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「会津須波の宮、首番という化け物の事」諸国百物語(江戸怪談集 下 高田衛 編 岩波文庫)より

会津の須波神社(会津若松旧城下にあった諏訪神社のこと?)に首番(しゅばん 朱の盆と同じ)という恐ろしい化け物が出るという…。

ある夕暮れに25~26歳の侍ひとりが須波神社の前にさしかかった。「神社には化け物が出る」という噂があり不安になったが、そこに同じ年頃の若い侍がひとりやって来たので良い連れができたと一緒に歩きながら話しかけた。

「ここには首番という化け物が出ると聞いたがお主は知っているか?」

するとその侍は「その化け物はこのようなものかな?」と言うと、顔が変った。真っ赤な顔に皿のような目、額に角がひとつ生え、髪の毛は針金のようで、口は耳の脇まで裂けていた。上下の歯を噛み鳴らす音は稲妻のようだった。それを見た侍はあまりの恐ろしさに気を失ってしまった。

しばらくして侍が目を覚ますと、先ほどの神社の前に倒れていた。

侍は慌てて逃げ出し、通りかかったある家の戸を叩き「水をひとくちいただきたい」と言った。すると、その家の女房が出てきて「何故、水を飲ませてほしいと言うのですか」と聞いた。

侍が「神社の前で首番という化け物に遭い、恐ろしい目にあったので水をひとくち飲みたいのだ」答えると、女房は「それは恐ろしい目に遭ったものだ。それで、その首番とはこのようなものかな?」と言うので女房の顔を見たら首番であった。

侍はまた気を失った。侍は、その三日後に死んでしまった。


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