとで時系列に並べりゃいいからね」異能が頷いた。
「うん」治子がボールペンで書き出した。

高天原=朝鮮の伽耶、百済
葦原の国=日本=出雲=邪馬台国
アマテラス=卑弥呼=神功皇后=皇極天皇=持統天皇
スサノオ=卑弥呼の弟?もしくは卑弥呼の次の男性王=神武天皇=景行天皇=日本武尊(ヤマトタケル)=天武天皇
オオクニヌシ=神武天皇=日本武尊(ヤマトタケル)=出雲建(イズモタケル)=継体天皇=天智天皇=大友皇子(天智天皇の息子、のちに弘文天皇)
天武天皇=滅亡した百済の王子?=皇極天皇の養子
倭国大乱=卑弥呼以前の男性王の内乱=オオクニヌシへの兄弟間、および始祖であるスサノオからの虐待騒動、ヤマトタケルによる熊襲およびイズモタケル討伐および東征

「こんなもんかな?」書き上げた治子がため息をついた。
「邪馬台国と後世の天武天皇というと時代が違うね」
「時代はいいんだよ。邪馬台国のだいぶあとの時代だったとしても、天武天皇時代に作られたと言われる古事記や日本書紀の物語の構造を理解しようとするものだからね」
「天武天皇以降の時代にご都合主義で創作した大作だもんね」
「神武天皇と日本武尊に継体天皇ってのは?ああ、景行天皇に出雲建もだし、大友皇子も…」
「神武は東征の際に、いくつもの障害を経てからオオクニヌシ同様に和歌山から大和に入るし、継体はオオクニヌシと同じ応神天皇の6世の孫なんだよ」
「ヤマトタケルは、景行天皇の息子で、古事記では兄の大碓命(オオウスノミコト)を殺す残酷な乱暴者で、景行に九州の熊襲討伐を命じられ、討伐終了後に出雲に入って出雲建(イズモタケル)も殺してしまうの」
「あ、出雲だ」
「でも、日本書紀では、兄のオオウスを殺すことも出雲に触れることもなく、熊襲討伐のあとに東征を命じられた兄のオオウスが逃げたので、ヤマトタケルが代わりに東征に向うんだよ」
「大友皇子は天智天皇の息子でね、天武天皇との壬申の乱で負けて自殺しちゃう。のちに弘文天皇って天皇のひとりに加えられるのよ」
「ふーん」僕は、マニアックな話を交互に話す異能と治子に似たものを感じた。ふたりを見て、つい笑ってしまった。
「ちょっと、稗田くん、何笑ってるのよ? 目的は邪馬台国の場所の特定だからね」治子が青春ドラマのヒロインみたいに腕を組んでふくれっ面をした。
「ああ、ごめん。とにかく、さっきも言ったけど、自分たちの家系なんてわかるのは爺さんくらいまでのもんだろう? いくら天皇だからってわかるわきゃあない」
「いや、曽我蝦夷自決の際に焼失した“天皇記”があるって言ってたじゃん」
「おお、そうそう。それがあったね。聖徳太子によって記録されたというけれど、だいたい、聖徳太子の存在自体が怪しいけれどね。その内容を稗田阿礼が覚えていたのか、稗田が天皇記の編纂をした人物なのかは全然わからないね」
「なんか稗田、稗田って言われると他人ごととは思えないね」
「そうだよね」治子が笑った。
「天皇記以外にも”帝紀”や他の記録ってのもあったらしいけどね。あ、そうだ、こういうのもあるんだよ」
そう言うと異能はコタツから出て、自分の本棚から1冊の本を引き抜いてコタツの上に置いた。それは「ホツマツタエ」という書名だった。

つづく

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