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百物語6「幽霊」

江戸時代の怪談から

能州(現在の石川県)飯山の谷合に神子ヶ原という村があった。

村の百姓某の妻は脇に鱗があり、乳房が長く、子供を背負い乳房を肩にかけて乳を飲ませていた。さらに妻は力持ちで男にも負けたことはなかった。

その妻は、ある日、病死してしまう。死後17日目に妻の幽霊が現れて夫を取り殺してしまった。

その後も村にその幽霊が現れて、女子どもが恐れた。そこで、村の作蔵という男が「死人の墓に穴があれば、幽霊が出るそうだ。もし、女の墓に穴があれば埋めてしまえばいい」と言い、確かめるとやはり女の墓を確かめると穴が開いていた。穴は深かったが、苦労してようやく穴を埋めた。

その夜から作蔵の家に女の幽霊が出るようになったので、近隣の村に名高い名刀があると聞いて、それを借りにでかけて帰宅すると、刀を傍に置いた。すると、幽霊が出なくなった。しかし、刀を返すと再び幽霊が現れるようになった。

ある日、作蔵が山へ芝刈りに行った帰りに後ろから着物を引っ張る者がいる。振り返ると、女の幽霊で、ニヤリと笑うと、そのまま谷底に突き落とされてしまった。しかし、作蔵は死ななかった。気を失ってしまったのだ。

女の幽霊は、作蔵が死んだと思い、気が済んだのか、その後は現れなくなった。しかし、作蔵は気を失っただけで、死んではいなかった。

幽霊が勘違いするとは面白い。

しかし、幽霊になる前の姿がどうも妖怪っぽいので、死んで幽霊になったというよりは、初めから産女や磯女のような妖怪であった気もする。

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